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マコモダケとは?知られざる水辺の恵みと魅力を徹底解説

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はじめに

こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「マコモダケ」についてお話ししていきたいと思います。マコモダケという名前を聞いて、キノコの仲間だと思われる方も多いのではないでしょうか?実はこの食材、イネ科の植物マコモの肥大した新芽で、れっきとした野菜なのです。中国や東南アジアでは古くから親しまれ、日本でも近年注目を集めているこの食材について、その魅力と特徴を詳しくご紹介します。

水辺に育つ神秘の野菜、マコモダケの正体

マコモダケは、イネ科マコモ属の多年草「マコモ(真菰)」の根元に形成される肥大した茎の部分を指します。別名「真菰筍」とも呼ばれ、その名の通りタケノコのような外見をしていますが、実際はまったく異なる植物です。

マコモは沼や河川、湖などの水辺に自生し、成長すると人の背丈ほどにもなる大型の抽水植物です。

このマコモダケが形成されるのは、実は黒穂菌という菌の作用によるもの。この菌がマコモの茎に寄生することで、茎が肥大化し、私たちが食べるマコモダケになるのです。まさに自然が生み出した奇跡の食材と言えるでしょう。

古代から続く、マコモと日本文化の深い絆

マコモの歴史は古く、古事記や万葉集にもその名が登場します。「神の宿る草」として崇められ、神社の注連縄や茅の輪の材料として使われてきました。

特に興味深いのは、出雲大社で毎年6月に行われる「凉殿祭(すずみどののまつり)」です。御手洗井までの道中に清い砂を敷き、その上にマコモを置いて宮司が歩くという神聖な儀式。宮司が踏んだマコモには御神威が宿るとされ、参拝者はこれを持ち帰って神棚に飾ったり、浴槽に入れたりするそうです。

また、マコモダケが黒く変色したものからは「真菰墨」という黒い顔料が得られ、かつてはお歯黒や眉墨(まゆずみ)として使われていました。三重県の菰野町の名前も、このマコモに由来すると言われています。まさに日本の文化と深く結びついた植物なのです。

シャキシャキ食感が魅力!マコモダケの特徴

マコモダケの最大の魅力は、なんといってもその独特の食感です。生で食べるとシャキシャキとした歯ごたえがあり、加熱するとタケノコのような、それでいてアスパラガスのような柔らかさも併せ持つ、なんとも言えない食感になります。

味はクセがなく、ほのかな甘みがあるのが特徴。この淡白な味わいが、どんな料理にも合わせやすく、中華料理では炒め物に、和食では天ぷらや煮物に、洋食ではグラタンやパスタの具材にと、幅広く活用されています。

見た目は白く美しく、皮を剥くと真っ白な可食部が現れます。時々黒い斑点が見られることがありますが、これは黒穂菌の胞子で、食べても全く問題ありません。むしろ、この黒い部分があることが、天然のマコモダケである証とも言えるでしょう。

旬は9月から11月頃。この時期になると、スーパーや直売所、道の駅などで見かけることが増えてきます。最近では栽培農家も増え、以前より手に入りやすくなってきました。

日本各地で広がる、マコモダケ栽培の輪

マコモダケの主な産地は、中国、東南アジア、台湾ですが、日本でも各地で栽培が広がっています。特に三重県、石川県津幡町、新潟県、長野県などが有名な産地として知られています。

三重県菰野町では、町名の由来にもなったマコモを活かした地域おこしが行われており、「菰野の真菰」というブランド化も進んでいます。石川県津幡町では「津幡まこも」として特産品化され、地域の新たな名物として注目を集めています。

栽培方法は比較的シンプルで、水田を利用して育てることができるため、米作りの副業として取り組む農家も増えているようです。農薬をほとんど使わずに栽培できることから、有機栽培や自然農法に取り組む生産者も多く、安全・安心な食材としても評価されています。

タケノコとアスパラの良いとこ取り?マコモダケの食材としての魅力

マコモダケを料理に使う際の最大の利点は、その扱いやすさです。アクが少なく下茹での必要がないため、皮を剥いてそのまま調理できます。これはタケノコと比べると格段に手軽ですね。

栄養面では、食物繊維が豊富で、カリウムも含まれています。低カロリーでヘルシーな食材として、健康志向の方にも人気があります。

炒めて、揚げて、煮て…マコモダケの多彩な調理法

マコモダケの調理法は実に多彩です。最もシンプルなのは、薄切りにして炒め物にする方法。オイスターソースで炒めれば本格的な中華料理に、バター醤油で炒めれば和洋折衷の一品になります。

天ぷらにすると、外はサクサク、中はホクホクの絶品に。衣を薄くつけることで、マコモダケ本来の甘みと食感を楽しめます。素揚げにして塩を振るだけでも、お酒のおつまみに最適です。

炊き込みご飯に入れるのも人気の調理法。マコモダケを1cm角に切って、醤油、みりん、だしで炊き込めば、秋の味覚たっぷりの炊き込みご飯の完成です。きのこ類と一緒に炊き込むと、より深い味わいになります。

生食も可能で、薄くスライスしてサラダに加えたり、浅漬けにしたりすることもできます。シャキシャキとした食感が楽しめ、さっぱりとした味わいが箸休めにぴったりです。

まとめ

マコモダケは、古くから日本の文化と深く結びついてきた植物でありながら、食材としては比較的新しい存在として注目を集めています。

タケノコのような見た目とアスパラガスのような食感を併せ持ち、クセのない味わいで様々な料理に活用できるマコモダケ。9月から11月の旬の時期には、ぜひ一度手に取って、その魅力を味わってみてください。炒め物、天ぷら、炊き込みご飯など、どんな調理法でも美味しくいただけるこの食材は、きっとあなたの食卓に新しい楽しみをもたらしてくれることでしょう。

神の宿る草として崇められてきたマコモが、現代の私たちの食卓に新たな恵みをもたらしてくれる。そんな歴史のロマンを感じながら味わうマコモダケは、格別な美味しさがあるのではないでしょうか。

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