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はじめに
寒い日に体を温めてくれる、香ばしいチーズと甘い玉ねぎの香りがたまらない「オニオングラタンスープ」。フランス料理の定番として、世界中で愛されています。この記事では、オニオングラタンスープの定義、その興味深い歴史、味わいの特徴、そして本格的な調理法まで、その魅力を余すところなく解説します。
料理の定義と概要
オニオングラタンスープ(フランス語: Soupe à l’oignon gratinée)は、じっくりと炒めて甘みを引き出した玉ねぎをベースにしたスープに、パン(主にバゲット)を浮かべ、たっぷりのチーズを乗せてオーブンで焼き上げた、フランス発祥の温かいスープです。玉ねぎの深いコクと甘み、香ばしく溶けたチーズ、そしてスープを吸ったパンの食感が一体となった、満足感の高い一品です。
起源と歴史
オニオングラタンスープの起源には諸説ありますが、リヨン発祥の古くから存在していたシンプルなオニオンスープが原型とされています。玉ねぎは安価で手に入りやすく栄養価も高いため、古代ローマ時代からスープの材料として用いられてきました。
現代のようなグラタン仕立てのスープが登場したのは、18世紀頃のフランス・パリの中央市場(レ・アル)周辺と言われています。市場で働く人々が、夜通しの仕事で冷えた体を温めるために、余ったパンとチーズを乗せて焼いたのが始まりだという説が有力です。庶民的な料理から発展し、現在ではビストロやレストランの定番メニューとして定着しています。
主要な特徴
オニオングラタンスープの最大の特徴は、何と言っても「飴色玉ねぎ」の深い甘みとコクです。薄切りにした玉ねぎをバターやオイルで長時間、焦がさないようにじっくりと炒めることで、玉ねぎの持つ糖分がメイラード反応(加熱により糖とアミノ酸が反応し、褐色物質や香気成分を生み出す反応)を起こし、特有の香ばしさと濃厚な甘みが生まれます。この工程が、スープ全体の味の基盤となります。
もう一つの特徴は、スープ表面を覆う「グラタン」部分です。スープに浮かべたパン(多くは硬くなったバゲットが使われます)がスープを吸い込み、その上にグリュイエールチーズなどの風味豊かなチーズをたっぷり乗せて焼き上げます。オーブンで焼き上げることでチーズは溶けて香ばしい焼き色がつき、スープ、パン、チーズが三位一体となった複雑な味わいと食感を生み出します。熱々の状態で提供され、スプーンを入れるととろりと溶けたチーズが伸びる様子は、食欲をそそる視覚的な魅力も持っています。

地域による違いや派生
基本的な構成は共通していますが、使用するチーズの種類やブイヨンの種類(ビーフ、チキン、野菜など)、パンの種類、あるいは隠し味にワインやブランデーを加えるなど、地域や家庭、レストランによって細かな違いが見られます。
例えば、より濃厚な味わいを好む地域ではビーフブイヨンを使い、軽やかな仕上がりにしたい場合はチキンブイヨンや野菜ブイヨンが使われることがあります。チーズも、伝統的にはグリュイエールが使われることが多いですが、エメンタール、コンテ、パルメザンなどをブレンドしたり、手に入りやすい他のチーズで代用されたりすることもあります。
一般的な材料と特徴
オニオングラタンスープの基本的な材料はシンプルですが、それぞれが重要な役割を担っています。
- 玉ねぎ: 主役となる食材。じっくりと飴色になるまで炒めることで、甘みとコクを引き出します。
- ブイヨン(出汁): スープのベースとなる液体。ビーフ、チキン、野菜など、求める味わいに合わせて使い分けられます。深みのある味わいにはビーフブイヨンがよく合います。
- パン: スープに浮かべ、チーズを乗せて焼くための土台。フランスパン(バゲット)の、少し硬くなったものが水分を吸いすぎず、形を保ちやすいため適しているとされます。トーストしてから使うこともあります。
- チーズ: スープの表面を覆い、香ばしさと塩味、コクを加える重要な要素。伝統的にはグリュイエールチーズが使われますが、他のハードタイプやセミハードタイプのチーズも用いられます。溶けやすく、風味の良いものが選ばれます。
- バター/オイル: 玉ねぎを炒める際に使用します。バターは風味豊かに仕上がります。
- 塩・胡椒: 味を調えるために使われます。
- (お好みで)白ワイン、ブランデー、ニンニク、ハーブ類: 風味付けやコク出しのために加えられることがあります。白ワインは玉ねぎを炒めた後の鍋肌についた旨味(フランス料理で言う「シュック(sucs)」)を溶かし出す(デグラッセする)のに役立ちます。
本来の伝統的な調理法
オニオングラタンスープの美味しさを最大限に引き出すには、いくつかの伝統的な技法が重要になります。
- 玉ねぎを飴色になるまで炒める: 最も重要かつ時間のかかる工程です。弱火から中火で、焦がさないように絶えずかき混ぜながら、玉ねぎが深い飴色になるまで30分〜1時間以上かけてじっくりと炒めます。これにより、玉ねぎの辛味が消え、凝縮された甘みと香ばしさが生まれます。この工程を丁寧に行うことが、本格的な味わいの鍵となります。
- デグラッセ(Déglacer): 玉ねぎを炒めた後、鍋に白ワインなどを加えて鍋底に付いた旨味(シュック)をこそげ取る技法です。これにより、旨味を余すことなくスープに溶け込ませることができます。
- 煮込み: 飴色玉ねぎとブイヨンを合わせ、しばらく煮込むことで、玉ねぎの風味をスープ全体に行き渡らせます。
- グラティネ(Gratiner): スープを耐熱容器に入れ、パンを浮かべ、チーズを乗せてオーブンで焼き上げる工程です。「グラティネ」とはフランス語で「焼き色をつける」という意味で、この工程によりチーズが溶けて香ばしい焼き色がつき、料理が完成します。高温で短時間で焼き上げるのがコツです。
これらの工程を経ることで、家庭ではなかなか再現が難しい、レストランで提供されるような深みのある本格的なオニオングラタンスープが出来上がります。

まとめ
オニオングラタンスープは、シンプルな材料から作られながらも、丁寧な調理工程によって深い味わいが生まれる、フランス料理の知恵と歴史が詰まった一品です。じっくり炒めた玉ねぎの甘み、風味豊かなブイヨン、香ばしいチーズ、そしてスープを吸ったパンが織りなすハーモニーは、多くの人々を魅了し続けています。
さいごに
オニオングラタンスープ/シェフレピ店長 山本篤
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