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はじめに
よだれ鶏という料理名を初めて耳にしたとき、多くの人が「よだれ」という言葉に少し驚かれるのではないでしょうか。しかし、その名前には深い意味が込められています。よだれ鶏は中国四川省発祥の冷菜で、茹でた鶏肉に唐辛子や花椒(ホワジャオ)、ラー油を使った辛いタレをかけた料理です。中国名は「口水鶏(コウシュイヂィ)」といい、「口水」は日本語で「よだれ」を意味します。
この料理が「よだれ鶏」と呼ばれるようになった背景には、ある文学者の情熱的な回想がありました。2020年頃から日本でも広く知られるようになり、今では多くの中華料理店で目にする定番メニューとなっています。
初めてよだれ鶏を食べたとき、その辛さと痺れのバランスに衝撃を受けました。特に花椒の痺れが舌に残り、後を引く美味しさに思わず箸が進んでしまったことを覚えています。名前のインパクトだけでなく、味そのものも強烈に印象に残る一皿ですね。
四川の盆地が生んだ、よだれが出るほどの美味しさ
よだれ鶏は、中国四大料理の一つに数えられる四川料理の冷菜です。四川省は内陸部に位置し、盆地特有の高温多湿な気候が特徴的。夏は蒸し風呂のような暑さになることから、発汗作用のある香辛料を多用する料理が発達しました。
この料理のベースになるのは「白切鶏(パイチエヂィ)」または「白片鶏(パイピエンヂィ)」と呼ばれる茹で鶏です。首や内臓、足先を取り除いた丸鶏を、ネギやショウガと一緒にじっくりと茹でて作ります。この白切鶏に、唐辛子や花椒、ラー油をたっぷりと使ったタレをかければ完成です。
タレの特徴は、辛味(辣味)と痺れ(麻味)の両方を兼ね備えていること。唐辛子のヒリヒリする辛さと、花椒の痺れるような刺激が口いっぱいに広がります。そこに醤油や酢の酸味が加わり、複雑で深い味わいを生み出しているのですね。
文学者の回想が名前の由来だった
よだれ鶏というユニークな名前の由来は、四川省出身の文学者・郭沫若(かくまつじゃく、1892〜1978年)の回想にあります。彼は中国近代文学・歴史学の先駆者として知られる人物です。
郭沫若は著書の中で、少年時代に故郷の四川省楽山市で食べた白切鶏について触れています。「真っ白な茹で鶏と、赤い海椒(ハイジャオ、唐辛子のこと)が入った辣油は、今思い出してもよだれが出てくる」と記したのです。この表現がきっかけとなり、「口水鶏」という名前が付けられたとされています。
また別の説として、酸味と辛味が効いたソースをからめて食べると、本当に涎があふれてくることから命名されたという話もあるようです。いずれにせよ、「よだれが出るほど美味しい」という意味が込められていることには、違いないのではないでしょうか。
日本での広まりと定着
日本において、1995年に赤坂で中華料理店「陳家私菜(ちんけしさい)」が1号店をオープンさせた際、蒸し鶏を使った中華料理といえば「棒棒鶏(バンバンジー)」が主流でした。その中で、陳家私菜は本場四川の「よだれ鶏」を日本の人々に紹介することに情熱を注いだのです。
独特な名前と香り高い味わいは、多くの人々の興味を引き、やがて食通たちの間で高く評価されるようになりました。伝統的なレシピを尊重しつつも、日本人の味覚に合うように微妙に調整を重ねた結果、現在提供されている「よだれ鶏」は多くの人々に愛される料理へと進化しました。
それから四半世紀以上を経て、2020年頃から日本でも広く知られるようになり、今では多くの中華料理店で目にする定番メニューとなっています。四川料理への関心の高まりとともに、その存在感を増しているのですね。
家庭で作れる基本の材料
よだれ鶏を家庭で作る場合、丸鶏ではなく鶏むね肉や鶏もも肉を使うのが一般的です。以下のような材料を用意すれば、本格的な味わいを再現できます。
鶏肉と下味
- 鶏むね肉または鶏もも肉:1枚
- 塩胡椒:少々
- 長ネギ(青い部分):適量
- ショウガ(スライス):2〜3枚
タレの材料
- ラー油:大さじ2〜3
- 花椒(ホワジャオ):小さじ1/2
- 唐辛子(乾燥):適量
- 醤油:大さじ2
- 黒酢または米酢:大さじ1
- 砂糖:小さじ1
- ごま:大さじ1
- ニンニク(みじん切り):1片分
タレの配合はお好みで調整可能です。辛さを控えめにしたい場合はラー油や唐辛子を減らし、酸味を強めたい場合は酢を増やしてみてください。花椒は独特の痺れる香りが特徴。本格的な味わいには欠かせないスパイスです。
鶏肉をしっとり仕上げるコツ
よだれ鶏の美味しさは、茹でた鶏肉のしっとりとした食感にもあります。鶏肉を柔らかく仕上げるためには、いくつかのポイントを押さえておきましょう。
まず、鶏肉を茹でる際は、ネギの青い部分やショウガを加えた湯でじっくりと火を通します。沸騰した湯に入れ、弱火に落として約15分ほど茹でましょう。その後、火を止めて蓋をし、余熱でさらに10分ほど蒸らすのがポイントです。
茹で上がったら、すぐに氷水にとって粗熱を取ります。こうすることで、鶏肉の旨味を閉じ込め、しっとりとした食感に仕上がります。皮目を上にして皿に盛り付け、たっぷりのタレをかければ完成です。
まとめ
書いているそばから、思わず手を伸ばしたくなるほど食欲をそそられます。よだれ鶏は、四川省の気候風土が生んだ、辛さと痺れが特徴の冷菜です。郭沫若の「よだれが出るほど美味しい」という回想から名付けられたという由来は、料理への愛情を感じさせます。
家庭では鶏むね肉や鶏もも肉を使って手軽に作ることができ、タレの配合を変えれば自分好みの味にアレンジも可能。花椒の痺れと唐辛子の辛さが口いっぱいに広がる、クセになる美味しさをぜひ味わってみてください。























