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はじめに
こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「バターナッツかぼちゃ」についてお話ししていきたいと思います。バターナッツかぼちゃ――その愛らしいひょうたん型の姿を、スーパーの野菜売り場で見かけたことはありませんか? 濃い黄褐色の滑らかな皮に包まれたこの野菜は、一般的なかぼちゃとは一線を画す独特の存在感を放っています。アメリカ大陸を原産とするこのかぼちゃは、その名の通り「バターのように滑らかで、ナッツのように甘い」味わいが特徴です。
初めてバターナッツかぼちゃを目にした時、その形と質感に驚きました。普通のかぼちゃとまるで違い、表面は陶器のようにつるつる。調理してみると、その濃厚な甘みとねっとりとした食感に、これまでのかぼちゃの概念が覆されたのを覚えています。
ひょうたん型が愛らしい、新感覚のかぼちゃ
バターナッツかぼちゃは、正式には「バターナッツ・スクワッシュ」と呼ばれるニホンカボチャ(Cucurbita moschata)の一品種です。英語圏では「butternut squash」、オーストラリアやニュージーランドでは「butternut pumpkin」や「gramma(グラマ)」という愛称でも親しまれています。
その最大の特徴は、なんといってもユニークな形状でしょう。上部が細く、下部が膨らんだひょうたん型は、まるで自然が作り出したアート作品のよう。この形状、実は理にかなっているんです。上部には種がほとんどなく、果肉がぎっしり。下部の膨らんだ部分に種が集中しているため、調理の際の下処理も意外と簡単なんです。
一般的なかぼちゃと比べると、水分が多くねっとりとした食感が特徴的。ホクホクとした西洋かぼちゃとは対照的に、口の中で溶けるような滑らかさがあります。糖度も高く、加熱するとその甘みがさらに引き立つ――これこそが「バターナッツ」という名前の由来なのです。
1940年代アメリカで生まれた交配種の歴史
バターナッツかぼちゃの歴史を紐解くと、意外にも比較的新しい品種であることがわかります。現在私たちが食べているバターナッツかぼちゃは、1940年代のアメリカで生まれました。
マサチューセッツ州で、チャールズ・レゲットという人物が「グースネック・スクワッシュ」と「ハバード・スクワッシュ」を掛け合わせて作出したとされています。彼は新品種の味わいから「バターのように滑らかで、ナッツのように甘い」と表現し、バターナッツと名付けたのだとか。その後、ウォルサム試験場でロバート・ヤングによって改良され、「ウォルサム・バターナッツ」として広く普及することになりました。
日本では比較的最近になって注目を集め始めた野菜ですが、欧米では古くから親しまれている定番食材。特に秋から冬にかけての季節料理には欠かせない存在となっています。近年は日本でも家庭菜園で栽培する人が増えており、8月から10月頃に旬を迎える秋野菜として、徐々に認知度が高まってきているようですね。
濃厚な甘みとねっとり食感が生む多彩な魅力
バターナッツかぼちゃの魅力は、その独特の味わいと食感にあります。生の状態では硬く、包丁で切るのも一苦労ですが、加熱すると驚くほど柔らかくなり、まるでバターのようにとろけます。
糖度は一般的なかぼちゃよりも高く、完熟したものは特に甘みが強くなります。選ぶ際は、濃い黄褐色のものを選ぶのがポイント。これは熟していて甘味が強く出ている証拠なんです。また、持った時にずっしりと重みを感じるものが良品とされています。
食感の面白さも、このかぼちゃの大きな特徴です。スープにすればベルベットのような滑らかさ、ローストすれば外はカリッと中はねっとり、薄切りにして焼けばチップスのような食感も楽しめます。この多様性こそが、料理人たちを魅了してやまない理由なのでしょう。
香りも独特で、加熱すると甘い香りが立ち上ります。ナッツのような香ばしさも感じられ、これがバターナッツという名前のもう一つの由来かもしれませんね。
世界各地で愛される調理法とアレンジ
バターナッツかぼちゃは、世界中で様々な調理法で楽しまれています。最も代表的なのは、やはりオーブン焼きでしょう。長軸に沿って二つに割り、オーブンでじっくりと焼く――これだけでも立派な一品になります。
アメリカでは感謝祭の定番料理として、ローストしたバターナッツかぼちゃが食卓に並びます。イギリスではスープが人気で、特に「バターナッツ・スクワッシュ・ビスク」は秋冬の定番メニュー。フランスでは、グラタンやキッシュの具材としても重宝されています。
日本での楽しみ方も多様化してきました。薄切りにしてサラダ油で焼き、ハーブ塩を振るだけのシンプルな調理法も人気です。薄くスライスして、両面をさっと焼いて焦げ色をつける――これだけで素材の甘みが引き立つ絶品の一皿に。煮物にしても崩れにくく、和食との相性も抜群なんです。
最近では、バターナッツかぼちゃを使ったスイーツも登場しています。その濃厚な甘みを活かしたプリンやタルト、スムージーなど、デザートとしての可能性も広がっているようです。
スープからローストまで、幅広い料理への活用
バターナッツかぼちゃの調理において、まず知っておきたいのは下処理の方法です。皮は加熱すると柔らかくなって食べられますが、生の状態では非常に硬いため、ピーラーで剥くか、加熱後に取り除くのが一般的です。
スープにする場合は、皮を剥いて適当な大きさに切り、玉ねぎと一緒に炒めてからブイヨンで煮込みます。ミキサーにかければ、驚くほど滑らかなポタージュの完成。生クリームを加えれば、レストランのような本格的な味わいに。
ローストする際は、オリーブオイルを塗って、塩・胡椒・お好みのハーブで味付けを。200度のオーブンで30〜40分焼けば、表面はカラメル化して香ばしく、中はとろとろの食感に仕上がります。これ、本当に美味しいんです!
長期保存も可能!選び方と保存のコツ
バターナッツかぼちゃを選ぶ際のポイントは、まず色をチェックすること。濃い黄褐色のものほど熟していて甘みが強いです。表面に傷や凹みがなく、つやがあるものを選びましょう。持った時にずっしりと重みを感じるものが、果肉が詰まっている証拠です。
保存方法も知っておくと便利ですね。丸ごとの状態なら、涼しく風通しの良い場所で1〜2ヶ月は保存可能。切った後は、種を取り除いてラップで包み、冷蔵庫で3〜4日以内に使い切りましょう。
冷凍保存も可能です。皮を剥いて適当な大きさに切り、生のまま冷凍用保存袋に入れて冷凍庫へ。または、一度加熱してペースト状にしてから冷凍すれば、スープ作りの時短にもなります。冷凍なら3ヶ月程度は美味しく保存できますよ。
収穫時期は8月から10月頃がピーク。この時期のものは特に甘みが強く、栄養価も高いとされています。旬の時期を狙って購入し、まとめて調理して冷凍保存しておくのも賢い方法かもしれませんね。
まとめ
バターナッツかぼちゃは、その愛らしい見た目とは裏腹に、実に奥深い魅力を持つ野菜です。1940年代のアメリカで生まれ、今や世界中で愛される食材となったこのかぼちゃは、「バターのように滑らかで、ナッツのように甘い」という名前の通りの味わいを私たちに届けてくれます。
一般的なかぼちゃとは異なる、ねっとりとした食感と濃厚な甘み。スープにすれば絹のような滑らかさ、ローストすれば香ばしさと甘みのハーモニー、薄切りで焼けばおつまみにも最適――その調理法の多様性も大きな魅力です。
選び方や保存方法を知れば、より美味しく、より長く楽しむことができます。濃い黄褐色の完熟したものを選び、適切に保存すれば、秋から冬にかけての食卓を豊かに彩ってくれることでしょう。
まだバターナッツかぼちゃを試したことがない方は、ぜひ一度手に取ってみてください。新しい食材との出会いは、料理の楽しさを再発見させてくれる――バターナッツかぼちゃは、まさにそんな素敵な出会いを提供してくれる野菜なのです。