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はじめに
こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「カタラーナ」についてお話ししていきたいと思います。スペイン・カタルーニャ地方で生まれたこの伝統的なデザートは、近年日本でも注目を集め、回転寿司チェーンやカフェのメニューにも登場するようになりました。表面をバーナーで焦がしたカラメルのパリパリとした食感と、その下に隠れた濃厚でなめらかなカスタードクリーム。この対照的な食感のコントラストこそが、カタラーナの最大の魅力です。
カタラーナ:カタルーニャが生んだ伝統の冷菓
カタラーナは、正式には「クレマカタラーナ(Crema Catalana)」と呼ばれ、スペイン・カタルーニャ地方の伝統的なデザートです。別名として「クレマ・デ・サント・ジョゼプ」や「クレマ・クレマーダ」とも呼ばれることがあります。これらの名前からも分かるように、このデザートはカタルーニャの文化と深く結びついています。
特に「クレマ・デ・サント・ジョゼプ」という名前は、毎年3月19日の聖ヨセフの日に食べられる伝統があることに由来しています。カタルーニャ地方では、この日に家族が集まり、手作りのカタラーナを楽しむ習慣が今も残っているそうです。まさに地域の文化と共に育まれてきた、歴史あるデザートなんですね。
中世から続く焼き菓子の系譜
カタラーナの起源については諸説ありますが、中世のカタルーニャ地方で生まれたとされています。興味深いことに、フランスの高級デザートとして知られるクレームブリュレの原型とも言われており、カタラーナの方が歴史的には古いという説もあるんです。
当時の修道院で作られていたという記録も残っており、宗教的な祝祭日に振る舞われる特別なデザートだったようです。砂糖が貴重品だった時代に、表面に砂糖をたっぷりと使って焦がすという贅沢な調理法は、まさに特別な日のためのご馳走だったのでしょう。時代と共に一般家庭にも広まり、今ではカタルーニャ地方を代表するデザートとして、世界中で愛されるようになりました。
プリンでもアイスでもない、独特の食感の秘密
カタラーナの最大の特徴は、何といってもその独特の食感にあります。「プリンのような、アイスのような」と表現されることが多いのですが、実際に食べてみると、その表現がぴったりだと実感できます。
冷凍または半冷凍の状態で提供されることが多く、口に入れた瞬間はアイスクリームのようにひんやりとしています。しかし、口の中で溶けていく過程で、プリンのようななめらかでクリーミーな食感に変化していく。この温度による食感の変化が、カタラーナならではの魅力です。
そして忘れてはならないのが、表面のカラメル層です。砂糖をバーナーで直接焦がして作るこのカラメル層は、パリパリとした食感と香ばしい苦味を加え、甘いカスタードとの絶妙なバランスを生み出しています。スプーンでカラメルを割る瞬間のパリッという音も、食べる楽しみの一つですね。
地域で異なる楽しみ方とアレンジ
本場カタルーニャでは、伝統的なレシピを守りながらも、各家庭や地域によって微妙な違いがあります。例えば、カスタードにレモンやオレンジの皮を加えて柑橘系の香りを付けたり、シナモンスティックで風味付けをしたりすることもあります。
日本では、抹茶やほうじ茶を使った和風アレンジや、チョコレート、フルーツを加えたバリエーションも人気です。特に回転寿司チェーンで提供されているカタラーナは、日本人の好みに合わせて甘さを控えめにしたり、サイズを小さくしたりと、独自の進化を遂げています。
シンプルな材料が生む濃厚な味わい
カタラーナの材料は驚くほどシンプルです。基本的には卵黄、牛乳(または生クリーム)、砂糖、そしてコーンスターチ。この簡潔な材料構成が、素材の味を最大限に引き出す秘訣なのです。
卵黄の濃厚なコクと、牛乳のまろやかさが合わさることで、あの独特のクリーミーな食感が生まれます。コーンスターチは、冷やしても固まりすぎず、なめらかな食感を保つために欠かせません。
材料選びのポイントとしては、新鮮な卵を使うことが何より大切です。卵黄の風味がダイレクトに味に反映されるため、質の良い卵を選ぶことで、ワンランク上のカタラーナが作れます。
家庭でも楽しめる伝統の調理法
カタラーナの調理法は、基本的にはカスタードクリームを作る工程とよく似ています。まず、卵黄と砂糖をよく混ぜ合わせ、コーンスターチを加えて馴染ませます。そこに温めた牛乳を少しずつ加えながら混ぜていきます。これを弱火にかけて、とろみがつくまでゆっくりと加熱するのがポイントです。
ここで重要なのは、決して沸騰させないこと。温度が高すぎると卵が固まってしまい、なめらかな食感が失われてしまいます。木べらで鍋底を混ぜながら、じわじわと加熱していく。この工程には少し根気が必要ですが、丁寧に作業することで、口当たりの良いカスタードができあがります。
できあがったカスタードを型に流し入れ、冷蔵庫でしっかりと冷やします。そして最後の仕上げが、表面のカラメリゼです。グラニュー糖を表面に振りかけ、バーナーで焦がしていく。砂糖が溶けて琥珀色になり、香ばしい香りが立ち上がってきたら完成です。
まとめ
カタラーナは、スペイン・カタルーニャ地方の伝統と歴史を今に伝える、素晴らしいデザートです。クレームブリュレに似ていながらも、冷たい状態で楽しむという独自のスタイルを持ち、プリンとアイスクリームの良いところを併せ持った、まさに新感覚のスイーツといえるでしょう。
シンプルな材料から生まれる濃厚な味わい、表面のパリパリとしたカラメルと、なめらかなカスタードのコントラスト。これらすべてが調和して、カタラーナという唯一無二のデザートを作り上げています。本場の伝統的な味を楽しむのも良し、日本風にアレンジされたものを試すのも良し。ぜひ一度、この魅力的なスペインの伝統デザートを味わってみてください。きっと、その独特の食感と味わいの虜になることでしょう。