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アホアリエロとは?スペイン各地で愛される塩鱈とニンニクの煮込み料理

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はじめに

こんにちは。シェフレピの池田です。今回はスペイン料理「アホアリエロ」についてお話ししていきたいと思います。スペインの内陸部から北部にかけて、多くの地域で愛されている伝統料理、それが「アホアリエロ」です。塩漬けの鱈とニンニクが織りなす深い味わいは、一度食べたら忘れられない魅力を持っています。この記事では、スペインの食文化に深く根ざしたこの煮込み料理について、その歴史から調理法まで詳しくご紹介します。

塩鱈とニンニクが主役の伝統料理

アホアリエロは、スペインのアラゴン、ナバラ、リオハ、バスク、カスティージャなど、広範な地域で親しまれている郷土料理です。料理名の「アホ」はスペイン語でニンニクを意味し、「アリエロ」は荷馬車引きを指す言葉。かつて長距離を移動する荷馬車引きたちが、保存の利く塩鱈と手に入りやすい野菜で作った料理が起源とされています。

主な材料は塩漬けした鱈(バカラオ)、ピーマン、トマト、そしてたっぷりのニンニク。これらをオリーブオイルでじっくりと煮込むことで、素材の旨味が凝縮された一皿が完成します。各地のバルや食堂では定番メニューとして親しまれ、ワインのお供として、またはパンにのせてタパスとしても楽しまれています。

荷馬車引きが生んだ保存食の知恵

アホアリエロの歴史は、スペインの交易路と深く結びついています。中世から近世にかけて、内陸部と沿岸部を結ぶ交易路では、馬車を使った物資の運搬が盛んに行われていました。長い旅路を行く荷馬車引きたちにとって、保存の利く食材は生命線でした。

塩漬けの鱈は、冷蔵技術のない時代において貴重なタンパク源。これに現地で手に入る野菜を組み合わせることで、栄養バランスの取れた食事を確保していたのです。時代と共に調理法は洗練され、現在では各地域で独自のアレンジが加えられています。

濃厚な旨味と香りのハーモニー

アホアリエロの最大の特徴は、なんといってもその濃厚な味わいです。塩鱈から出る深い旨味が料理全体のベースとなり、そこにニンニクの芳醇な香りが加わります。トマトの酸味とピーマンの甘みが絶妙なバランスを生み出し、一口食べれば複雑な味の層を感じることができるでしょう。

食感も魅力の一つです。ほぐれた鱈の身は口の中でほろりと崩れ、野菜はとろとろに煮込まれています。オリーブオイルがすべての素材をまとめ上げ、まろやかな口当たりを演出。パンにのせて食べると、その美味しさは格別です。

ワインとの相性も抜群で、特に白ワインやロゼワインがよく合います。各地で「これぞ我が地方の味」として、観光客にも地元民にも愛され続けているのです。

地域ごとに異なる個性豊かなレシピ

スペイン各地で愛されるアホアリエロですが、実は地域によって作り方に違いがあります。基本の材料は同じでも、それぞれの土地の食文化が反映されているのが興味深いところです。

ナバラ地方では、パプリカパウダーを加えて赤みを強くし、より濃厚な味わいに仕上げます。一方、バスクの沿岸部では新鮮な魚介類を加えることもあり、より豪華な一皿となることも。アラゴンやリオハなどの内陸部では、じゃがいもを加えてボリューム感を出すアレンジも見られます。

現代では、家庭でも作りやすいようにアレンジされたレシピも登場しています。塩鱈の代わりに生の鱈を使ったり、調理時間を短縮したりと、時代に合わせた進化を遂げているんですね。でも、どのバリエーションも「ニンニクをたっぷり使う」という点は共通しています。

素材選びが決め手の材料構成

アホアリエロの美味しさは、素材の質に大きく左右されます。主役となる塩鱈(バカラオ)は、しっかりと塩抜きをすることが重要。24〜48時間かけて水を替えながら塩抜きすることで、ちょうど良い塩加減になります。

野菜類も新鮮なものを選びましょう:

  • ピーマン:赤と緑を混ぜると彩りも良く、味に深みが出ます
  • トマト:完熟したものを使うと自然な甘みが加わります
  • ニンニク:たっぷりと使うのがポイント。一人前あたり2〜3片は必要です

オリーブオイルは、エクストラバージンオイルを使用すると風味が格段に良くなります。仕上げにパセリを散らすと、見た目も美しく、さわやかな香りがアクセントになります。

じっくり煮込む伝統の調理法

伝統的なアホアリエロの調理法は、時間をかけてじっくりと煮込むことが基本です。まず、塩抜きした鱈を一口大にほぐし、野菜類は食べやすい大きさに切ります。

鍋にオリーブオイルをたっぷりと熱し、みじん切りにしたニンニクを弱火で炒めます。ニンニクが色づいてきたら、ピーマンを加えて炒め、続いてトマトを加えます。野菜がしんなりしたら、鱈を加えて全体を優しく混ぜ合わせます。

ここからが肝心です。弱火でコトコトと30〜40分煮込むことで、すべての素材の旨味が溶け合い、深い味わいが生まれます。途中で水分が足りなくなったら、少量の水かワインを加えて調整。最後に塩・胡椒で味を整えれば完成です。

煮込み時間は長いですが、その分、素材の味が凝縮された極上の一皿が出来上がります。

まとめ

アホアリエロは、スペインの広範な地域で愛される伝統的な煮込み料理として、長い歴史を持つ郷土料理です。塩鱈とニンニク、野菜をじっくりと煮込んだシンプルな料理ですが、その味わいは実に奥深く、一度食べたら忘れられない魅力があります。

荷馬車引きたちの知恵から生まれたこの料理は、時代と共に各地でアレンジされながらも、基本的な調理法と味わいは変わることなく受け継がれています。スペイン各地のバルや食堂で楽しむのはもちろん、家庭でも本格的な味を再現できるのも魅力の一つ。ぜひ一度、この伝統の味を体験してみてはいかがでしょうか。

さいごに

シェフレピでは、バスク料理店ETXOLA(エチョラ)の清水シェフによる「オマール海老と塩鱈の アホアリエロ」のレッスンを公開しております!
ぜひこの機会にチェックしてみてください!

オマール海老と塩鱈のアホアリエロ/ETXOLA(エチョラ) 清水和博

「バスクのバルで、必ずといっていいほど見かける料理」というアホアリエロを、清水シェフは、バスク地方の名産であるさまざまなピーマンを使いながら、オマール海老を大胆に盛り付けてレストラン風にアレンジしてあります。 スペインで「塩鱈」といえば、日本に一昔前まであった豆腐屋のように、街に専門店があるほど生活に密着したデイリー食材です。文字通り塩漬けにされているので、スペイン中央部にも運ばれて貴重な海産資源として食されており、各地に塩鱈のレシピがあります。 塩鱈ならではの奥深い塩味と数種類のピーマンによって生まれる香りを楽しんでみてください。

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