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はじめに
台湾の夜市を歩いていると、どこからともなく香ばしい匂いが漂ってきます。その正体は、多くの観光客を惹きつける「胡椒餅(フージャオビン)」という肉まんです。日本でお馴染みの肉まんに似ているようで、その風味と食感はまったく異なる世界があります。サクサクとした外皮の中に、スパイスの効いたジューシーな肉餡が詰まった胡椒餅は、台湾グルメの代表格として親しまれています。本記事では、胡椒餅の魅力、歴史、特徴、そして日本の肉まんとの違いについて詳しくご紹介します。
吉祥寺の有名店で初めて胡椒餅を食べたとき、そのパリッとした外皮の食感に驚いたことを覚えています。一口かじると肉汁がしたたり落ちるほどジューシーで、胡椒のピリッとした刺激が後を引く味わいに、つい手が止まらなくなってしまいました。
台湾の夜市を彩る肉まん
胡椒餅(フージャオビン)は、台湾の夜市や屋台でよく見かける定番フードです。もちもちとした食感を持つ台湾の肉まんで、中国福建省の福州市発祥とされています。現在では中国本土では徐々に見られなくなり、台湾で庶民料理として広く親しまれています。胡椒餅の外側の皮は小麦粉、水、塩、砂糖、酵母などで作られ、中の肉餡は豚肉もしくは牛肉、胡椒や五香粉、野菜(青ネギなど)をこねて作られます。
福州から台湾へ渡った歴史
胡椒餅の起源は、中国福建省福州市の「葱肉餅(ツォンロウビン)」という焼き饅頭にあるとされています。この料理が台湾に渡った後、台湾の人々の好みに合わせて改良され、現在の味付けに変化しました。1980年代に台湾で広まり、初期には「福州餅」と呼ばれていましたが、現在は「胡椒餅」として台湾全土で親しまれています。
福州出身の移民によって台湾に持ち込まれたこの料理は、台北の有名店の店名に「福州」と入っているものが多く見られ、その歴史の名残を感じさせます。ある料理研究家によると、数十年前は福州でも比較的よく見かけたけれども、ここ数年は探さないと見かけない貴重なものになりつつあるとか。店が独自に味を変え、他店も倣っていくうちに、それが台湾のスタンダードになっていったのは興味深いところですね。
パリッともちっ、二層の食感が魅力
胡椒餅の最大の特徴は、その名の通り胡椒や五香粉の効いた香りです。単に胡椒が効いているだけでなく、五香粉という中華調味料が使われていることが多く、これが胡椒餅の風味を一層複雑で奥深いものにしています。五香粉は八角、カシアシナモン、クローブ、フェンネル、花椒で構成されるのが一般的です。
焼き上がった胡椒餅はカリカリの薄皮で包まれ、かじると肉汁がしたたり落ちるほどジューシーです。肉まんが蒸して作られることで、ふんわりとした柔らかい皮になるのに対し、胡椒餅はタンドール窯のような専用の釜で焼き上げられるため、表面がパリッとした食感に仕上がります。この「外はパリッ、中はもちっ」という二層の食感こそが、胡椒餅の最大の魅力と言えるでしょう。
台湾全土で愛される庶民の味
台湾ではB級グルメの一つとして非常にポピュラーであり、台湾中の夜市や露店で購入できます。有名店の場合、ピーク時には30分ほど待たされることも珍しくありません。あまりにも待ち時間が長いため、行列をいくつかのグループに分けて販売するのが常だそうです。
近年では、チーズやキムチ、あんこなどを取り入れた新しい胡椒餅も登場し、様々な進化を遂げています。台北の「福州世祖胡椒餅」や「福州元祖胡椒餅」などが有名で、士林夜市や饒河街観光夜市などで味わうことができます。台湾を訪れて胡椒餅を食べた旅行者は自身の体験についてブログを書くなどしており、台湾への旅行者が必ず食べると言って良いほどの名物となっています。
スパイスと肉汁のハーモニー
胡椒餅の具の主な材料は挽き肉か薄切り肉で、大抵は豚肉です。食感を上げるために挽き肉と薄切り肉の両方を使う店もありますが、挽き肉の方が調理の際により多くの肉汁が出るため、一般的には挽き肉が使われます。肉には、山盛りの白胡椒または黒胡椒の粉と、醤油、砂糖、料理酒で下味を付けます。下味を付ける際に五香粉やカレー粉を加える店もあるそうです。
タンドール窯で焼き上げる伝統の技
包み上がった胡椒餅は、タンドールのような、高温に熱せられた円筒形の粘土製オーブンで焼きます。オーブンの下には熱源として炭火が置かれ、胡椒餅は下から上に向けて、オーブンの壁面に沿って一つずつ貼り付けられます。焼き上がったら、刃の鈍いナイフや箆(へら)を使って、胡椒餅をオーブンの壁面から剥がします。このとき、胡椒餅が炭火の中に落ちないように、オーブンと炭の間にザルを構えておくという工夫もなされています。
あのパリッと香ばしい食感を生み出す秘密は、この「特製の焼き窯」にもあります。インドのナンを焼くときのような窯に貼り付けて焼き上げることで、表面はカリッと、中はジューシーに仕上がるのです。
まとめ
胡椒餅は、中国福建省福州発祥の「葱肉餅」が台湾に渡り、独自の進化を遂げた台湾を代表するB級グルメです。パリッとした外皮ともちもちとした中身、そして胡椒や五香粉のスパイスが効いたジューシーな肉餡が特徴で、タンドール窯で焼き上げる伝統的な調理法が生み出す独特の食感が魅力です。台湾の夜市を訪れた際には、ぜひ焼きたてのアツアツを頬張ってみてください。きっとその味わいに、台湾の食文化の豊かさと深さを感じていただけるはずです。