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はじめに
こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「おこわ」についてお話ししていきたいと思います。もちもちとした独特の食感と、ほんのり甘い香り。おこわは、日本人にとって特別な日を彩る大切な料理です。祝い事の席に欠かせない赤飯から、季節の恵みを詰め込んだ山菜おこわまで、その種類は実に多彩。今回は、この日本の伝統料理「おこわ」について、その歴史や特徴、そして現代に受け継がれる魅力を詳しく解説していきます。
もち米が生み出す特別な食感:おこわの正体
おこわとは、もち米を蒸して作る日本の伝統的な米飯のことです。正式には「御強(おこわ)」と書き、元々は「強飯(こわめし・こわいい)」と呼ばれていました。この「強い」という字が示すように、うるち米の普通のご飯と比べて、しっかりとした食感が特徴なんですね。
宮中の女房詞として使われていた「おこわ」という言葉が、やがて一般にも広まったという経緯があります。現代では、もち米を使用していれば、蒸したものだけでなく炊飯器で炊いたものや、もち米とうるち米を混ぜたものも「おこわ」と呼ぶようになりました。
炊き込みご飯との違いは何でしょうか? 炊き込みご飯は主にうるち米を使用しますが、おこわはもち米が主役。この違いが、あの独特のもちもち感を生み出しているわけです。
江戸時代から続く食文化の変遷
おこわの歴史を紐解くと、日本の食文化の変遷が見えてきます。古くは、もち米でもうるち米でも、蒸したものを「強飯」と呼び、水を加えて炊いたものは「弱飯(ひめ)」や「姫飯(ひめいい)」と呼んで区別していました。
江戸時代になると、炊くことが一般的になり、炊いたものを「飯(はん・めし)」と呼ぶようになります。そして、もち米を蒸したものだけを「強飯」または「おこわ」と呼ぶようになったのです。
昔はもち米が貴重品だったため、おこわは慶事や祭り、正月など特別な日にしか口にできない、まさに”ハレの日”のご馳走でした。また、肉類を含まないおこわは精進料理として僧侶にも好まれていたそうです。現代でも、赤飯を祝い事で食べる習慣は、この伝統を色濃く残していますね。
もちもち食感が生み出す至福の味わい
おこわの最大の魅力は、なんといってもその独特の食感にあります。もち米特有のもちもちとした弾力と、ほんのりとした甘み。一粒一粒がしっかりと存在感を持ちながら、口の中でじわっと広がる優しい味わいは、まさに日本料理の真骨頂と言えるでしょう。
この食感は、もち米に含まれるアミロペクチンという成分によるもの。うるち米よりもアミロペクチンの含有量が多いもち米は、加熱すると粘りが出て、あの特有のもちもち感を生み出すのです。
蒸し器で作る本格的なおこわは、米粒の一つ一つがふっくらと仕上がり、べたつきがありません。一方、炊飯器で作るおこわは手軽さが魅力。どちらの方法でも、もち米の持つ本来の美味しさを楽しむことができます
地域色豊かな日本各地のおこわ文化
日本各地には、その土地ならではのおこわ文化が根付いています。最も有名なのは、やはり赤飯でしょう。小豆やささげ豆を入れて赤く染まったおこわは、祝い事の定番として全国で親しまれています。
関西では「しらむし(白蒸し)」と呼ばれる、小豆を使わないおこわがあります。塩昆布や大豆を使ったもので、赤飯とはまた違った味わいが楽しめます。北陸地方では「御霊(みたま)」という黒豆を使ったおこわが、通夜や法要、上棟式で振る舞われる習慣があるんです。
静岡県藤枝市には「瀬戸の染飯(せとのそめいい)」という、クチナシで黄色く着色した珍しいおこわも。東海道の宿場町で街道名物として作られてきた、歴史ある一品です。飛騨地方の「栗こわい」は、かつて飛騨金山駅の名物駅弁として知られていました。地域によって、これほど多様な表情を見せるのも、おこわの魅力の一つですね。
季節の恵みを詰め込んだ多彩なバリエーション
おこわの具材は実に多彩です。定番の赤飯から始まり、栗おこわ、山菜おこわ、きのこおこわ、鯛おこわ、鰻おこわ、鶏おこわ、鮭おこわ、五目おこわなど、季節や地域によってさまざまな種類があります。
春には筍おこわ、秋には松茸おこわや栗おこわなど、旬の食材を使ったおこわは、その季節ならではの楽しみ。特に五目おこわは、にんじん、ごぼう、しいたけ、油揚げなど、複数の具材が織りなすハーモニーが絶品です。
最近では、コンビニエンスストアでもおこわのおにぎりが販売されるなど、より身近な存在になってきました。中華料理の「小籠飯(シャオロンファン)」や、カンボジアの「クロラン」など、アジア各国にも似たような料理があることを考えると、もち米文化の広がりを感じますね。
蒸し器が生み出す本格的な味わいの秘密
伝統的なおこわの調理法は、せいろや蒸し器を使った「蒸し」です。もち米を一晩水に浸してから、蒸し器で30〜40分ほど蒸し上げる。この方法で作ったおこわは、米粒がしっかりと立ち、べたつきがなく、もち米本来の甘みと香りを最大限に引き出すことができます。
蒸している途中で一度取り出し、打ち水をして再び蒸すという工程も重要です。これにより、芯まで均一に火が通り、ふっくらとした仕上がりになるんです。
現代では炊飯器でも手軽におこわが作れるようになりました。もち米とうるち米を混ぜて使うことで、もちもち感を残しつつ、扱いやすい食感に調整することも可能です。水加減は通常のご飯より少なめにするのがコツ。具材から出る水分も考慮して調整することが、美味しいおこわ作りの秘訣と言えるでしょう。
もち米を使わなくても、簡単におこわのもちもち感を再現する裏技もあるんです。通常のお米(うるち米)に、カットしたお餅を加えて炊くことで、もちもちとした食感を楽しむことができます。この記事の最後に詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

まとめ
おこわは、もち米を蒸して作る日本の伝統的な米飯として、長い歴史の中で日本人の生活に寄り添ってきました。「強飯(こわめし)」という名前の由来から、宮中の女房詞として使われた「おこわ」への変遷、そして現代に至るまで、その文化的価値は色褪せることがありません。
特別な日のご馳走として、また季節の恵みを楽しむ料理として、おこわは日本の食文化の中で独特の地位を占めています。赤飯から五目おこわ、地域色豊かな各地のおこわまで、その多様性は日本料理の奥深さを物語っています。
もちもちとした食感、ほんのりとした甘み、そして具材との絶妙なハーモニー。これらすべてが、おこわを単なる「もち米の料理」以上の存在にしているのです。次におこわを口にする機会があったら、ぜひその歴史と文化に思いを馳せながら、一粒一粒の美味しさを味わってみてはいかがでしょうか。
さいごに
もち米が織りなすもちもちとした食感と、季節の恵みが詰まったおこわの魅力、いかがでしたでしょうか。蒸し器で丁寧に仕上げる本格的な調理法から、さつまいもや栗などの旬の食材との組み合わせまで、おこわには日本の食文化の奥深さが詰まっています。そんなもちもち食感を手軽に楽しめるのが、シェフレピで公開している「もっちもち さつまいもごはん」。さつまいもを丸ごと使い、塩昆布でうまみを引き出し、さらにお餅を加えることでもちもち感を実現。家族への愛情から生まれた工夫の数々を、ぜひこの機会にチェックしてみてください!