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はじめに
こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「ヤンニョムチキン」についてお話ししていきたいと思います。
ヤンニョムチキンは、韓国を代表する料理として、今や日本でも絶大な人気を誇っています。甘辛いソースがたっぷりと絡んだジューシーな鶏肉は、一度食べたら忘れられない味わいです。韓国では「チキン」といえば基本的にフライドチキンを指し、その中でも特に愛されているのがこのヤンニョムチキンなのです。
私が初めてヤンニョムチキンを食べたのは、韓国料理店でのことでした。真っ赤なソースに包まれた鶏肉を口に運んだ瞬間、甘さと辛さが絶妙に調和した味わいに驚きました。カリッとした衣にソースがしっかり絡み、最後の一口まで飽きることなく完食したのを覚えています。
甘辛ソースが決め手!ヤンニョムチキンの正体
ヤンニョムチキンの「ヤンニョム」は朝鮮語で「味付けされた」という意味を持ちます。つまり、ヤンニョムチキンは直訳すると「味付けされたフライドチキン」となります。調味されていない通常のフライドチキンは、韓国では鶏肉揚げ(닭고기 튀김)やフライドチキン(후라이드치킨)と呼ばれ、明確に区別されています。
この料理の最大の特徴は、何といってもその特製ソースにあります。コチュジャンをベースに、醤油、砂糖、にんにく、生姜などを組み合わせた甘辛いソースは、まさに韓国料理の真髄を体現しています。このソースこそが、単なるフライドチキンを特別な一品へと昇華させる魔法の調味料なのです。
冷めても美味しい!誕生秘話に隠された工夫
韓国では1970年代にフライドチキンが流行し始め、1977年には韓国初のフライドチキン専門店「リムズチキン」がオープンしました。そんな中、ヤンニョムチキンが誕生したのには興味深いエピソードがあります。
考案者の尹鐘桂(ユン・ジョンゲ)氏は、自分の店で客の食べ残しを丹念に分析していました。その結果、鶏肉は冷めると特有の臭みが出ることに気づいたのです。「鶏肉は冷めると特有の臭みが出る。その生臭さを消す韓国オリジナルのソースを作りたかったのさ」と、ユン氏は語っています。
この発想から生まれたヤンニョムチキンは、冷めても美味しく食べられるという画期的な特徴を持つことになりました。テイクアウトやデリバリーが主流となった現代において、この特性はまさに時代を先取りしていたと言えるでしょう。
カリッとジューシー!本場の味を支える3つの特徴
ヤンニョムチキンの美味しさを支える特徴は、大きく3つに分けられます。
まず第一に、二度揚げによる独特の食感です。最初は低温でじっくりと火を通し、次に高温でカリッと仕上げる。この手法により、外はサクサク、中はジューシーという理想的な食感が生まれます。
第二に、ボリューム感のある衣の存在です。韓国のフライドチキンは、日本の唐揚げと比べて衣が厚めなのが特徴。この厚い衣が、たっぷりのソースをしっかりと受け止める役割を果たしています。
そして第三に、何といってもあの特製ソースです。甘さ、辛さ、酸味、旨味が複雑に絡み合い、一度食べたらやみつきになる味わいを生み出しています。
地域で変わる!多彩なヤンニョムチキンの世界
韓国国内でも、地域や店舗によってヤンニョムチキンの味わいは異なります。ソウルでは比較的甘めの味付けが好まれる一方、釜山では辛さを強調したものが人気です。また、最近では蜂蜜を加えたハニーヤンニョムや、チーズをトッピングしたチーズヤンニョムなど、様々なバリエーションが登場しています。
興味深いのは、日本では辛さを控えめにしたり、マヨネーズを添えたりと、日本人の好みに合わせた調整が行われている点です。これもまた、料理が国境を越えて進化していく面白さと言えるでしょう。
家庭でも再現可能!基本の材料と味の秘密
ヤンニョムチキンの基本的な材料は、意外とシンプルです。メインとなる鶏肉は、もも肉でも胸肉でも構いません。ただし、ジューシーさを求めるならもも肉がおすすめです。
ヤンニョムソースの主な材料は以下の通りです:
- コチュジャン(韓国の唐辛子味噌)
- 醤油
- 砂糖または蜂蜜
- にんにく
- 生姜
- ごま油
- 酢またはレモン汁
これらを絶妙なバランスで配合することで、あの独特の甘辛い味わいが生まれます。家庭で作る際は、辛さや甘さを自分好みに調整できるのも魅力の一つ。子供向けには唐辛子を控えめにしたり、大人向けには青唐辛子を追加したりと、アレンジの幅は無限大です。
衣には片栗粉と小麦粉を混ぜることで、カリッとした食感を実現できます。また、ビールや炭酸水を加えると、より軽やかな仕上がりになりますよ。
プロが教える!本格ヤンニョムチキンの調理法
本格的なヤンニョムチキンを作るには、いくつかのポイントがあります。
まず下準備として、鶏肉は一口大にカットし、塩・胡椒・おろしにんにくで下味をつけます。30分ほど寝かせることで、味がしっかりと染み込みます。この工程、意外と重要なんです。
次に衣作りです。片栗粉と小麦粉を1:1の割合で混ぜ、そこに冷水を加えてダマにならないよう混ぜ合わせます。衣は厚すぎず薄すぎず、鶏肉全体をコーティングできる程度の濃度が理想的です。
揚げる際は、まず160度の油で4分ほどじっくりと火を通します。一度取り出して油を切り、今度は180度の高温で2分ほど二度揚げします。この二度揚げこそが、カリカリ食感の秘訣なのです。
最後に、熱々の鶏肉に特製ソースを絡めます。フライパンでソースを軽く温め、揚げたての鶏肉を投入して手早く絡めるのがコツ。ソースが焦げないよう、火加減には注意が必要です。仕上げに白ごまやピーナッツを散らせば、見た目も華やかになりますね。
まとめ
ヤンニョムチキンは、単なるフライドチキンを超えた、韓国の食文化が生み出した傑作料理です。冷めても美味しく食べられるという実用性と、甘辛いソースが織りなす中毒性のある味わいは、まさに現代の食生活にぴったりマッチしています。
考案者のユン・ジョンゲ氏が客の食べ残しから着想を得たという誕生秘話は、料理人の探究心と顧客への思いやりが生んだイノベーションの好例と言えるでしょう。韓国から日本、そして世界へと広がったヤンニョムチキンは、これからも多くの人々の食卓を彩り続けることでしょう。
自宅でも比較的簡単に作れるので、ぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか。きっと、あなたも韓国チキンの虜になるはずです。