🏠 » シェフレピマガジン » シェフインタビュー » バスク料理の”茶色のうま味”を味わってください

バスク料理の”茶色のうま味”を味わってください

この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。

清水和博|エチョラ

清水和博さんは、年に1度は、1カ月間スペインのバスク地方に渡って現地のレストランで研修に励むといいます。今回のレシピは、バスクの海辺の町・ゲタリアにあるレストラン「エルカノ」(ミシュラン一つ星)での研修中に食べた賄いをアレンジしたもの。「日本では馴染みのないウサギ肉ですが、バスクでは家庭料理の定番。さわってみると鶏肉に似ていることがわかると思います」と清水さんはいいます。

パエリアやアヒージョ、生ハムといったバル文化がいち早く日本に入ってきたスペイン料理にあって、より多様な地域性のあるスペイン料理の本来の姿を伝えていきたいという清水さんに、スペイン料理との出会いを聞きました。

フェラン・アドリア氏に憧れた清水少年

20世紀末、スペイン・カタルーニャのレストランが、世界のレストランに革命を起こしました。伝説のレストラン「エル・ブリ」です。

このエル・ブリのシェフ、フェラン・アドリア氏が初めて来日したのは、2002年のこと。当時、清水さんは13歳、中学1年生のときでした。

「日本に初めて来た年だったかは定かではないのですが、中学生のころにフェラン・アドリアさんが作る料理をテレビで観たんです。パエリアやアヒージョといったスペイン料理しか知らなかった僕には、それとはまったく違うだけでなく、どの料理よりもかっこよく映ったんです」

以前からマンガ『美味しんぼ』(雁屋哲作・花咲アキラ画、小学館)を愛読していた清水さんは、アドリア氏との出会いが後押しになり、料理人を目指し調理科のある高校に入学します。そして卒業後は、スペイン料理だけでなく幅広い料理を学びたいと、大阪にあった無国籍料理レストラン「KIHACHI」に入店し、6年間研鑽を積みます。

「KIHACHIで働きながら、休みの日は、スペイン料理の店を食べ歩いて学ぶ。そんな日々のなかで、やっぱりスペインで修業をしたいという想いが強くなっていきました。そういったなかで、現在シェフをしている『エチョラ』の姉妹店であるバル『ガストロテカ ビメンディ』のシェフのお話をいただいたんです」

スペインに渡るか、日本に残るか。最初に憧れた「エル・ブリ」のあるカタルーニャ料理も学びたいが、ビメンディがテーマにしている世界的な美食エリアのバスク料理も魅力がある。清水さんは、結論を出しあぐねたといいます。

「そのなかで一つきっかけになったのは、まだまだ日本に伝わっていないバスクの食文化でした。日本には、バスク料理のレストランに人気が集まり始めていましたが、繊細でレストラン然とした料理はバスク地方の食の魅力である一方で、たとえば、薪や炭を使ってシンプルに焼き上げる料理の魅力もある。そういったものは、質のいい日本の食材とも相性が良いですし、調理法も自分にあっているように感じたのです」

さらにオーナーから「年に1度、1カ月程度研修をしながらシェフをしてもいい」という提案もあり、清水さんは、2014年にビメンディのシェフに就任します。

研修先のレストランで食べた「賄い」をレシピに

ビメンディの1年目からバスクへの研修をし、2年目に現在の「エチョラ」のシェフに就任後もバスクでの研修を続けてきましたた。新型コロナウイルスによるパンデミックで、2020年はバスク研修ができませんでしたが、通うたびにさまざまな発見をして帰国したといいます。

「バスクには、フランス料理にはみられないようなソースが多いんです。オイルとニンニクというのはスペインの他の地方でもみられるものですが、そこに野菜を茶色くなるまでしっかり炒めてうま味を引き出して濃度もつけたソースは、バスク料理の特徴だと思います。食材も乾燥ピーマンやパプリカパウダーなど、バスクらしいものもたくさんあるんです」

たとえば、今回のレシピで使うウサギ肉とバスク産のシードルを使った煮込み料理も、バスクの家庭料理の定番です。清水さんも研修先のバルやレストランの賄いで何度も食べた味だといいます。

「どこの店でも週に1度は、賄いでウサギ料理が出てきたくらい日常的な食材です。今回のレシピは、バスクの海辺の町・ゲタリアにあるレストラン『エルカノ』で食べた賄いを思い出しながら考えたものです。ポイントは、バスクらしくしっかりと野菜を炒めること。動画を見ていただいてもわかりますが、『やりすぎじゃないの?』というくらいまでしっかりと炒めることで、うま味を引き出しています」

日本ではなかなか手に入りずらいウサギ肉のレシピですが、鶏肉や豚肉でも代用できるそう。しっかりと野菜を炒めて作るバスクのソースを覚えて、さまざまな料理に応用してみてください。

清水和博●しみず・かずひろ
1989年、兵庫県生まれ。中学時代に、「エル・ブジ」のフェラン・アドリア氏をテレビで知り、スペイン料理に興味を持つ。調理科のある高校に進学し、卒業後は大阪の無国籍料理の【KIHACHI】で料理の基礎を学ぶ。2014年にスペインバル「ガストロテカ ビメンディ」のシェフに就任。翌2015年にはバスク料理のレストラン「エチョラ」のシェフになる。毎年スペイン・バスクの星付きレストランやワイナリーで1カ月程度研修を繰り返し、バスクの味を追求する。
エチョラ:http://www.etxola.com/
Instagram:https://www.instagram.com/kaazuuu/

🏠 » シェフレピマガジン » シェフインタビュー » バスク料理の”茶色のうま味”を味わってください