4月 27, 2021

料理が「おいしい」のはもちろん、さらにきれいに料理をしたいんです

料理が「おいしい」のはもちろん、さらにきれいに料理をしたいんです

宮島由香里|フランス料理人

パティシエから料理人に転身した宮島シェフは、パティシエらしい正確で細かな仕事と、料理人らしい感性をもって一つ星レストランのスーシェフ(副料理長)になった実力派です。ココットを使った蒸し料理ながらも、蒸しあがって蓋を開ければ春から初夏にかけての色とりどりの食材が現れます。色や形を意識した「美しい出来あがり」のレシピにも注目です。

幼いころのお菓子作り、レストランパティシエ、シェフ時代を通じて「おいしくて、きれいなものが好きだった」という宮島シェフは、シェフレピのメニューにどんな思いを込めたのでしょうか。

パティシエと料理人、感性と正確さを併せ持つ

長野県上田市に生まれた宮島シェフは、小さい頃からお菓子作りが大好きだったそうです。パティシエになるために上京し、都内の製菓専門学校を卒業すると、卒業後はレストランのパティシエとして料理界に入ります。

「そんなに大きいお店ではなかったので、パティシエの仕事もしつつ、お料理の盛り付けを手伝うこともありました。もともとお菓子だけでなくお料理を作ること全般が好きだったので、同じ空間で働いているなら料理もできるようになりたいという思い料理にも重きを置くようになったんです」

パティシエの仕事は、計量がすべてといえるくらい工程の正確さ、見ための華やかさを重視しています。一方、料理人は、どちらかというと感性を大切にする傾向があります。レストランパティシエとしてデザートだけでなく料理も学んだことで、料理人がもつ感覚的な発想も得ることができたといいます。

「両方の感性と技術を活かして、たとえば盛り付けの際に、ピューレを絞り袋に入れて絞り出してデコレーションしたり、ケーキの回転台を使って盛り付けたりすることもありました。パティシエの要素を含ませながら、甘味を塩味に変えてお出ししたりとか。つい最近だとシフォンケーキをお料理にアレンジしたシフォン・サレ(塩味のシフォン)を考えたりしました」

切れ端の野菜もきれいに切れば、美しく輝く

幼少期にお菓子作りをしていたころからフランス菓子の美しさに魅了されてきたという宮島シェフ。料理人になっても、「きれいな料理」に変わらず魅了されていたといいます。さらに、前職と前々職での上司にあたるシェフ、宮崎慎太郎さんも最初のレストランでのポジションがパティシエで、繊細で美しい、正確で丁寧な仕事が求められる宮崎シェフのキッチンで働けたことは、宮島シェフにとっては幸運だったといます。

シェフレピに提供した「仔羊背肉のローストと骨つきバラ肉のブレゼ」でも料理の味付けはもちろん、「煮崩れしない大きさに切る」「色あいとして緑の野菜を」など、宮島シェフは、出来あがりの美しさを意識していることに気付かされます。

「昔から賄いを作ってみても、野菜の切れ端をどう使うかをポイントとして考えていました。切れ端でも切り方ひとつで、綺麗に見えたりするんですよ。でも、切れ端のままみたいのを出してくる人もいるので、それぞれの性格もあると思います(笑)。私の場合は、おいしいのはもちろんですけど、見た目も『できるだけきれいに』というのは、その頃から意識しています。今回のようにおうちで作るにしても、お鍋を開けたときの美しさとか、きれいな盛り付けといった点は、どうやったら再現してもらえるだろうというのは、とても悩みました」

素材に対して最適に調理するレストラン的調理法

ちなみに宮島シェフは、ラムチョップの焼きの伝え方も難しいポイントだったそうです。ラムチョップの骨のまわり、骨が邪魔して焼きづらい部分を、どうしたらおいしく焼けるかについて悩んだ末、レストランでもやっている別々に調理するテクニックを提案してくれました。

「骨のまわりの脂は焼き切らないと食感がグニョっとしてしまって、それを脂っぽいと感じてしまう方も多いと思うんです。レストランでは、今回のようにロースとバラに分けて、バラは部分コンフィ(油のなかで低温で加熱する)にしたあとで、脂の面だけをカリっと焼いて別々に調理していました。そのテクニックを使って、ちょっと手間ではあるのですが、ラム肉を料理してもらえると、どの部分もおいしく食べてもらえると思います」
それぞれの素材に適した調理を施すことは「おいしく食べてもらいたい」という作る人の思いが、レシピに込められています。「シェフレピ」の最大の体験価値は、そうした宮島シェフの想いをレシピを通じて感じとることでもあります。

 

宮島由香里●みやじま・ゆかり
製菓専門学校を卒業後、都内のレストランで約5年間、パティシエールとしてレストランデセールを学ぶ。2007年、丸の内「ヌーヴェルエール」のオープンとともにシェフドパティシエールに就任。料理へのさらなる可能性を追い求め、パティシエとして働きながらフランス料理を学ぶ。そして、2010年、同店のスーシェフを兼任、2014年にはシェフに就任した。パティシエールというルーツを持った女性フレンチシェフという独特な感性を活かし、繊細で華やか、そして優しさのある料理を創作する。2016年、ザ・リッツ・カールトン東京 ミシュラン1つ星獲得のメインダイニング 「アジュール フォーティーファイブ」のスーシェフに就任。2021年4月、同店を退職し、次のステージの準備を進めている。

文/江六前一郎

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