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リーキとは?西洋ネギの魅力と活用法を徹底解説

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はじめに

リーキという野菜をご存知でしょうか?「西洋ネギ」や「ポロネギ」とも呼ばれるこの食材は、地中海沿岸を原産とするヒガンバナ科ネギ属の野菜です。日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、ヨーロッパやオセアニアでは日常的に食卓に上る定番食材として親しまれています。

見た目は日本の長ネギによく似ていますが、味わいや食感には独特の個性があります。ネギ特有の刺激的な臭みが少なく、加熱すると驚くほど甘味が増し、ねっとりとした食感と上品な風味が楽しめるのです。

この記事では、古代エジプト時代から栽培されてきたリーキの歴史的背景、その特徴、料理での活用方法まで詳しくお伝えします。初めてリーキを手にする方にも、すでに料理に取り入れている方にも、新たな発見があるはずです。

地中海が育んだ西洋ネギの正体

リーキは、ヒガンバナ科ネギ属に属する多年草で、学名をAllium ampeloprasumといいます。「西洋ネギ」「ポロネギ」「ポワロー」「リーキ」など、さまざまな呼び名で知られていますが、いずれも同じ野菜を指しています。

外見は日本の下仁田ネギに似た、太くて短い姿が特徴的です。長ネギのように円筒形の白い部分を主に食用としますが、リーキの葉は硬く平らにつぶれており、この点が日本のネギとの大きな違いといえるでしょう。白い部分は軟白化された茎で、ここに甘味と旨味が凝縮されています。

栄養面では、可食部100グラムあたり29キロカロリーと低カロリーでありながら、特に緑色の部分にはβ-カロテンが豊富に含まれています。白い部分だけでなく、緑の葉の部分も香りを活かして煮込み料理の風味づけに利用できるのです。

日本への輸入はベルギーやオランダなどのヨーロッパ産、もしくはオーストラリアやニュージーランドのオセアニア産がほとんどです。国内での生産量は非常に少なく、わずかに特産品づくりとしての生産が試みられている程度。希少な国産品は大田市場やホテルに高値で卸されているほどです。

古代から愛された野菜の物語

リーキの歴史は驚くほど古く、その起源は古代エジプト時代にまで遡ります。古代エジプトやギリシャで栽培されていたとされ、その後、古代ローマ人によってヨーロッパ各地やイギリスへと持ち込まれました。数千年もの間、人々の食卓を支えてきた野菜なのです。

特に興味深いのは、ウェールズとリーキの深い結びつきでしょう。リーキはラッパスイセンとともに、ウェールズの国花・国章となっています。ただし国花といっても、リーキの花(いわゆるネギ坊主)ではなく、食用とする茎葉の部分が国花となっているのが面白いところです。

この背景には、ウェールズの守護聖人デイヴィッドにまつわる逸話があります。かつてウェールズでは、戦場で敵味方を識別するために、兵士たちが帽子にリーキをつけて戦ったと伝えられています。そのモチーフが現在の国章に使われているのです。今でも3月1日の聖デイヴィッドの日には、ウェールズの人々がリーキを身につける習慣が残っています。

一方、日本へは明治時代初期に初めて伝来しましたが、すでに根深ネギなどが普及していたことから、残念ながら広く親しまれることはありませんでした。しかし近年、西洋野菜への関心の高まりとともに、輸入食材を扱う店舗や百貨店などで見かける機会が増えてきています。

ネギとは一味違う独特の個性

リーキの最大の特徴は、日本のネギとは異なる、その穏やかで上品な風味にあります。ネギ特有の刺激的な臭みが少なく、代わりに芳香があるのです。生の状態でも比較的マイルドですが、真価を発揮するのは加熱したとき。甘味が強く増し、ねっとりとした食感へと変化します。

葉の部分は硬く平らにつぶれており、日本の長ネギのように円筒形ではありません。この平たい葉は、土が入り込みやすいという特徴もあります。そのため、調理前には葉の間をしっかりと洗う必要があるのですが、これもリーキならではの個性といえるでしょう。

食材としての旬は11月から3月。寒い季節に甘味が増し、最も美味しくなります。市場では、太さが均一で茎がよく締まっている、葉の部分が緑鮮やかなものが良品とされています。

フランスではポピュラーな野菜で、それぞれの季節に適した品種があり通年で手に入りますが、最も流通が増えるのはやはり冬です。ヨーロッパの食文化において、リーキは冬の食卓に欠かせない存在なのです。

ヨーロッパ各地で花開く多彩な食文化

リーキは地域によって、さまざまな料理に姿を変えます。特にウェールズには、リーキを使った郷土料理が数多く存在します。リーキポリッジ(リーキがゆ)やカウルケニン(リーキスープ)などは、その代表例でしょう。

フランス料理では、リーキは香味野菜としても重宝されています。ジャガイモやパースニップとの相性が抜群で、これらと組み合わせたスープやポタージュは定番中の定番。特に有名なのが、リーキとジャガイモを使った冷製スープ「ヴィシソワーズ」です。滑らかな舌触りと優しい甘さが特徴的なこのスープは、リーキの魅力を存分に引き出した一品といえます。

イギリスやベルギーでも、リーキはシチュー、ポトフなどの煮込み料理に欠かせない食材です。また、蒸し煮にしてそのまま食べたり、オーブンを使ったグラタンにしたりと、調理法も多彩。加熱によって引き出される甘味とねっとりとした食感、上品な風味を活かした料理が各地で愛されています。

春まきの品種と秋まき(越冬型)の品種があり、一般的に越冬型の方が香りが強いとされています。地域や季節によって異なる品種を使い分けることで、料理の幅がさらに広がるのです。

料理での活用と保存のポイント

リーキの調理法は、基本的には日本の根深ネギと同様です。まず、葉の間に入り込んだ土をしっかりと洗い流すことが大切。縦に切り込みを入れて、流水で丁寧に洗うとよいでしょう。

食べられる部分は、軟白化した白い部分が中心ですが、緑色の葉の部分も捨てずに活用できます。白い部分は煮込み料理、スープ、刻んでサラダなどに。緑色の部分は香りを活かして、煮込み料理の風味づけやブーケガルニの一部として使うのがおすすめです。

調理のコツは、じっくりと加熱すること。バターやオリーブオイルで弱火でゆっくり炒めると、驚くほど甘味が引き出されます。この甘味を活かして、ジャガイモと合わせたポタージュ、クリームシチュー、グラタンなどにすると絶品です。

選び方のポイントは、太さが均一で茎がよく締まっているもの、葉の部分が緑鮮やかで元気なものを選ぶこと。白い部分が長く、傷や変色がないものが新鮮な証です。

日本ではまだ限られた地域でしか栽培されていないため、輸入食材を扱う店舗や百貨店、大型スーパーの西洋野菜コーナーなどで探すのが確実です。値段は日本のネギに比べるとやや高めですが、その独特の風味と食感は、一度試す価値が十分にあります。

まとめ

リーキは、古代エジプト時代から数千年にわたって人々に愛されてきた、歴史と文化の深い野菜です。地中海沿岸を原産とし、古代ローマ人によってヨーロッパ各地へと広まり、特にウェールズでは国花・国章として今も大切にされています。

日本のネギとは異なり、ネギ特有の刺激的な臭みが少なく、加熱すると甘味が増してねっとりとした食感になるのが最大の特徴です。ジャガイモとの相性が抜群で、スープ、ポタージュ、シチュー、グラタンなど、さまざまな煮込み料理に活用できます。

日本ではまだ馴染みの薄い野菜ですが、輸入食材を扱う店舗や百貨店などで入手可能です。旬は11月から3月の寒い季節。太さが均一で茎がよく締まっている、葉の部分が緑鮮やかなものを選びましょう。

調理の際は、葉の間の土をしっかり洗い流し、じっくりと加熱することで甘味を引き出すのがポイントです。白い部分だけでなく、緑の葉の部分も香味野菜として活用できます。

西洋料理に挑戦したい方、新しい食材を試してみたい方には、ぜひ一度手に取っていただきたい野菜です。その上品な風味と優しい甘さは、あなたの料理のレパートリーを豊かにしてくれるはずです。

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