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しぐれ煮とは?名前の由来とその魅力、基本的な作り方までを徹底解説

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はじめに:ご飯がすすむ、あの味の正体

こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、日本の家庭料理「しぐれ煮」についてお話していきたいと思います。
食卓にのぼると、ついついご飯が進んでしまう「しぐれ煮」。甘辛い味付けと、鼻をくすぐる生姜の香りが特徴的な、日本の伝統的な料理です。常備菜としても親しまれ、多くの家庭で愛されていますね。

この記事では、そんなどこか懐かしく、そして奥深い「しぐれ煮」の世界を掘り下げていきます。しぐれ煮とは一体どんな料理なのか、その定義から、名前の由来、歴史、佃煮との違い、そして現代のアレンジまで、詳しく解説していきます。

私がしぐれ煮で思い浮かべるのは、おばあちゃんの味でしょうか。牛肉とごぼうが甘辛く煮込まれたあの味。おばあちゃんの作ってくれたしぐれ煮を食べた時の衝撃は忘れられません。甘辛いタレと生姜の爽やかな香りが、ほかほかのご飯と絶妙に絡み合って…。思わず「おかわり!」と叫んでしまったほどです。あの感動を、この記事を通してお伝えできれば嬉しいですね。

しぐれ煮ってどんな料理?佃煮との違いは?

まず、「しぐれ煮」とは何か、その定義から見ていきましょう。簡単に言うと、しぐれ煮は「生姜を加えた佃煮の一種」です。

元々は三重県桑名市の名産であるハマグリを使った「時雨蛤(しぐれはまぐり)」が始まりとされていますが、現在では牛肉や豚肉、あさり、マグロ、さらには野菜など、様々な食材で作られています。醤油と砂糖(またはみりん)をベースにした甘辛いタレで煮詰める点は、一般的な佃煮と共通しています。

では、佃煮としぐれ煮の違いは何か?それはズバリ、「生姜」の存在です。

この生姜こそが、しぐれ煮を特徴づける最大のポイント。独特の爽やかな香りとピリッとした辛味が加わることで、佃煮とは一線を画す風味豊かな味わいが生まれるのです。この違い、意外と知られていないかもしれません。

しぐれ煮、その名の由来と歩み:桑名から全国へ

しぐれ煮のルーツは、三重県桑名市の名産「時雨蛤」にあると言われています。では、なぜ「しぐれ(時雨)」という名前がついたのでしょうか?これにはいくつかの説があります。

江戸時代中期の俳人・各務支考(かがみ しこう)が考案したという説が有力視されていますが、具体的な由来としては、

  1. 風味の移り変わり説: 甘さ、辛さ、旨味、生姜の香りなど、様々な風味が口の中で次々と通り過ぎていく様子を、一時的に降っては通り過ぎる「時雨」に見立てた。
  2. 旬の時期説: 主な材料であるハマグリの旬(一般的に秋から冬にかけて)が、ちょうど時雨の降る季節と重なることから。
  3. 調理法説: 短時間でさっと煮上げる調理法が、時雨が降る様子に似ていることから。

どの説が真実かは定かではありませんが、いずれも風情があり、この料理の持つ独特の味わいや季節感をよく表しているように感じられますね。

桑名で生まれた時雨蛤は、江戸時代を通じてその名を知られるようになり、参勤交代の土産物などとしても重宝されたと考えられています。現在も桑名市には「貝新」を名乗る老舗をはじめ、多くのしぐれ煮製造業者が軒を連ね、その伝統の味を守り続けています。

そして、その美味しさは桑名にとどまらず、やがて江戸(東京)へも伝わりました。現在では、日本橋や銀座に本店を構える店もあり、しぐれ煮は地域の名産品から、全国的に親しまれる和食の定番へと発展を遂げたのです。まさに、味の旅ですね。

しぐれ煮を際立たせる風味の秘密:生姜が決め手!

しぐれ煮の魅力は、何と言ってもその独特の風味にあります。その秘密を紐解いてみましょう。

これらの要素が絶妙に組み合わさることで、他にはない、しぐれ煮ならではの美味しさが生まれるのです。

地域ごとの味わいと進化:牛肉しぐれ煮からアレンジまで

元祖である桑名の「時雨蛤」は、ハマグリの上品な旨味と生姜の風味が調和した逸品です。しかし、しぐれ煮の世界はそれだけにとどまりません。

現在、家庭料理として最もポピュラーなのは「牛肉のしぐれ煮」ではないでしょうか。牛肉の濃厚な旨味と甘辛いタレ、生姜の風味は相性抜群で、老若男女問わず人気の高い一品です。薄切り肉や切り落とし肉で手軽に作れるのも魅力ですね。

他にも、

など、様々な食材がしぐれ煮として楽しまれています。

さらに近年では、伝統的な枠にとらわれないアレンジも登場しています。例えば、出来上がったしぐれ煮にチーズを乗せてオーブントースターで焼いたり、刻んでチャーハンの具にしたり、パスタソースとして活用したり…。自由な発想で、しぐれ煮の可能性はますます広がっています。伝統を守りつつも、新しい風を取り入れる姿勢は興味深いですね。あなたなら、どんなアレンジを試してみたいですか?

しぐれ煮の定番、牛肉から魚介まで:材料選びの楽しみ

しぐれ煮に使われる代表的な材料と、その特徴を改めて見てみましょう。

これらの材料を単独で使ったり、組み合わせたりすることで、味わいのバリエーションは無限に広がります。

家庭で再現!伝統の味の基本:美味しく作るコツ

しぐれ煮は、意外と簡単に家庭で作ることができます。基本的な調理法と、美味しく仕上げるコツをご紹介しましょう。

基本的な手順(牛肉の場合):

  1. 下準備: 牛肉は食べやすい大きさに切ります。生姜は皮をむいて千切りまたは薄切りにします。
  2. 煮る: 鍋に牛肉、生姜、調味料(醤油、砂糖、みりん、酒など)、だし汁または水を入れ、火にかけます。
  3. 煮詰める: 沸騰したらアクを取り除き、落し蓋をして中火〜弱火で煮ます。時々混ぜながら、煮汁が少なくなるまで煮詰めていきます。“じゅわーっ”と煮詰まっていく音と香りは、なんとも食欲をそそります。
  4. 仕上げ: 煮汁がほとんどなくなったら火を止め、粗熱を取ります。

美味しく作るコツ:

本来は短時間でさっと煮上げるのが特徴という説もあります。ご家庭で作る際は、お好みの加減を見つけてみてください。

まとめ:時代を超えて愛される、しぐれ煮の魅力

書いているそばから、あの甘辛い香りが漂ってくるようで、思わず白いご飯が欲しくなりますね。

しぐれ煮は、生姜の爽やかな風味が効いた、日本の伝統的な佃煮の一種です。その歴史は古く、三重県桑名市の「時雨蛤」に端を発し、江戸時代から現代に至るまで、多くの人々に愛され続けてきました。

元祖のハマグリだけでなく、牛肉やあさり、ごぼうなど、様々な食材で作られ、それぞれの家庭や地域で独自の進化を遂げてきた点も、しぐれ煮の奥深い魅力と言えるでしょう。甘辛い味付けと生姜の香りは、白いご飯のお供としてはもちろん、お弁当のおかずやお酒の肴としても最適です。

この記事を通して、しぐれ煮の背景にある歴史や文化、そしてその美味しさの秘密に触れていただけたなら幸いです。ぜひ、ご家庭でもこの時代を超えて愛される味わいを楽しんでみてください。きっと、あなたの食卓を豊かに彩ってくれるはずですよ。

さいごに

シェフレピでは、乃木坂しん 石田シェフによる「豚バラ肉のしぐれ煮」のレッスンを公開しております!
このレシピでは、すき焼きの必需品でもある「割り下」を使用します。豚バラ肉、ごぼう、生姜、豆腐を、石田シェフの黄金比で作った割り下でさっと煮込みます。出汁を使わず、フライパンひとつで仕上げられるのも魅力的ですね。
シンプルな工程ながらも、応用力抜群なレシピをぜひチェックしてみてください!

豚バラ肉のしぐれ煮/乃木坂しん 石田伸二

豚バラ肉の脂が甘辛いタレ、さらにゴボウの風味が複雑さと奥行きを与える料理屋のしぐれ煮になっています。ポイントは、濃口醤油とみりん、酒を煮切って作った割り下です。保存性が高く、しぐれ煮はもちろん、ブリや鶏の照り焼きなどにも使えて汎用性も高いのが特徴です。すき焼きのように素材を炒めてから割り下を加えて煮詰めるだけのシンプルな行程も魅力です。

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