10月 01, 2021

正体不明の料理人の姿がレシピの向こうに見えてくる

正体不明の料理人の姿がレシピの向こうに見えてくる

ロドゥラ|フランス料理人

Twitterを中心に、YoutubeやInstagram、ブログにnoteとさまざまなツールを使ってフランスの料理や菓子のレシピを発信し続けているロドゥラシェフの正体は、実在するプロのフランス料理人です。

カフェ(バリスタ、料理、菓子全般)の専門学校でパティシエを専攻していたロドゥラシェフは、卒業後、料理人に転向。21歳の若さでカジュアルレストランのシェフになりました。しかし、シェフと言えば聞こえはいいですが、実際は飲み屋街で席数60席を朝から晩まで回転させるような運営管理がなされてなかった飲食店でもう無茶苦茶でした」とロドゥラシェフは当時を振り返ります。

教えてくれる人が誰もいない不安。ロジックから先に詰め込んだ

飲食店の運営を誰も教えてくれない環境下で、「自分で何とか勉強するしかなかった」とロドゥラシェフは、本を読み漁っては、料理の作り方やオペレーションの効率化について勉強する日々が続きます。

その当時は、ロジック面をしっかり勉強しなければと思っていました。たとえば、肉を焼くときにひたすら感覚でやり続けるのと、中心温度を何度に仕上げればいいかを分かった上で焼き続けているのでは、成長速度とかでも違うと思うんです。そこで先にロジックを詰め込んでおいて、いざ実践になって『なるほど、これが正しいのか』と理解する。先に知識から入っていく方法をとったんです

そうして自己流ながらもなんとかピンチをくぐり抜け、少しずつ自信がついてきたというロドゥラシェフは、星付きレストランで自分の現在の力を試してみようと、日本を飛び越えてフランスに渡ります。ブルゴーニュ地方とローヌ地方の一つ星レストランで半年ずつ勤める武者修業に出かけたのです。

最初の苦労したレストラン以降、職場を転々とするなかで地中海料理をやっていたことがありました。その時の料理が個人的に気に入っていたので、働くなら南フランスと思いマルセイユのホテルで働くことも決まってたんです。しかし、急に都合悪くなって入れなくなってしまって……。それで、ブルゴーニュとローヌのレストランで働くことになりました

帰国したロドゥラシェフは、現在も勤めるレストランにシェフとして入店。以来6年間、同じ店で料理を作り続けています。

料理のことを無理やり考えるために始めたブログ

ブログやSNSで活動しだしたのは、2017年頃から。ブログを書き始めてからTwitterをスタートし、YoutubeやInstagram、noteと複数のSNSの特性にあわせた投稿を続けています。

僕はもともと『自分の店を持ちたい!』というような独立志向があまりなかったんです。雇われの料理人でいいと思っていました。ただ、それを10年以上も続けていると、ふと『歳を取った時にどうするんだろう』という先行きに不安を感じて、モチベーションが下がった時期があったんです。そんな時に無理やりでも自分が料理をする理由を作ろうと思って、ブログやSNSでの発信をし始めたんです

ブログで書き始めたレシピは、料理の本に書かれていない調理の肝をできるだけ説明していこうとロドゥラシェフは考えました。シェフ自身が独学で料理を学んできたなかで、本の中に調理の工程や食材の分量は書かれていても、それがどういうロジックをもとに考えられているのかまで触れられてないことが多いと感じていました。実際プロとして料理をしていくうえで、工程や数字だけを追っても味がわからなく、完成した料理も作者の味からぶれてしまうこともあるからです。

発信のために料理も作り、作るために料理のことを考える日々。やがて発信を続けていると見た人から反応が届くようになります。webストアを開設して菓子のEC通販を始めたのも、カヌレやショコラテリーヌのレシピをnoteで公開したのがきっかけ。投稿を見た人の反響を受けて菓子販売をスタートさせました。

少しずついろいろなお仕事ができるようになってきたことをきっかけに、レストランのシェフ以外のことも時間をしっかりとってやっていきたいなと思うようになりました。そして、オーナーに相談して社員としての契約から業務委託に雇用形態を変更してもらって、2年半くらい前に個人事業主として開業届を出して活動しています

クラシックの軸はブラさずにストーリーを展開していく

今回は個人の活動として受けたシェフレピでは、フランス南部の港町、セートの郷土料理を選びました。それには、いくつかの理由があるとロドゥラシェフはいいます。

ひとつは、ソース作る工程や、食材の水分のコントロール、ジュを煮詰めていく工程は、フランス料理らしいレシピであるからということ。さらに、味を足し算で加えていくような料理でもあって、フランス料理のすべてが詰め込めれている料理でもあることですね。あとはベースをクラシックにしたかったということもあります。伝統料理であるなかで、アレンジしながら全体のストーリーも作っていきたかったので、自分にとってなじみのある地中海料理でもあるイカのセート風煮込みが思い浮かんだんです

もともとは、イカを輪切りにしてトマトで煮込むのがイカのセート風煮込みで、それにアイヨリソースとライスつけて食べるのが一般的です。しかしそのレシピでは、イカの煮込んだ味わいしか引き出せません。そこでロドゥラさんは、ソテーする部位と煮込む部位に分けて調理して、両方の良さを楽しめるようにしています。

ただしなんでも最適化していくのがいいわけではなくて、やはり『セート風』にしている以上、イカを煮込んで旨味を引き出すことや、トマトやワインの酸味でうま味とバランスをとっていく点は外さずにアレンジするようにしました

変えない部分をしっかりと決めたうえで、地中海を舞台にしたストーリーを大きく広げていくのがロドゥラシェフ流。イカスミやイベリコ豚のチョリソーといった食材はスペイン・バスク地方の「肉の詰め物をしたイカの墨煮」から食材を引用をしています。

さらに地中海が発祥のクスクスは、フランスの対岸、北アフリカでも使われる食材です。付け合わせのシトロンコンフィは中世のオリエンタルな香りが漂う砂糖漬け果実。インドが原産のレモンは、9世紀にシチリアに持ち込まれ、砂糖は香辛料の一種として珍重されてた食材で、インドから輸入されていたものでもあります。

そして、コブミカンの葉は地中海からアラブ諸国を越えて遠く東南アジアへ。かつてフランス領でもあったタイが原産のハーブです。

地中海料理の店に勤めていたときは、モロッコ料理やイスラエル料理を出していたこともあったんです。個人的にそのあたりの料理が口にあったということもあって、スパイスを多用したり、ヨーグルトを使ったり、ミントといったクセのあるハーブを使うのも好きなんです」というロドゥラシェフ。

そんな話を聞きながら「剣先烏賊とイカスミのラグー クスクス添え」のレシピを作っていくと、正体不明だったロドゥラシェフの好みや人柄が少しずつレシピの向こうに見えてきます。

 

 

ロドゥラ●ろどぅら
フランス料理ロドゥラの名で、インターネット上で活躍する料理人。実際は、フランスの星付きレストランで働いた後、日本のレストランでシェフを勤める現役シェフである。カフェ(バリスタ、料理、菓子全般)の専門学校を卒業後、料理人として仕事を始める。日本のイタリアンやフレンチのレストランで働いた後、26歳で渡仏。ブルゴーニュ地方とローヌ地方の一つ星レストランで半年ずつ勤務して帰国する。帰国後は、高級フレンチレストランのシェフとして活躍。ブログやSNS、動画配信などの個人の活ども活発で、現在は、レストランシェフと個人活動を並行して行う新時代の料理人でもある。

ブログ:https://lau-dela-cuisine.com 
Twitter:https://twitter.com/laudelacuisine 
instagram:https://instagram.com/laudelacuisine 
note:https://note.com/laudela/ 
ECサイト(不定期販売)「パティスリーロドゥラ」:https://patisserie-laudela.stores.jp

文/["kanami", "江六前一郎"]

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