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はじめに
こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「スコーン」についてお話していきたいと思います。スコーンと聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?紅茶と共に優雅なティータイムを彩る、素朴でありながら上品な焼き菓子。それがスコーンです。16世紀のスコットランドで生まれたとされるこの伝統菓子は、今や世界中で愛される定番のお茶菓子となりました。シンプルな材料から生まれる奥深い味わい、そして食べ方一つにも歴史と文化が詰まっているスコーンの世界を、詳しくご紹介します。
スコーンが語る英国の食文化
スコーンは、スコットランドのパンの一種である「バノック」から派生した焼き菓子です。小麦粉にベーキングパウダーを加え、バターと牛乳でまとめて軽く捏ね、成形して焼き上げるというシンプルな製法が特徴です。イーストを使わないため発酵時間が不要で、思い立ったらすぐに作れる手軽さも魅力の一つですね。
その名前の由来には諸説ありますが、最も有力なのは「白いパン」を意味する中世オランダ語の「schoonbrood(スコーンブロート)」から来ているという説です。また、スコットランドのパースにある「スコーン宮殿」の、歴代の王の戴冠式で使われた「運命の石(スコーンの石)」に由来するという、なんともロマンチックな説もあります。
プレーンのスコーンは、見た目も味わいも素朴そのもの。だからこそ素材の良さが際立つんです。小麦粉の香ばしさ、バターのコク、そして焼き立ての温かさ…シンプルだからこそ奥が深い、それがスコーンの魅力なのかもしれません。
王室から庶民まで:時代と共に歩んだスコーンの変遷
スコーンの歴史は16世紀のスコットランドに遡ります。当初は大きな円形に焼いて、それを三角形に切り分けて食べていたそうです。今のような個別の形になったのは、もう少し後の時代になってからのこと。
スコットランドで生まれたスコーンは、やがてイングランドに伝わり、19世紀のヴィクトリア朝時代には上流階級のアフタヌーンティーに欠かせない存在となりました。優雅な午後のひととき、紅茶と共にスコーンを楽しむ…そんな贅沢な時間が、当時の社交の場では当たり前だったんですね。
サクッとふんわり:理想的な食感を生み出す秘訣
スコーンの最大の特徴は、その独特な食感にあります。外側はサクッと香ばしく、中はふんわりとしていて、でもケーキのようにふわふわすぎない。この絶妙なバランスは、どうやって生まれるのでしょうか?
秘密は、生地の扱い方にあります。バターを粉に切り込むようにして混ぜ、牛乳を加えたら軽くまとめるだけ。捏ねすぎると固くなってしまうので、生地がまとまる程度で止めるのがコツです。この加減が、サクふわ食感を生み出すんです。
また、ベーキングパウダーの働きも重要です。オーブンの熱で一気に膨らむことで、層状の構造ができ、あの特徴的な食感が生まれます。焼き立てを割ると、ほろほろと崩れるような断面が現れる。あれこそが、理想的なスコーンの証なのです。
温度管理も大切です。冷たいバターを使い、生地も冷やしてから焼く。この温度差が、サクッとした食感を生み出します。まるで科学実験のようですが、それがお菓子作りの面白さでもありますよね。
国境を越えて広がるスコーンの多様性
スコーンは海を渡り、世界各地で独自の進化を遂げました。特に興味深いのが、イギリスと北米での違いです。
イギリスでは、プレーンのスコーンが主流。シンプルな生地に、ジャムとクロテッドクリームを添えて食べるのが定番です。一方、北米のスコーンは具材入りが基本。ブルーベリーやクランベリー、チョコレートチップなどを混ぜ込み、生地自体も甘めに仕上げます。砂糖衣をかけることもあり、もはや別物と言ってもいいくらいの違いがあります。
日本では、両方のスタイルが楽しめるのが嬉しいところ。カフェではイギリス式のプレーンスコーンが、ベーカリーではアメリカ式の具材入りスコーンが人気です。抹茶や黒豆など、和の素材を使ったスコーンも見かけるようになりました。
地域による違いといえば、食べ方の論争も忘れてはいけません。クロテッドクリームとジャム、どちらを先に塗るか?コーンウォール式(ジャムが先)とデヴォン式(クリームが先)の論争は、長い歴史を持っているそうです。私はどちらも試してみましたが、正直どちらも美味しい!皆さんはどちら派でしょうか?
シンプルな材料が織りなす深い味わい
スコーンの材料は驚くほどシンプルです。小麦粉、ベーキングパウダー、バター、牛乳。基本的にはこれだけ。砂糖と塩を少々加えれば、もう生地の準備は完了です。
小麦粉は中力粉か薄力粉を使います。イギリスでは中力粉が一般的ですが、日本では薄力粉でも十分美味しく作れます。
バターは無塩バターがおすすめ。有塩でも作れますが、塩分の調整が難しくなります。牛乳の代わりにヨーグルトやバターミルクを使うレシピもあり、これらを使うとより軽い食感に仕上がります。
最近では、ホットケーキミックスを使った簡単レシピも人気です。確かに手軽ですが、やはり一から作るスコーンには、素材の味わいと作る楽しさがあります。週末の朝、ゆっくりとスコーンを焼く時間…そんな贅沢もいいものですよ。
本場仕込みの調理法で作る極上スコーン
本格的なスコーンを作るには、いくつかのポイントがあります。まず、材料は全て冷やしておくこと。特にバターは、使う直前まで冷蔵庫に入れておきます。
粉類をボウルに入れたら、冷たいバターを小さく切って加えます。ここで使うのがペストリーブレンダーやフォーク。バターを粉に切り込むようにして、そぼろ状になるまで混ぜます。この作業、慣れないうちは大変ですが、だんだんコツがつかめてきます。バターの粒が少し残っているくらいがちょうどいい。完全に混ざってしまうと、サクサク感が失われてしまうんです。
牛乳を加えたら、さっくりとまとめます。捏ねすぎは厳禁!生地がまとまったら、打ち粉をした台の上で軽く伸ばし、型で抜くか包丁で切り分けます。厚さは2〜3センチが理想的。薄すぎるとビスケットのようになってしまいます。
オーブンは高温(200〜220度)で予熱しておき、12〜15分ほど焼きます。表面がきつね色になったら完成です。焼き立ての香り…たまりませんね!
まとめ
スコーンは、16世紀のスコットランドで生まれ、イギリス全土に広まり、今や世界中で愛される焼き菓子となりました。シンプルな材料から生まれる奥深い味わい、外はサクッと中はふんわりとした独特の食感、そして紅茶との相性の良さ。これらすべてが、スコーンを特別な存在にしています。
プレーンなイギリス式から具材たっぷりのアメリカ式まで、スコーンの世界は実に多様です。クロテッドクリームとジャムの順番で長年論争が続いているなんて、なんとも愛すべき文化ですよね。
週末の朝、焼き立てのスコーンと紅茶で過ごすひととき。そんな小さな贅沢が、日常を豊かにしてくれます。ぜひ一度、手作りのスコーンに挑戦してみてください。きっと、その素朴な美味しさの虜になることでしょう。
さいごに
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軽い食感ながら、2種類のチョコレートから生まれる濃厚な味わいをぜひお試しください。
また、ヴィーガン向けの材料の置き換え方は、さまざまなお菓子作りに応用可能。
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