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伊達巻とは?華やかな黄金色に込められた由来と歴史

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はじめに

お正月のおせち料理を彩る鮮やかな黄金色の伊達巻。その華やかな見た目と、ふんわりとした食感は、新年の食卓に欠かせない存在です。

伊達巻は、卵と魚のすり身を合わせて焼き上げ、巻き簾で巻いて作る和食の卵料理。関西以西では「の巻」や「トラ巻」とも呼ばれています。一見シンプルに見えるこの料理には、江戸時代から続く歴史と、日本人の美意識が詰まっているのです。

この記事では、伊達巻の由来や歴史、その特徴的な材料と調理法について、詳しく解説していきます。

鮮やかな黄金色が食卓を彩る伊達巻の魅力

伊達巻は、白身魚やエビのすり身に卵と出汁を加え、みりんや砂糖で甘く調味して焼き上げた料理です。熱いうちに巻き簾で巻いて形を整えることで、あの特徴的な渦巻き模様が生まれます。

普通の卵焼きとは一線を画すのが、その鮮やかな黄金色と、ふわふわとした独特の食感。魚のすり身が加わることで、卵だけでは出せない軽やかな口当たりと、魚介の旨みが加わったコクのある味わいが実現しているのです。

家庭で作る場合は、生のすり身の代わりに、入手が容易なはんぺんで代用することができます。はんぺんを使えば、すり鉢でする手間が省け、より手軽に作れるようになりました。

巻き簾で巻く前の段階では、江戸前寿司の「玉子焼き」と類似していますが、伊達巻はより甘みが強く、ふんわりとした食感が特徴です。巻かずにそのまま仕上げたものは「厚焼き」と呼ばれ、また梅の花の型に流し込んで焼いたものは「梅焼き」と呼ばれています。

長崎生まれの「カステラかまぼこ」から伊達巻へ

伊達巻の起源は、江戸時代の長崎にあると言われています。当時、長崎で作られていた「カステラかまぼこ」という料理が、伊達巻のルーツとされているのです。

長崎は江戸時代、日本で唯一西洋との交易が許されていた港町でした。16世紀半ばにポルトガルから伝わったロールケーキが起源であるという説もあり、異国の文化と日本の食文化が融合して生まれた料理と考えられています。

「伊達巻」という名前の由来には、いくつかの説があります。最も有力なのは、江戸時代におしゃれな人を「伊達者」と呼んでいたことから、鮮やかな黄色で華やかな見た目の「派手な巻き卵」という意味で名付けられたという説です。

また、戦国時代の武将・伊達政宗の好物だったことから、その名が付いたという説も存在します。伊達政宗と言えば、派手好きで知られた武将。いや、むしろ彼の美意識の高さが、この料理の華やかさと重なったのかもしれませんね。

大阪府の食品メーカー・千日総本社(現:せんにち)により、伊達政宗の命日である5月24日が「伊達巻の日」に制定されているのも興味深い点です。

宮城県石巻市では、伊達巻と同じ材料を使い、同じように調理するものの巻かないものを「カステラかまぼこ」と呼んでおり、長崎から伝わった料理の名残を今に伝えています。

卵と魚のすり身が織りなす独特の食感

伊達巻の最大の特徴は、そのふわふわとした食感と、甘くコクのある味わいにあります。

主な材料は、卵、白身魚やエビのすり身(または代用としてはんぺん)、砂糖、みりん、出汁です。卵だけで作る普通の卵焼きとは異なり、魚のすり身を加えることで、空気を含んだような軽やかな食感が生まれます。

魚のすり身には、白身魚やエビが使われることが多く、これらの魚介の旨みが卵の風味と合わさって、独特のコクが生まれるのです。砂糖やみりんで甘く調味されているため、おせち料理の中でも子どもから大人まで幅広く愛される一品となっています。

巻き簾で巻いて作られる渦巻き模様は、見た目の美しさだけでなく、「巻物」を連想させることから、学問や文化の発展を願う縁起物としての意味も込められています。お正月に伊達巻を食べるのは、新しい年の知識や教養の向上を願う気持ちの表れなのです。

関西以西では「の巻」や「トラ巻」と呼ばれることもあり、地域によって呼び名が異なるのも面白いですね。

地域で異なる呼び名と食べ方のバリエーション

伊達巻は、日本全国で親しまれている料理ですが、地域によって呼び名や食べ方に違いがあります。

関東では「伊達巻」という名称が一般的ですが、関西以西では「の巻」や「トラ巻」と呼ばれることが多いのです。「トラ巻」という名前は、焼き色が付いた表面の模様が虎の縞模様を連想させることから付けられたと考えられています。

宮城県石巻市では、巻かずにそのまま仕上げたものを「カステラかまぼこ」と呼び、伊達巻の原型とも言える形で親しまれています。これは、長崎から伝わった「カステラかまぼこ」の名残を色濃く残しているのでしょう。

また、千葉県銚子などの地方では、伊達巻で酢飯や具を巻いた「伊達巻寿司」が供されています。伊達巻を寿司の具材として活用するという、ユニークな食べ方です。

一方、甘みの強い伊達巻ではなく、代わりにだし巻き卵を入れる地域もあります。地域の食文化や好みによって、おせち料理の内容も多様に変化しているのです。

同じ料理でも、地域によってこれほど多様な姿を見せるのが、日本の食文化の豊かさですね。

卵とはんぺんで作る黄金色の巻物

伊達巻の基本的な材料は、卵、魚のすり身(またははんぺん)、砂糖、みりん、出汁です。

は、伊達巻の鮮やかな黄金色を生み出す主役。全卵を使うことで、黄身の濃厚な風味と白身のふんわり感が両立します。

魚のすり身は、白身魚やエビが使われることが多く、これが伊達巻独特のふわふわとした食感を生み出します。家庭で作る場合は、はんぺんで代用するのが一般的。はんぺんは魚のすり身を原料とした練り製品で、入手が容易な上、すり鉢でする手間が省けるため、手軽に伊達巻を作ることができます。

砂糖とみりんは、伊達巻の甘みを生み出す調味料。この甘さが、おせち料理の中でも特に子どもたちに人気の理由です。

出汁は、魚介の旨みをさらに引き立て、コクのある味わいを加えます。

これらの材料を混ぜ合わせ、よくすり混ぜることで、空気を含んだふわふわの生地が完成します。材料はシンプルですが、その配合と混ぜ方が、伊達巻の仕上がりを左右するのです。

巻き簾で形を整える伝統の調理法

伊達巻の調理法は、一見シンプルに見えますが、実は繊細な技術が求められます。

まず、白身魚やエビのすり身に黄身や溶き卵と出汁を加え、よくすり混ぜます。家庭で作る場合は、はんぺんをフードプロセッサーやすり鉢で滑らかにし、卵と混ぜ合わせます。この時、空気を含ませるようにしっかりと混ぜることが、ふわふわの食感を生み出すポイントです。

次に、みりんや砂糖で甘く調味し、フライパンや卵焼き器で焼き上げます。焼く際は、弱火でじっくりと火を通すことが大切。表面に焼き色が付き、中まで火が通ったら、熱いうちに巻き簾(まきす)で巻いて形を整えます。

この「熱いうちに巻く」というのが、伊達巻作りの最大のポイント。冷めてしまうと生地が固くなり、きれいに巻けなくなってしまうのです。巻き簾でしっかりと巻いたら、輪ゴムなどで固定し、冷めるまで置いておきます。

冷めてから巻き簾を外すと、あの美しい渦巻き模様が現れます。この瞬間が、伊達巻作りの醍醐味と言えるでしょう。

切り分ける際は、よく切れる包丁で、一切れずつ丁寧に切ることで、断面の美しい渦巻き模様を楽しむことができます。

材料は簡単に揃うのに、手作りするにはなかなか手間のかかる伊達巻。だからこそ、既製品を購入する人が多い料理のひとつでもあります。しかし、手作りの伊達巻の味わいは格別ですよ。

まとめ

伊達巻は、江戸時代の長崎で生まれた「カステラかまぼこ」をルーツとする、日本の伝統的な卵料理です。その鮮やかな黄金色と華やかな見た目から、おしゃれな人を指す「伊達者」にちなんで名付けられたという説が有力です。

卵と魚のすり身を合わせて焼き上げ、巻き簾で巻いて作る伊達巻は、ふわふわとした独特の食感と、甘くコクのある味わいが特徴。おせち料理に欠かせない一品として、新年の食卓を彩り続けています。

関西以西では「の巻」や「トラ巻」と呼ばれ、地域によって呼び名や食べ方に違いがあるのも興味深い点です。巻物を連想させる渦巻き模様には、学問や文化の発展を願う縁起物としての意味も込められています。

材料はシンプルながら、その調理には繊細な技術が求められる伊達巻。熱いうちに巻き簾で巻いて形を整えるという工程が、あの美しい渦巻き模様を生み出すのです。

お正月に伊達巻を味わう際は、その華やかな見た目だけでなく、江戸時代から続く歴史と、日本人の美意識にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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