この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

Table of Contents
はじめに
こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「ケッパー」についてお話ししていきたいと思います。ご存じの方も多いかもしれませんが、ケッパーとは、スモークサーモンの上にちょこんと乗っている、緑色の小さな粒。あるいはイタリアンレストランで食べたパスタに入っていた、独特の酸味を持つ調味料。実はこの小さな存在が、地中海料理の奥深い味わいを支える重要な役割を果たしているのです。
地中海の恵み:ケッパーという名の小さな宝石
ケッパーとは、フウチョウボク科の低木「Capparis spinosa」のつぼみを、酢漬けや塩漬けにしたものです。英語では「caper」、フランス語では「câpre」と呼ばれ、ケイパー、ケーパー、カープルなど、さまざまな呼び名で親しまれています。
この植物は地中海沿岸からイラン高原、アフガニスタン一帯に自生する常緑小低木で、粘土質の丘陵地の岩場や壁面などに見られます。多年生の株を持ち、毎年多くの木質と草質の蔓を出すという、なんとも生命力あふれる植物なんですね。葉は卵型で、葉柄には2本の刺があり、3月から8月にかけて美しい花を咲かせます。
でも、私たちが食べているのは、この美しい花ではなく、開花前のつぼみなんです。なぜつぼみなのか? それは、つぼみの段階で収穫することで、独特の風味と食感が最も良い状態で保たれるからです。
古代から愛された調味料の歴史
ケッパーの歴史は驚くほど古く、その語源はペルシア語の「kabar」やアラビア語の「kabbar」に遡ると言われています。これが後にギリシア語の「kapparis」、ラテン語の「capparis」へと転化していったのです。地中海文明の交流の中で、この小さなつぼみが各地に広まっていった様子が想像できますね。
フランスの記録にケッパーが登場するのは15世紀頃からで、16世紀の外科医アンブロワーズ・パレは、食欲改善などのケッパーの薬効について著述しています。当時から単なる調味料としてだけでなく、その機能性にも注目されていたことがわかります。人工栽培の試みが始まったのもこの頃で、現在では主にフランス、イタリア、スペインなどで栽培されています。
古くから食用として知られていたケッパーですが、その独特の風味が地中海料理の発展とともに、ヨーロッパ全土、そして世界中へと広がっていったのです。今では日本でも、イタリアンやフレンチレストランはもちろん、家庭料理でも使われるようになりました。時代を超えて愛され続ける理由は、やはりその唯一無二の味わいにあるのでしょう。
小さいほど価値が高い?ケッパーの意外な特徴
ケッパーの最大の特徴は、何といってもその独特の風味と酸味です。花のような香り、ほのかな苦み、そして”じわっ”と広がる酸味や旨味が複雑に絡み合って、他では味わえない独特の風味を生み出しています。
面白いことに、ケッパーは大きさや形で商品価値が変動し、丸く小さいものほど高級品とされています。つぼみは開花よりもかなり早い段階で収穫され、その大きさによって等級が分けられます。小さければ小さいほど、風味が凝縮されていて繊細な味わいになるんですね。また、つぼみだけでなく、花が咲き終わった後にできる実「ケッパーベリー」も食用にされます。オリーブを少しさわやかにしたような風味で、実の中に入っている小さな種のプチプチとした食感が楽しめます。
世界各地で愛される多彩な使い方
ケッパーの使い方は実に多彩です。最も有名なのは、やはりスモークサーモンの付け合わせでしょう。薄切りのタマネギとともに、サーモンの脂っぽさを中和し、味を引き締める役割を果たします。この組み合わせは、もはや定番中の定番ですね。
フランス料理では、刻んだケッパーをバターと混ぜた「モンペリエ・バター」が有名です。魚料理や肉料理のソースとして使われ、料理に深みと複雑さを加えてくれます。また、プロヴァンス地方では、オリーブの実、オイル、にんにく、アンチョビなどと一緒に「タプナード」と呼ばれるペーストの材料として使用されます。パンに塗ったり、野菜のディップとして楽しまれています。
イタリア料理では、プッタネスカソースに欠かせない材料の一つです。トマト、オリーブ、アンチョビと組み合わせることで、パンチの効いた味わいのパスタソースになります。また、ヴィテッロ・トンナート(子牛肉のツナソース)やカポナータ(野菜の煮込み)にも使われ、料理全体の味を引き締める重要な役割を担っています。
酢漬けと塩漬け、それぞれの魅力
市販されているケッパーには、主に酢漬けと塩漬けの2種類があります。それぞれに特徴があり、料理によって使い分けることで、より美味しく仕上げることができます。
酢漬けのケッパーは、酸味がしっかりと効いていて、そのまま使えるのが便利です。サラダやマリネ、冷製料理に向いています。一方、塩漬けのケッパーは、塩分が強いため使用前に塩抜きが必要ですが、ケッパー本来の風味がより強く感じられます。加熱調理に使う場合は、塩漬けの方が風味が飛びにくいという利点もあります。
塩漬けケッパーの塩抜き方法は簡単です。使う分だけ取り出して、水に10〜15分ほど浸けておくだけ。途中で一度水を替えると、より効果的に塩分を抜くことができます。ただし、あまり長く水に浸けすぎると、せっかくの風味まで抜けてしまうので注意が必要ですね。
家庭でも楽しめる!ケッパーの選び方と保存法
ケッパーは、最近では大型スーパーや輸入食品店、カルディなどで手軽に購入できるようになりました。選ぶ際のポイントは、まず用途を考えること。初めて使う方や、サラダなどにそのまま使いたい場合は酢漬けがおすすめです。料理の幅を広げたい方は、塩漬けにも挑戦してみてください。
開封後の保存方法も重要です。酢漬けの場合は、必ず液体に浸かった状態で冷蔵保存し、清潔なスプーンで取り出すようにしましょう。塩漬けの場合は、塩をまぶした状態で密閉容器に入れて冷蔵保存します。どちらも適切に保存すれば、数ヶ月は美味しく楽しめます。
もしケッパーが手に入らない場合は、グリーンオリーブの実を刻んだものや、きゅうりのピクルスを細かく刻んだもので代用することもできます。完全に同じ味にはなりませんが、酸味と塩気という点では似た効果を得られるでしょう。でも、やっぱり本物のケッパーの独特な風味は、他では代えがたいものがありますね。
まとめ
地中海沿岸で生まれた小さなつぼみが、長い歴史を経て世界中の食卓を彩る存在になったケッパー。その独特の酸味と風味は、一度味わうと忘れられない魅力があります。
スモークサーモンの定番の付け合わせから、パスタソース、肉料理のアクセントまで、使い方は実に多彩です。酢漬けと塩漬け、それぞれの特徴を理解して使い分けることで、料理の幅がぐんと広がります。最初は「ちょっと変わった調味料」と思うかもしれませんが、使いこなせるようになると、料理の腕がワンランクアップしたような気分になれるはずです。
次にイタリアンレストランやフレンチレストランで食事をする際は、ぜひケッパーが使われている料理に注目してみてください。きっと、その小さな存在が料理全体にもたらす大きな影響に気づくことでしょう。そして、ご家庭でも気軽に使ってみてください。いつもの料理が、ケッパーひとつで本格的な地中海の味わいに変身するかもしれません。
さいごに
ケッパーの魅力、いかがでしたでしょうか。酢漬けと塩漬けの使い分けや、小さいものほど高級品という選び方のコツなど、この小さなつぼみには奥深い世界が広がっていましたね。シェフレピでも、ケッパーを活用したレシピをご紹介しております。ぜひこの機会にチェックしてみてください!