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コルマカレーとは?インド宮廷料理の魅力と歴史を徹底解説

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はじめに:魅惑の宮廷料理、コルマカレーの世界へようこそ

こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、インドの宮廷料理「コルマカレー」についてお話していきたいと思います。
コルマカレー。その名前を聞いて、どんなカレーを思い浮かべるでしょうか? スパイシーで刺激的なインドカレーとは一線を画す、まろやかでクリーミー、そしてナッツの風味が特徴的なこのカレーは、かつてのインド宮廷で愛された、まさに”ご馳走”と呼ぶにふさわしい一品です。この記事では、そんなコルマカレーの奥深い魅力に迫ります。その起源から特徴、地域による違いまで、詳しく解説していきましょう。

私が初めてこの料理を知ったのは、シェフレピでの撮影で訪れた、南インド料理専門店「エリックサウス」稲田シェフの作ったチキンコルマでした。スパイスの複雑な香りと、ナッツとヨーグルトが織りなす驚くほどまろやかでクリーミーな口当たり。それまでのカレーの概念が覆されるような奥深い味わいは、今でも鮮明に記憶に残っています。

コルマカレーってどんな料理? その定義と概要

コルマカレーは、南アジア、特にインドやパキスタンで親しまれているカレーの一種です。最大の特徴は、ヨーグルトや生クリーム、そしてカシューナッツやアーモンドなどのナッツペーストをふんだんに使い、じっくりと煮込んで作られる点にあります。これにより、他のカレーにはない濃厚でクリーミーな口当たりと、ナッツ由来の豊かなコクと香りが生まれるのです。

辛さは比較的マイルドなものが多く、スパイスの刺激よりも、素材の旨味と全体の調和が重視される傾向にあります。まさに、洗練された味わい。具材には鶏肉やマトン(羊肉)、牛肉、あるいは野菜などが使われ、それぞれの素材の持ち味を生かした調理がなされます。

ムガル帝国の食卓から:コルマカレーの起源と歴史を紐解く

コルマカレーのルーツは、16世紀頃に栄えたムガル帝国の宮廷料理にあると言われています。ムガル帝国は、中央アジアからインドを支配したイスラム王朝であり、その食文化はペルシャ料理の影響を色濃く受けていました。

「コルマ」という言葉自体、トルコ語で「炒める」「焼く」といった意味を持つ言葉に由来すると考えられています。当初は、肉をヨーグルトやスパイスでマリネし、それを炒め煮にする調理法を指していたようです。宮廷の料理人たちは、豊かな財力を背景に、高価なナッツ類や乳製品、そして多様なスパイスを駆使して、洗練された味わいを追求しました。

時代を経るにつれて、コルマはインド亜大陸全域に広まり、各地の食文化と融合しながら多様なスタイルを生み出していきます。宮廷料理としての豪華さを受け継ぎつつも、より庶民的な料理としても定着していったのです。この歴史的背景が、コルマカレーの奥深い味わいと多様性を形作っていると言えるでしょう。

コルマカレー:その主な特徴とは?

コルマカレーを他のカレーと区別する、際立った特徴をいくつか挙げてみましょう。

これらの要素が組み合わさることで、コルマカレー特有の、リッチで洗練された味わいが完成するのです。一度食べたらヤミツキになる人も多いのではないでしょうか?

北から南、家庭からレストランまで:地域による違いと派生料理

一口にコルマカレーと言っても、そのスタイルは地域や家庭、レストランによって様々です。

このように、コルマカレーはその土地の食材や好みに合わせて進化を続けてきました。旅先で、あるいは現地のレストランで、様々なコルマを食べ比べてみるのも面白いかもしれませんね。

美味しさの構成要素:コルマカレーに使われる一般的な材料

コルマカレーの基本的な構成要素を見てみましょう。もちろん、レシピによって違いはありますが、一般的には以下のような材料が使われます。

これらの材料が、それぞれの役割を果たしながら、あの複雑で奥行きのあるコルマカレーの味わいを創り出しているのです。

伝統を受け継ぐ:本来のコルマカレー調理法のエッセンス

本格的なコルマカレーを作るには、いくつかの重要な工程があります。ここでは、そのエッセンスをご紹介しましょう。

  1. マリネ: 肉や主な具材を、ヨーグルト、ニンニク、生姜、スパイス(ターメリック、コリアンダー、クミンなど)で数時間、あるいは一晩漬け込みます。これにより、肉が柔らかくなり、味が染み込みます。
  2. ベース作り: 鍋にギーまたは油を熱し、ホールスパイスを加えて香りを引き出します。次に、大量の玉ねぎを加え、焦がさないように注意しながら、じっくりと飴色になるまで炒めます(ブラウンオニオン)。これがコルマの旨味とコクの土台となります。時間のかかる作業ですが、ここが肝心。
  3. 煮込み: マリネした具材を加え、表面の色が変わるまで炒めます。その後、トマト(使う場合)や残りのパウダースパイス、ナッツペーストなどを加え、弱火で蓋をしてじっくりと煮込みます。水分が足りなければ、水や出汁、ヨーグルトの上澄みなどを加えます。肉が柔らかくなり、油が表面に分離してくる(=旨味が凝縮されたサイン)まで、根気よく煮込むことが大切です。
  4. 仕上げ: 最後に生クリームやヨーグルト(煮込みすぎると分離するので注意)、ガラムマサラなどを加えて味を調え、火を止めます。刻んだコリアンダーリーフやフライドオニオンを散らして完成です。

時間はかかりますが、工程一つ一つに意味があり、それがコルマカレーならではの深い味わいを生み出します。この丁寧な仕事ぶりこそ、宮廷料理としての矜持の表れなのかもしれませんね。

まとめ:時代を超えて愛される、芳醇なる一皿

コルマカレーは、単なる「マイルドなカレー」ではありません。ムガル帝国の華やかな食文化を受け継ぎ、ナッツや乳製品、そして選び抜かれたスパイスが織りなす、複雑で奥行きのある味わいを持つ、洗練された料理なのです。

そのクリーミーで濃厚な口当たり、ナッツの香ばしさ、そして穏やかながらも存在感のあるスパイスの香りは、一度味わうと忘れられない魅力を持っています。地域や家庭によって様々なバリエーションがあるのも、コルマカレーの懐の深さを示していると言えるでしょう。

刺激的な辛さだけがカレーの魅力ではない。そう教えてくれるのが、このコルマカレーかもしれません。ぜひ一度、その芳醇な味わいを体験してみてはいかがでしょうか? きっと、あなたのカレーの世界が、また一つ豊かに広がるはずです。

さいごに

シェフレピでは、南インド料理の名店、エリックサウスの稲田俊輔シェフによる「チキンコルマ」のレッスンを公開しております!
仕上がりの水分量(煮詰め加減)を重量で決めるため、ご家庭でも非常に再現性高く作ることのできるレシピとなっております。

ぜひこの機会にチェックしてみてください!

チキンコルマ/エリックサウス 稲田俊輔

インドカレーを作る基本のテクニックが詰まった、初挑戦の人にもピッタリなレッスンです。また小麦粉やルーを使わずに、脂肪分の高いカシューナッツを使用したとろみ付けのテクニックも必見。
ナンやチャパティ、白米との相性はもちろんのこと、シチューのようにバゲットなどのパンも相性抜群だと稲田シェフがおっしゃっていました。ぜひお気に入りの楽しみ方を探してみてください。

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