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瓦そばとは?西南戦争から生まれた山口県の郷土料理を徹底解説

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はじめに

熱々の瓦の上でジュージューと音を立てる茶そば。錦糸卵の鮮やかな黄色、牛肉の香ばしい香り、そしてレモンの爽やかな酸味。瓦そばは、山口県下関市が誇る郷土料理であり、見た目のインパクトと独特の食感で全国的にも知られるようになった一品です。

この料理の最大の特徴は、なんといっても「瓦」という調理器具にあります。一般的な麺料理とは一線を画すこの斬新な発想は、実は明治時代の戦場での出来事がヒントになっているのです。上層のモチモチとした麺と、瓦に接して焼けたパリパリの麺。この二つの食感を一度に味わえる瓦そばは、まさに山口県を代表するソウルフードと言えるでしょう。

初めて瓦そばを目にしたとき、「本当に瓦の上で食べるのか」と驚きました。しかし一口食べた瞬間、香ばしく焼けた茶そばの風味と、パリッとした食感の虜になってしまったのです。温かいめんつゆにレモンを絞り、もみじおろしを溶かして麺をくぐらせる。この一連の所作が、なんとも心地よいリズムを生み出すのです。

瓦の上で味わう、唯一無二の体験

瓦そばとは、熱した瓦の上に茶そばと具材を盛り付け、温かいめんつゆにつけて食べる山口県下関市発祥の郷土料理です。茶そばは抹茶を練り込んだ緑色の蕎麦で、通常の蕎麦とは異なる風味と色合いが特徴的。この茶そばを瓦の上で焼くことで、上層はモチモチとコシのある食感を保ちながら、瓦に接する下層はパリパリと香ばしく焼き上がります。

具材は錦糸卵と細切れの牛肉(またはひき肉など)が基本。その上に刻んだ小ねぎ、のり、スライスしたレモン、もみじおろし(大根おろしに唐辛子を混ぜたもの)が彩りよく配置されます。温めためんつゆにつけていただくのが一般的です。レモンの酸味ともみじおろしの辛味が、茶そばの風味を引き立て、牛肉の旨味と絶妙に調和します。

現在では専用に作られた瓦が用いられており、建材用の瓦をそのまま使うわけではありません。一部の料理店では瓦ではなくステーキ用の鉄板で提供することもあり、この場合は「茶そば鉄板焼」と呼ばれることもあるようです。家庭ではホットプレートやフライパンで手軽に再現できるため、山口県内では広く家庭料理としても親しまれています。

西南戦争の逸話から生まれた創作料理

瓦そばの誕生には、歴史的な背景があります。明治10年(1877年)の西南戦争において、熊本城を囲む薩摩軍の兵士たちが、長い野戦の合間に瓦を使って野草や肉を焼いて食べたという古老の話。この逸話にヒントを得て、昭和37年(1962年)に川棚温泉で旅館を営んでいた高瀬慎一氏が、宿泊者向けの料理として開発したのが瓦そばの始まりとされています。

数十年を経過した日本瓦を用い、独自の製法で開発されたこの料理は、「雅味豊かな茶そば」として大方の絶賛を得ました。当初は川棚温泉の名物料理として知られていましたが、その評判は瞬く間に広がり、下関市を初め山口県内各地でもご当地グルメとして提供されるようになったのです。

戦場での即興的な調理法が、約80年の時を経て洗練された郷土料理へと昇華した。この物語は、日本の食文化における創造性と柔軟性を象徴していると言えるのではないでしょうか。現在では山口県民などにより県外でも提供する店が存在し、東京や大阪などの都市でも瓦そばを味わえる機会が増えています。

二つの食感が織りなす、唯一無二の味わい

瓦そばの最大の魅力は、一皿で二つの異なる食感を楽しめる点にあります。上層の麺はモチモチとしたコシを保ち、茶そば本来の風味を存分に味わえます。一方、瓦に直接触れる下層の麺は、パリパリと香ばしく焼き上がり、まるでおこげのような食感に変化するのです。

茶そばに使われる抹茶の風味は、牛肉の旨味と意外なほど相性が良く、錦糸卵のまろやかさが全体をやさしく包み込みます。そこにレモンの爽やかな酸味が加わることで、味わいに奥行きが生まれ、最後まで飽きることなく食べ進められます。もみじおろしのピリッとした辛味は、めんつゆに溶かすことで程よいアクセントとなり、食欲を刺激してくれるのです。

熱々の瓦から立ち上る湯気と香り、そして目の前で焼ける麺の音。視覚、嗅覚、聴覚を刺激するこの演出も、瓦そばならではの魅力と言えるでしょう。料理は味だけでなく、五感で楽しむもの。瓦そばはまさにその理念を体現した料理ですね。

川棚温泉から県内全域へ、そして全国へ

瓦そばは川棚温泉で誕生した後、下関市を中心に山口県内の旅館や料亭がこぞって提供するようになり、地域に深く根づいていきました。現在では山口県を代表するソウルフードとして、県内のスーパーマーケットでは家庭向けに蒸した茶そばとつゆのセットが販売されており、日常的に食べられる料理となっています。

家庭向け製品の中には「瓦焼きそば」と表示された商品もあり、調理法としては焼きそばに近いアプローチが取られています。ただし、一般的な焼きそばのように具材と麺を炒め合わせるのではなく、炒めた麺を焼き付けて上から具材を乗せるという点が異なります。

瓦そばの知名度は、メディアを通じて全国的に広がりました。2016年にはTBSテレビのドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」第5話でストーリー上のカギとなる料理として登場し、大きな話題となりました。また、2021年には「秘密のケンミンSHOW極」で山口県下関市の郷土料理として紹介され、さらに認知度が高まったのです。

山口県外でも瓦そばを提供する店が増えており、東京、大阪などの主要都市でも本格的な瓦そばを味わえるようになりました。山口県出身者が故郷の味を広めるケースも多く、瓦そばは地域を越えて愛される料理へと成長を続けています。

茶そばと牛肉が織りなす、絶妙なハーモニー

瓦そばの主役は、なんといっても茶そばです。抹茶を練り込んだこの麺は、鮮やかな緑色と独特の風味が特徴で、通常の蕎麦とは一線を画します。茶そばは瓦の上で焼かれることで、その風味がさらに引き立ち、香ばしさが加わるのです。

具材の中心となるのは細切れの牛肉。瓦の熱で軽く焼かれた牛肉は、旨味が凝縮され、茶そばとの相性が抜群です。錦糸卵は彩りを添えるだけでなく、まろやかな味わいで全体をまとめる役割を果たします。刻んだ小ねぎとのりは、風味のアクセントとして欠かせません。

特筆すべきは、レモンともみじおろしという薬味の組み合わせです。レモンの爽やかな酸味は、牛肉の脂っこさを和らげ、後味をすっきりとさせてくれます。もみじおろしは大根おろしに唐辛子を混ぜたもので、ピリッとした辛味が食欲を刺激します。この二つの薬味をめんつゆに加えることで、味わいに変化が生まれ、最後まで飽きることなく楽しめるのです。

めんつゆは温かい状態で提供されるのが一般的。冷たいつゆではなく温かいつゆを使うことで、熱々の瓦そばとの温度差が少なく、より一体感のある味わいが楽しめます。このバランス感覚こそが、瓦そばが長年愛され続ける理由なのかもしれませんね。

瓦の熱で焼き上げる、独特の調理法

本来の瓦そばは、専用に作られた瓦を十分に熱してから調理します。まず、茹でた茶そばを瓦の上に広げ、熱で焼き付けていきます。この工程が、パリパリとした食感を生み出す鍵となるのです。麺が瓦に接する部分から徐々に焼け、香ばしい香りが立ち上ってきます。

麺がある程度焼けたら、その上に炒めた牛肉、錦糸卵、刻んだ小ねぎ、のりを彩りよく配置します。最後にスライスしたレモンともみじおろしを添えれば完成です。調理中も瓦の熱は保たれているため、食べている間も麺は焼け続け、時間とともに食感が変化していくのも瓦そばの面白さと言えるでしょう。

家庭で再現する場合は、ホットプレートやフライパンを使うのが一般的です。ホットプレートを高温に熱し、茹でた茶そばを広げて焼き付けます。瓦ほどの蓄熱性はありませんが、十分に香ばしく仕上がります。フライパンを使う場合は、少量の油を引いてから麺を広げ、焼き色がつくまでしっかりと焼くのがコツです。

めんつゆは市販のものを温めて使っても良いですし、出汁から作る本格的なつゆを用意しても良いでしょう。レモンともみじおろしを添えることを忘れずに。この二つの薬味が、瓦そばの味わいを完成させる重要な要素なのです。

まとめ

瓦そばは、明治時代の西南戦争における兵士たちの知恵から着想を得て、昭和37年に川棚温泉で誕生した山口県の郷土料理です。熱した瓦の上で茶そばを焼くという独創的な調理法により、モチモチとパリパリという二つの食感を同時に楽しめる唯一無二の料理として、県内外で広く愛されています。

茶そばの風味、牛肉の旨味、錦糸卵のまろやかさ、そしてレモンともみじおろしの爽やかなアクセント。これらが一体となって生み出される味わいは、まさに山口県が誇るソウルフードにふさわしいものです。現在では家庭でもホットプレートやフライパンで手軽に再現できるため、山口県内では日常的に食べられる料理となっています。

歴史的な逸話から生まれ、地域に根づき、そして全国へと広がっていった瓦そば。その魅力は、単なる美味しさだけでなく、視覚、嗅覚、聴覚を刺激する五感で楽しむ体験にあります。山口県を訪れた際には、ぜひ本場の瓦そばを味わってみてください。そして、家庭でも気軽に挑戦してみてはいかがでしょうか。瓦がなくても、その魅力は十分に再現できるはずです。

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