シェフレピマガジン

ホワイトアスパラとは?軟白栽培が生む繊細な味わいと歴史

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

はじめに

ホワイトアスパラ。グリーンアスパラとは異なる、繊細で上品な味わいを持つこの食材は、ヨーロッパでは古くから珍重されてきました。日本ではかつて缶詰や瓶詰のイメージが強かったものの、近年では生のホワイトアスパラが店頭に並ぶようになり、その本来の魅力が再発見されつつあります。

本記事では、ホワイトアスパラの定義から歴史、特徴、そして調理法まで、この食材の全貌を紐解いていきます。

土の下で育つ白い宝石

ホワイトアスパラは、グリーンアスパラと品種が異なるわけではありません。その白さの秘密は、栽培方法にあります。若芽に土を被せて日光を完全に遮断する「軟白栽培」という手法によって、葉緑素が作られず、白いまま成長するのです。

この栽培法は、グリーンアスパラに比べて格段に手間がかかります。土寄せの作業は丁寧に行わなければならず、収穫時には土を掘り起こして一本一本を慎重に取り出す必要があります。光に当たると緑色に変色してしまうため、収穫のタイミングも重要です。こうした手間ひまが、ホワイトアスパラの価格を押し上げる要因となっています。

日本では北海道が主要な産地として知られており、特に春から初夏にかけてが旬の時期です。ヨーロッパではドイツ、フランス、オランダが主要産地で、ドイツでは春の風物詩として、日本におけるタケノコのような存在感を持っています。

古代ローマから続く美食の系譜

ホワイトアスパラの歴史は、アスパラ全体の歴史と重なります。原産地はヨーロッパ地中海沿岸から西アジア地域とされ、紀元前200年頃には古代ローマで栽培されていた記録が残っています。

16世紀頃にヨーロッパで軟白栽培の手法が広まり、ヨーロッパ全土に広がっていきました。白く柔らかなアスパラは、宮廷料理にも登場する高貴な食材として位置づけられるようになります。

日本への伝来は江戸時代の1781年以降で、オランダ船によってもたらされました。ただし、当初は観賞用植物として扱われ、食用としての認識はありませんでした。食用として本格的に導入されたのは明治時代の1871年、北海道開拓使がアメリカから種子を入手したことがきっかけです。

大正時代に入ると、北海道の岩内町で本格的な栽培が始まります。興味深いのは、当初の生産目的が主にヨーロッパへの輸出用缶詰だったという点です。日本国内では一部の高級フランス料理店で提供される程度でしたが、戦後になって徐々に国内消費も増えていきました。昭和40年代以降はグリーンアスパラが主流となり、ホワイトアスパラは一時期影が薄くなりましたが、近年の食の多様化により、再び注目を集めています。

繊細な甘みと独特のほろ苦さ

ホワイトアスパラの最大の特徴は、その味わいと食感にあります。グリーンアスパラと比較すると、青臭さがほとんどなく、代わりにほんのりとした甘みと独特のほろ苦い風味が感じられます。この味わいのバランスこそが、ヨーロッパで長く愛されてきた理由でしょう。

食感は非常に柔らかく、繊維質も少ないため、口の中でとろけるような感覚があります。ただし、この柔らかさゆえに傷みやすく、流通量が限られる要因にもなっています。鮮度が命の食材と言えますね。

栄養面では、グリーンアスパラに比べるとカロテンなどの含有量は少なくなります。これは日光を浴びていないため、光合成による栄養素の生成が行われないためです。しかし、アスパラギン酸などのアミノ酸は含まれており、独自の栄養価値を持っています。

見た目の美しさも特筆すべき点です。純白の茎は、まるで芸術品のような佇まいを見せます。フレンチやイタリアンのレストランでは、その美しさを活かした盛り付けが行われることも多く、視覚的な楽しみも提供してくれる食材なのです。

ヨーロッパ各国で異なる楽しみ方

ホワイトアスパラの食べ方は、地域によって実に多様です。ドイツでは、茹でたホワイトアスパラに溶かしバターやオランデーズソースをかけ、ハムやジャガイモを添えるのが定番スタイル。収穫時期は毎年6月24日の聖ヨハネの日までと決められており、この期間は「シュパーゲル(アスパラ)の季節」として国民的な盛り上がりを見せます。

フランスでは、より洗練された調理法が好まれます。オランデーズソースやヴィネグレットソースと合わせたり、スープやグラタンの材料として使われたりと、バリエーション豊かです。イタリアでも、リゾットやパスタの具材として活用されています。

日本では、伝統的に缶詰の水煮が一般的でしたが、近年は生のホワイトアスパラを使った料理が増えています。西洋風のサラダや炒め物だけでなく、天ぷらやごま和えといった和風の調理法も試されており、日本独自の楽しみ方が生まれつつあります。

調理の基本は茹でることです。皮を厚めに剥き、塩を加えた湯で柔らかくなるまで茹でます。茹で時間は太さによって異なりますが、10〜15分程度が目安でしょうか。茹で上がったホワイトアスパラは、そのままソースをかけて食べるもよし、他の料理に組み込むもよし。その繊細な味わいを損なわないよう、シンプルな調理法が推奨されます。

手間をかけた栽培が生む価値

ホワイトアスパラの栽培は、アスパラ栽培の中でも特に手間のかかる作業です。まず、種から苗を育て、仮植えして1年ほど養生し、畑に定植してさらに1年養生する必要があります。収穫できるようになるまでに3年を要し、その後10〜15年ほど毎年収穫が可能になります。

ホワイトアスパラの場合、さらに土寄せの作業が加わります。若芽が伸びてくる前に、株の周りに土を盛り上げて光を完全に遮断しなければなりません。収穫時には土を掘り起こして、地中で育った白い茎を傷つけないよう慎重に取り出します。この作業は早朝に行われることが多く、光に当たる時間を最小限に抑える工夫がなされています。

興味深いのは、日本では廃トンネルを利用した栽培も行われているという点です。鉄道の廃トンネルは自然に光を遮断できる環境であり、温度管理もしやすいため、ホワイトアスパラ栽培に適しているのです。こうした創意工夫が、日本のホワイトアスパラ生産を支えています。

栽培に手間がかかり、傷みやすく流通量が限られるため、ホワイトアスパラの価格はグリーンアスパラよりも高くなります。しかし、その繊細な味わいと美しい姿は、手間に見合った価値を持っていると言えるでしょう。

まとめ

ホワイトアスパラは、軟白栽培という特殊な手法によって生み出される、繊細で上品な味わいを持つ食材です。古代ローマ時代から続く長い歴史を持ち、ヨーロッパでは春の風物詩として愛されてきました。

日本への伝来は江戸時代ですが、食用として本格的に栽培が始まったのは大正時代の北海道からです。当初は輸出用缶詰が主でしたが、現在では生のホワイトアスパラが国内でも楽しめるようになり、その本来の魅力が再発見されています。

グリーンアスパラとは栽培法が異なるだけで品種は同じですが、味わいは大きく異なります。青臭さがなく、ほんのりとした甘みとほろ苦い風味、そして柔らかな食感が特徴です。手間のかかる栽培と傷みやすさから価格は高めですが、その価値は十分にあると言えるでしょう。

ドイツでは溶かしバターやオランデーズソースと共に、フランスでは洗練された調理法で、日本では和洋折衷の楽しみ方で。地域ごとに異なる食べ方があるのも、ホワイトアスパラの魅力の一つです。旬の時期に出会ったら、ぜひその繊細な味わいを堪能してみてください。土の下で静かに育った白い宝石が、あなたの食卓に春の訪れを告げてくれるはずです。

モバイルバージョンを終了