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話題のレストラン「枯朽」で清藤シェフにがっつり料理の考え方や背景を伺う食事会を開催しました

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はじめに

メインディッシュ「銀の鴨」をプレゼンテーションする清藤シェフ

人気レストラン「枯朽」とシェフレピの共同企画で「食べて、学ぶ」をテーマとした特別食事会を開催しました。

普段、レストラン「枯朽」では、限られた時間の中で端的に料理説明を行い、あえてわからない部分も残して楽しんでいただくスタイルをとっていると清藤シェフ(h.b.)はおっしゃっています。

「食べて、学ぶ」をテーマとし、

「なぜこの料理を発想したのか?」
「料理に使われている食材はどんなものなのか?」

などの質問を通して、調理法や発想法、未知の食材などについて深ぼっていきながら、普段「枯朽」で提供している料理を楽しんでいくという特別な食事会。

食事会の様子をシェフレピ店長の山本がイベントレポートとして写真と共に紹介して行きます。

枯朽での食事会の様子

参加者が揃い、いよいよコースが始まる。
おひとり様で来てくださった方も多く、少し皆さん緊張している様子。
私、シェフレピ店長の山本も皆さんの緊張をほぐそうと参加者の方々に話しかけたが、口を揃えて
「どんな強者が参加しているのかと緊張している」と言っていたのは面白かった。

アミューズ(つきだし)

清藤シェフと吉岡シェフそれぞれの故郷の食材を使ったフィンガーフードからコースが始まる。

1.清藤シェフの故郷、鹿児島の食材を使ったフィンガーフード。イタリアのゼッポリーニはピザ生地に青海苔を混ぜて揚げたもの。今回は出水天恵海苔と枕崎の本枯れ節の出汁をベースに生地を作った。アクセントとして鹿児島で漬物として食べられる青パパイヤのピクルス。みかんのパウダー、桜島小蜜柑から作られたジンを数滴垂らして爽やかな香りを添加。

2.吉岡シェフの故郷、福井の食材を使ったフィンガーフード。
吉岡シェフの実家の民宿で漬けているへしこ(サバの糠漬け)を主役としている。
実家では良くお茶漬けとして食べるらしいので、お茶漬けをイメージした小さなタルトに。

杉の木からエキスを抽出して作るドリンク。

枯朽では、料理と同じ感覚でドリンクも作り、ペアリングをしていくのも特徴的。

「普段は、軽く料理の説明をして、リズムよく美味しい状態で料理を食べてもらうことに専念している」と清藤シェフ。

今回の特別食事会では、一度いつも通りの説明を終え、食べ終わった後にさらに追加で、料理の背景から、発想法だけでなく、こんな感じでオペレーションをよくするために仕込みをしているなど、赤裸々にしっかりと話をしてくれる。
(本当にしっかりと話してくれるので普段は3時間で終わるコースが5時間かかった。笑)

参加者の方も、シェフの説明を真剣に聞き入る。
時には質問をシェフに投げかけながら、次第と場の緊張がほぐれていくのが見てとれる。

アントレ(前菜①)

中東地域、ヨーロッパなど様々な地域で食べられている小さなパスタのようなクスクス。
カレーのように食べたり、サラダのように食べたり、いろいろな仕立てがあるが今回は温かくスパイシーな羊のクスクスを発想のベースとして作った冷前菜に。
ミネラル感が強く旨味の強いゲランドの塩でマリネしたトマトとイチゴをサラシで絞り取ったクリアなスープ。そこに合わせるのはクスクスとセロリのジュリエンヌ、和牛のハツ。

途中で参加者の1人から「横に添えている唐辛子を加えると一気に表情が変わる」
と一言コメントがあったのを皮切りに
「フランスのクスクスがベースではあるが、アクセントとして用いた花椒や、アリッサと言いつつ“醬(ジャン)”の様に作ったペースト、そこに合わせるペアリングの椎茸や八角など、ほんのり中華の雰囲気を漂わせてる。様々な国の香りの要素をフレンチという軸で支える、枯朽らしい前菜になったと思う。」
とマシンガンのように清藤シェフが語り始める。

アントレ(前菜②)

Baba au Rhum ババオラム
発酵生地にラム酒風味のシロップをたっぷり染み込ませて作るフランスの伝統菓子。
蕗の薹とパセリをミキサーにかけて作った緑色の液体、そしてより“料理らしい生地”にするため粉吹きにして裏漉ししたメークインを練り込んだババの生地に温かい菜の花のスープを吸わせた。
「メインのババに合わせる副菜を数種類添えて出すスタイルは南インドのミールスから着想を得た。」と清藤シェフ。
色々な国の要素を類稀なバランス感覚でおいしいものに着地させるのは清藤シェフの真骨頂なのではないだろうか。

付け合わせとしてごく薄くスライスした墨烏賊と朧昆布をサンドし、馬告(マーガオ)を振ったもの。
もう一つは青リンゴの様な爽やかさのあるキャラウェイを効かせた山菜のアチャールを。
参加者の1人が「どうやって合わせるスパイスを発想するのですか?」という質問に対して、
「キャラウェイは私の中で“青い”イメージでクミンやアジョワンは“黄色い”イメージがある。」と清藤シェフ。
香りや色彩のイメージで調和をとる清藤シェフの品々は、基本的にカラフルではなく、単色からなる料理が多い。

アントレ(前菜③)

鹿のデクリネゾン

吉岡シェフの地元の知り合いが若狭でジビエを扱っていたことがきっかけで鹿を使い始めたという話から始まる。
鹿肉を使って前菜を作るのに相当苦労したらしく、その理由やこの料理にまで行き着いた経緯を存分に語ってくれた。

鹿のクラシカルなソースであるソース・ポワブラードの派生であるソース・グランヴヌールを要素ごとに分けてデクリネゾン(1つの食材の様々部位を異なる調理法で供する料理)にすることにしたとのこと。

鹿のマリナードクリュ(赤ワインと赤ワインヴィネガー、生の野菜やスパイスを合わせたもの。主にジビエのマリネに使う液体で、野菜に火を入れたものはマリナードキュイと呼ぶ)とフォンドシュヴルイユをベースに作ったソースに黒胡椒を効かせたものがソースポワブラード。そこに生クリームとグロゼイユ(赤スグリ)のピュレを加えたものをソースグランヴヌールと言う。

鹿のデクリネゾンのうちの一つ。

鹿の赤ワインソースが一面を覆う鹿のコンソメのフラン(茶碗蒸しのようなもの)。

スプーンでフランをすくって口まで運び、ひとくち食べた瞬間、参加者の1人が「わぁ…」とため息混じりの声と共に、一気に笑顔になった瞬間がすべてを物語っていた。

ここまでは少しわかりづらい…というより、かなり細かいテクニックでフレンチらしさを隠してきた清藤シェフの料理の流れから、突然、右ストレートをぶち込まれたような衝撃の一皿。

やはりクラシックは良い。

ポワソン(魚料理)

突然、スタッフの1人である伊藤さんの祖父の話をし始める。
何を話したいのだろう?と聞いていると
「伊藤さんの祖父が使う小味(コアジ)という表現がとても気に入っており、その小味を表現したかった」と清藤シェフ。

これは私の解釈だが、小味は、滋味深いという意味に近いのではないかと推測している。

魚の身はふっくらと蒸し、古漬けにした白菜を細かく刻んで白ワインと一緒に煮詰めてレディクション※1にし、うしお汁のようにとった魚の出汁を加え、葛粉でとろみをつけたものをソースとしてかける。

※1 レディクションとは、エシャロットと白ワイン、白ワイン酢を共に水分が無くなるまで凝縮したソースの素として使用するもの

魚料理に合わせるのは、ピーマンの焼き汁から作ったドリンク。
これがまた小味(コアジ)を体現してくれている。
清藤シェフの相棒である、吉岡シェフ。
なかなかメディアなど表には出てこないが彼なしには枯朽は成り立たないと言っても過言ではない。
メインディッシュの銀の鴨が焼き上がり、鴨肉の調理法について説明しながらプレゼンテーションしてくれる。
ポタージュ(スープ)

銀の鴨のコンソメ

豪快な丸ごとの鴨肉を見せられて清藤シェフが鴨肉を切り分けている間に出てくるのがこの料理。
銀の鴨だけで作ったうまみを凝縮させたコンソメにクレープが浮かんでいる。
銀の鴨を捌いた後に出たガラを使ってソースを取るのだが、そのソースを取った後のガラから二番出汁、三番出汁をとり、銀の鴨を捌いた時に出た使えない端肉を使ってコンソメを作ったと清藤シェフ。

ヴィアンド(肉料理)

銀の鴨

枯朽で、作り続けると決めているというスペシャリテ、銀の鴨の一皿
ガラと水だけで丁寧に取ったソースは、濃厚で鴨の味をダイレクトに感じさせてくれる。
添えられているのは、鴨の肝や肺(水分量によっては血も使用する)で作ったソーセージ。
ソーセージの皮自体も鴨の首の皮で作っているという驚き。

赤身の強い力強い銀の鴨を存分に味わえる。

火の入れ方も少し特殊で高温の油をかけながら皮はパリッと、身はしっとりと火を入れている。
参加者の皆さんも無言で食べ進めていた。

アヴァン・デセール(口直しのデザート)

リンゴとブランマンジェ

銀の鴨の皿とメインのデザートを繋ぐ一皿に出てくるのは繊細に盛り付けられたりんごの小さなデザート。
繋ぎの役割を果たせるように、可愛らしい見た目だが、苦味の印象の強いデザートにしていると吉岡シェフ。

アヴァン・デセールを食べたあと、最後のデザートを待っている間に台湾茶とコーヒーの案内をしてくれる。

台湾茶は、清藤シェフが選んだ、HOJOの取り扱う凍頂金萱烏龍茶
コーヒーは、吉岡シェフが選んだ、蔵前のSOL’S COFFEE ROASTERYのエチオピア産のコーヒー豆「エチオピア イルガチェフ アリーシャ ナチュラル」

デセール(デザート)

ハンドドリップしたコーヒーと、ブランデーに漬け込んだレーズンで作った羊羹とクローブのアイスクリーム
洋梨の赤ワインコンポートは赤ワインにクローブと赤ワインビネガー、少量のハチミツのみを加えて作り、甘味よりも酸味を効かせたコンポートに。

「全体的に乾いた印象の組み合わせのこのデザートにフレッシュなジューシーさを与える為にフレッシュの洋梨の角切りを加え、それだけでは他のパーツとチグハグになってしまうので、赤ワインと共にキャラメリゼにした洋梨と合わせる事で一体感を持たせている」と吉岡シェフ。

プティフール(ミニャルディーズともいう、お茶菓子)

最後は、ハンドドリップコーヒーもしくは台湾茶を可愛いお茶菓子たちと共に楽しむ。
ちなみに、ハンドドリップコーヒーを選ぶと吉岡シェフが入れてくれ、台湾茶を頼むと清藤シェフが入れてくれる。

入れて欲しい人で選ぶのも面白いとなぜか結構盛り上がった。笑

最後30分のフリートークの時間もひたすら話してくれる清藤シェフ。
作業台の上に普段使う調味料を並べて参加者のみんなに回しながら調味料の説明をしてくれた。

特に印象に残った話が、陶芸家の中里月度務さんの個展に行ったときの話。
中里さんが「自分の作った昔の器は線が多い、それに対して今に近づくにつれて線が少なくシンプルになっていく。昔は自信がなかったから線が多くなっていたんだと感じる。でも、それはそれで良いと思う。昔があったからこそ今の自信に繋がっている」と話していた。
それに対して清藤シェフ自身も「今は手数の多い複雑な料理をしがちになる。これは自信の無さが生み出したものなのかもしれない。けど今はそれで良いんだと感じることができた。シンプルなものは好きだが、今は無理やりそこに合わせる必要はなく、今後料理を続けていく中で自然と削ぎ落とされていくのをゆっくり待っても良いんだと気付かされた」という話をされていた。

このシェフの今後の料理の行く末を見届けたいと感じる話でもあったのでここに記載しておきたい。

イベントを終えて

最後には場の雰囲気も序盤の緊張とはうって変わって和やかな一体感に包まれていた。
普段のレストランシーンでは、レストラン側は、どこまで話して良いのか?あまり話しかけない方が良いのか?と常に様子を見ながらサービスを提供する。
対してお客さん側も同じで、こんなこと質問しても良いのか?もう少しシェフとお話ししてみたい。と思っている人も中にはいる。
今回のようなイベントでは、レストラン側も話す態勢があり、お客さん側も聞く態勢にある。心理的安全性を担保することで生まれる会話があり、質問も自ずと出てくる。
シェフとお客さんが限りなく近づいた感覚があって企画して本当に良かったと思う。

今後もシェフレピでは特別イベントを開催していきますので、ご期待ください。
告知はTwitterやInstagramで行っておりますので、フォローしていただければいち早くイベント情報を得ることができます。
▼公式Twitter
https://twitter.com/chefrepi
▼公式instagrarm
https://instagram.com/chefrepi

ただいま7/7(金)に枯朽 食事会のご予約をお取りしております。
8名様限定となりますので気になる方はぜひご覧になってみてください。

▼枯朽の特別食事会

参加者の皆さんの声

参加者さんたちのツイートが本当にわかりやすくて、正直これをコピーして貼り付けようかと思ったくらい丁寧に感想を書いてくださっております。
ぜひご覧ください。

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