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パルミジャーノ・レッジャーノとは?イタリアチーズの王様の魅力を徹底解説

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はじめに

パルミジャーノ・レッジャーノ。この名前を聞いただけで、イタリア料理の豊かな香りが漂ってくるようです。「イタリアチーズの王様」と称されるこのチーズは、800年以上にわたって北イタリアの限られた地域で作り続けられてきました。

粉チーズとして日本でも馴染み深い存在ですが、本物のパルミジャーノ・レッジャーノは、じゃりっとした独特の食感と、噛めば噛むほど広がる深い旨味を持つ、まさに別格の食材です。この記事では、その起源から製法、特徴、そして類似品との違いまで、パルミジャーノ・レッジャーノの全貌を詳しく解説していきます。

北イタリアが生んだ至高のハードチーズ

パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリア北部のエミリア・ロマーニャ州を中心とした、極めて限定された地域でのみ生産されるハードチーズです。具体的には、パルマ県、レッジョ・エミリア県、モデナ県の全域、そしてボローニャ県とマントヴァ県(ロンバルディア州)の一部のみ。

その名称は、パルマとレッジョという二つの地名に由来しています。

このチーズの最大の特徴は、DOP(原産地名称保護制度)による厳格な品質管理です。パルミジャーノ・レッジャーノ協会が熟成期間中に何度も検査を行い、その基準をクリアしたものだけが「Parmigiano Reggiano」の刻印を押されます。認定を受けられなかったチーズは、側面に×印を打たれてしまうという厳しさ。この徹底した品質管理こそが、800年以上にわたって守られてきた伝統の証なのです。

一つのチーズは最低でも30kg以上という巨大な太鼓型をしており、その大きさからも、このチーズにかける情熱と労力が伝わってきます。

中世の修道院から始まった伝統

パルミジャーノ・レッジャーノの歴史は、中世の修道院にまで遡ります。修道士たちは、余剰の牛乳を長期保存するための方法を模索する中で、この硬質チーズの製法を確立しました。800年以上前から続くこの伝統は、今日まで脈々と受け継がれています。

ただし、北イタリアへのチーズ製造技術の伝来は、さらに古い時代に遡ります。紀元前1000年頃、高度なギリシャ文明の影響を受けたエトルリア人によって、海路を通じてロンバルディア地方にチーズ作りの技術がもたらされたという説が有力です。

この地域でのチーズ作りが本格化したのは中世以降ですが、ポー川流域の豊かな牧草地と、この地域特有の気候条件が、パルミジャーノ・レッジャーノという傑出したチーズを生み出す土壌となりました。9世紀以上にわたって守られてきた製法は、今も変わることなく、職人たちの手によって受け継がれているのです。

時代を超えて愛され続けるチーズ。その背景には、単なる食材を超えた、文化としての重みがあるのではないでしょうか?

じゃりっとした食感と深い旨味の秘密

パルミジャーノ・レッジャーノの最大の魅力は、その独特の食感と味わいにあります。熟成が進むとアミノ酸が結晶化し、「じゃりじゃり」とした心地よい食感が生まれます。この白い斑点のような結晶こそが、長期熟成の証なのです。

削りたてのチーズからは、フルーツのような甘い香りが立ち上ります。口に含むと、最初は硬質な食感ですが、噛めば噛むほど旨味が広がり、複雑な風味が口いっぱいに満ちていきます。この深い旨味は、18か月から36か月、長いものでは5年以上という長期熟成によって生み出されるもの。

超硬質のハードチーズであるため、専用のナイフを使って少しずつ切り分けたり、細かく砕きながらいただくのが一般的です。塊のままバルサミコ酢に浸して食べる方法も、イタリアでは人気があります。

このチーズを料理に加えるだけで、味が格段に増すことから「イタリアチーズの王様」と呼ばれるのも納得です。パスタやリゾットにすりおろしてかけるのはもちろん、そのまま食べても十分に美味しい。まさに万能選手ですね。

パルメザンとの違い、グラナ・パダーノとの関係

「パルメザンチーズ」という名前を聞いたことがある方は多いでしょう。実は、これはパルミジャーノ・レッジャーノの英語読みから派生した呼び名です。

アメリカでは、イタリア移民が好んで食べていたパルミジャーノ・レッジャーノを英語読みして「パルメザン」と呼んでいました。固まりではなく粉にして売られていたそのチーズが、そのまま日本に入ってきたため、日本でも粉チーズの総称として「パルメザン」が定着したのです。

しかし、本物のパルミジャーノ・レッジャーノとパルメザンチーズには大きな違いがあります。パルメザンチーズはアメリカや日本、アルゼンチンなどでも生産されており、熟成期間が短く、風味もパルミジャーノ・レッジャーノには及びません。ただし、価格は安価です。

DOP規格により、欧州連合諸国ではパルミジャーノ・レッジャーノ以外のチーズは「パルメザン」と名乗ることができなくなりました。日本・EU経済連携協定でも「パルミジャーノ・レッジャーノ」は保護の対象とされていますが、英語名称の「パルメザンチーズ」は例外措置として使用が認められています。

また、同じポー川流域で作られているグラナ・パダーノというチーズも、パルミジャーノ・レッジャーノと似た製法を持ちます。どちらも「グラーナ」と呼ばれる種類のチーズですが、パルミジャーノ・レッジャーノはより狭い地域で、より厳格な基準のもとで生産されているのです。

本物と類似品。その違いを知ることで、より深くこのチーズの価値を理解できるのではないでしょうか。

無殺菌乳と伝統製法が生む唯一無二の味

パルミジャーノ・レッジャーノの製造方法は、800年以上前から変わらぬ伝統を守り続けています。原料は、前日の夕方に搾った牛乳を一晩静置してクリームを分離した脱脂乳と、当日の朝搾った牛乳を混合したもの。この製法により、1日に1回だけ製造が可能です。

使用される牛乳は無殺菌乳で、原産地で育ち、当地の天然飼料のみを食べた牛から搾られたものに限定されています。牛乳は搾乳後2時間以内に工場に運ばれなければならないという厳格な規定もあります。

大きな銅鍋に牛乳、レンネット(凝乳酵素)、そして前日の製造で生じた乳清を加え、凝固時間、攪拌の回数、砕く力加減、加熱温度など、すべての工程が熟練した職人(チーズマスター)の経験と勘によって決定されます。機械に頼らず、人の手と感覚で作られる。これこそが伝統製法の真髄です。

形成された凝乳は鍋底に沈み、巨大な塊となります。これを型に入れて成形し、塩水に浸けた後、専用の熟成庫で最低12か月、通常は18か月から36か月、長いものでは5年以上もの長期熟成を行います。この間、水分が完全に抜け切り、超硬質のハードチーズへと変化していくのです。

製造過程で分離された乳脂肪分はマスカルポーネなどの原料に、乳清はパルマ産生ハム(プロシュット・ディ・パルマ)用の豚の飼料になるなど、無駄のない循環が生まれています。

職人の技と自然の恵み、そして時間。この三つが揃って初めて、パルミジャーノ・レッジャーノは完成するのです。

銀行の担保にもなる高級チーズ

パルミジャーノ・レッジャーノには、他のチーズにはない興味深い側面があります。それは、銀行の担保として扱われるという事実です。

一つの塊が30キログラム以上にもなるこのチーズは非常に高価で、さらに熟成に最低でも1年以上かかるため、生産者はすぐに収入を得ることができません。そこでイタリアの一部の銀行は、熟成前のパルミジャーノ・レッジャーノを担保として預かり、生産者にローンを提供しているのです。

対応する銀行は専用の熟成庫を所有しており、そこで何千ものチーズが熟成されています。まるで金庫に金塊が保管されているかのように、チーズが銀行の資産として管理されている光景は、このチーズの価値を物語っていますね。

もちろん、一般に販売されている完成品を購入しても、このローンの担保には使用できません。しかし、この制度の存在自体が、パルミジャーノ・レッジャーノがいかに貴重で、経済的価値の高い食材であるかを示しています。

食材が金融商品になる。これほどまでに価値を認められているチーズは、世界中を探しても他にないのではないでしょうか。

まとめ

パルミジャーノ・レッジャーノは、単なるチーズではありません。800年以上にわたって守られてきた伝統、厳格なDOP基準、職人の技、そして長い熟成期間が生み出す、まさに「イタリアチーズの王様」です。

北イタリアの限られた地域でのみ生産され、無殺菌乳と伝統的な製法によって作られるこのチーズは、じゃりっとした独特の食感と、噛むほどに広がる深い旨味が特徴です。パルメザンチーズやグラナ・パダーノとは一線を画す、唯一無二の存在と言えるでしょう。

料理にすりおろしてかけるのはもちろん、塊のままバルサミコ酢と合わせたり、ワインのお供として楽しんだりと、その味わい方は多彩です。一度本物のパルミジャーノ・レッジャーノを味わえば、その圧倒的な美味しさに魅了されることでしょう。

イタリア料理を愛するすべての人に、ぜひ一度、本物のパルミジャーノ・レッジャーノを体験していただきたいですね。その味わいは、きっとあなたの食卓を豊かにしてくれるはずです。

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