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京芋とは?その特徴、筍芋と海老芋の違いを徹底解説

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はじめに

「京芋」という名前を聞いて、京都で作られている芋だと思われる方も多いのではないでしょうか?実は、この名称には少し複雑な事情があります。京芋とは、里芋の一種を指す呼び名ですが、宮崎県が主産地の「筍芋(たけのこいも)」を指す場合と、京都の伝統野菜である「海老芋(えびいも)」を指す場合があり、混同されやすい食材なのです。

本記事では、この2つの京芋の違いや特徴を詳しく解説していきます。

初めて京芋を手に取ったとき、その独特な形状に驚いたことを今でも覚えています。一般的な里芋とは明らかに異なる、すらりと伸びた姿。調理してみると、ホクホクとした食感と上品な甘みが口いっぱいに広がり、「これは特別な食材だ」と感じずにはいられませんでした。

京芋の正体:2つの異なる品種

京芋という名称で流通している芋には、実は2つの異なる品種があります。

ひとつは、宮崎県を主産地とする「筍芋(たけのこいも)」です。地上に頭を出している姿が筍に似ていることから名づけられました。地元では「台湾いも」とも呼ばれていたこの芋は、紡錘形でまっすぐに伸び、長さは20~40cm、重さは1~3kg程度にもなります。

もうひとつは、京都の伝統野菜である「海老芋(えびいも)」。こちらは本来京都で栽培されていましたが、現在の主産地は静岡県となっています。海老のように曲がった形状が特徴的で、筍芋とは見た目も異なります。

どちらも「京芋」と呼ばれるため、購入する際には産地や形状を確認することが大切です。同じ名前でも、まったく違う個性を持つ。これも京芋の面白さではないでしょうか?

縄文時代から続く里芋の系譜

里芋は、日本では縄文時代から食べられていたといわれる、非常に歴史のある食材です。さつまいもやジャガイモよりも、もっと以前から日本人になじみの深い芋だったのです。

里芋は地方によっても、さまざまな形や呼び名があります。京芋もその一つで、地域の気候や土壌、栽培方法によって独自の進化を遂げてきました。

特に筍芋は、宮崎県小林市などの豊かな自然と大地が育む特産品として知られています。火山灰土壌が生み出す独特の風味は、他の産地では真似できない個性です。一方、海老芋は京都の伝統野菜として、京料理には欠かせない食材として重宝されてきました。

長い歴史の中で、日本人の食卓を支え続けてきた里芋。その多様性の一端を担う京芋は、まさに日本の食文化の奥深さを物語る存在と言えるでしょう。

ホクホク食感と上品な甘みの秘密

京芋(特に筍芋)の最大の特徴は、そのホクホクとした粉質の食感です。一般的な里芋よりも水分が少なく、煮崩れしにくいため、煮物に最適。じっくり煮込むと、中までしっかりと味が染み込み、箸を入れるとホロリと崩れる絶妙な食感が楽しめます。

味わいは、やさしい甘味が特徴的です。里芋特有のぬめりは控えめで、上品な風味が口の中に広がります。この甘みは、煮物だけでなく、唐揚げやコロッケにしても際立ちます。

また、筍芋は頭と尻までよく太り、皮の筋が平行にきれいに揃っているものが良品とされています。頭の葉柄のついていた部分が白くなって成熟しているものを選ぶと、より美味しくいただけます。

海老芋は、筍芋よりもさらにきめ細かい肉質で、煮物にすると独特のねっとりとした食感が楽しめます。京料理では、この食感を活かした料理が多く見られますね。

筍芋と海老芋:形状と産地で見分ける

京芋と呼ばれる2つの芋の違いを、もう少し詳しく見ていきましょう。

筍芋(宮崎県産)の特徴

海老芋(静岡県産が主)の特徴

このように、同じ「京芋」という名前でも、実際には異なる品種であることがわかります。購入する際には、パッケージの産地表示や形状を確認することで、どちらの京芋なのかを判断できます。

また、愛媛県では「媛かぐや」という新品種も開発されています。これは京いも(たけのこ芋)と唐芋の交配により誕生した品種で、2010年に品種登録されました。ホクホクとした粉質でやさしい甘味があり、煮物や唐揚げ、コロッケなどに利用できます。京芋の世界も、こうして進化を続けているのです。

煮物から揚げ物まで多彩な調理法

京芋は、その特性を活かしてさまざまな料理に活用できます。

煮物
最も定番の調理法です。煮崩れしにくい性質を活かして、じっくりと味を染み込ませます。だし汁、醤油、みりん、砂糖で甘辛く煮付けると、ご飯のおかずにぴったりです。

唐揚げ
一口大に切って下茹でした後、片栗粉をまぶして揚げると、外はカリッと、中はホクホクの食感が楽しめます。

コロッケ
茹でて潰した京芋に、ひき肉や玉ねぎを混ぜて揚げると、ジャガイモとは一味違う、上品な甘みのコロッケになります。

汁物
味噌汁や豚汁に入れると、ホクホクとした食感が楽しめます。

まとめ

京芋は、里芋の一種で、宮崎県産の筍芋と京都の伝統野菜である海老芋の2つを指す名称です。縄文時代から日本人に親しまれてきた里芋の一種として、長い歴史を持つ食材です。

ホクホクとした粉質の食感と上品な甘みが特徴で、煮物、唐揚げ、コロッケ、汁物など、幅広い料理に活用できます。煮崩れしにくい性質は、じっくりと味を染み込ませる煮物に最適です。

「京芋」という名前の裏には、筍芋と海老芋という2つの異なる品種が存在します。この違いを理解することで、より適切な調理法を選び、京芋の魅力を最大限に引き出すことができるでしょう。旬の時期には、ぜひ手に取って、その独特の食感と味わいを楽しんでみてください。

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