4月 06, 2021

先人たちが作り続けてきた「名前のある料理」にあるおいしさ

ペルティカ 白竹俊貴

白竹俊貴さん|ペルティカ

「ここ2年ほど、安心しておいしさを楽しんでいただける『名前のある料理』をきちんと作りたいと思うようになりました」という白竹俊貴さんは、シェフレピにも“名前のある”フランス料理「ブランケット・ド・ヴォー(仔牛肉のクリーム煮込み)」のレシピを提案してくれました。

製パンから料理の世界へ、フレンチを学ぶ

小学校4年生頃からの白竹さんが夢中なって読んでいた漫画に「焼きたて!! ジャぱん」(橋口たかし作、小学館)がありました。日本人の口にあう独自のパン「ジャぱん」を求めて主人公の東和馬が、オリジナルのパンを創作していく。そんなストーリーを通じて料理に興味を持ち始め、地元・広島県で調理科をもつ高校に入学しました。

その後、さらに製パンの専門性を高めたいと上阪。「辻調理師専門学校」に入学して製パンを学ぶと、卒業後は、大阪市内にあったミシュラン一つ星のフランス料理店に入り、製パンだけでなくフランス料理全般の基礎をみっちりと学びました。

「製パンと料理にも共通点がありました。たとえば『メロンパン』は、まわりのガリガリとした部分はクッキー生地で、中はパン生地。別々のものを合わせて焼き上げたものです。とうぜん、クッキーとパン生地では焼きあがる時間も違います。そのため先に焼き上げたクッキーを、パン生地にくっつけて焼くんです。その考え方は、肉や香辛料などでつくった詰め物をパイ生地で包んで焼き上げる『パテアンクルート』の構造にそっくりだと思うんです」

その後も大阪・北新地で8席のカウンターフレンチ「弘屋」のオーナーシェフ、菅沼恒さんのもとで、フレンチの技法を駆使しながらもジャンルにとらわれないイノベーティブな料理を学んだのち、2016年に系列店「ペルティカ」のオープンとともにシェフに就任しました。

前衛料理を作っておもしろがっていたのは自分だけだった

師である菅沼シェフの薫陶を受けた白竹さんは、イノベーティブな料理を目指しているかと思いきや、今は「名前のある料理」を作りたいといいます。

「自分なりの新しいアイディアに挑戦をしたとしても、そこに何かしらの『名前がある』料理や技法を使うことを大事にしています。じつは『ペルティカ』のシェフになってから数年は、発酵食材をつかったり、昆布茶とかフレンチではあまり使わない調味料を使って『これ、おもしろいでしょう?』って楽しんでいたんです。でもふとあるときに『これでおもしろがっているのは、僕だけなんじゃないか』と感じるようになったんです」

そのきっかけの一つに、2019年に放映された木村拓哉さん主演のテレビドラマ「グランメゾン東京」があると、白竹さんはいいます。

ドラマでフランス料理が注目されたことで、ミシュランの星付き店や食通が認めるフランス料理店で働いてきた白竹さんのキャリアに興味をもったゲストが「本格的なフランス料理」を求めて来店するようになったのです。

「『サーモンの料理が食べたい』とか『鹿肉の赤ワインソースはありますか』というリクエストにお応えしているうちに、自分でも『こっちの方がいいな』と感じるようになったんです。『これおいしいですよ』と胸を張っていえるおいしい料理を作りたい思い始めたきっかけです

古典料理のなかにある積み重ねられた「おいしさ」は、いつの時代も心を打つ――。そんな真理に再び出会った白竹さんは、「今は、おいしい料理を作りたい」というシンプルな思いで料理をしているといいます。

「ブランケット」が意味する「白」をしっかり作る

白を意味する「ブラン」が語源にあるブランケット・ド・ヴォーは、フランスの伝統的な家庭料理で、日本の「シチュー」に似ています。本来は、仔牛や仔羊、鶏などを野菜と一緒に煮出していきますが、食材の違いもありそのまま再現しても本来のおいしさが伝えられません。そこで野菜やスネ肉を炒めたり、ハマグリの出汁を加えるなど、伝統料理を日本人に馴染みある味にアレンジしています。

「さらに今回は、なかなかご家庭では扱わない、仔牛の骨付きのスネ肉を使います。骨の髄から出る旨味をしっかり引き出すことで、うま味がしっかり詰まった煮込みになります」

「すべての食材に塩をして水分量をコントロールしながらうま味を引き出す料理人の技にも気付いていただきたいです」とレシピに込めた思いを話す白竹さん。再現が難しいベシャメルソースは、白竹さんの力を借りて動画で確認しながら挑戦してみてください。

 

白竹俊貴●しらたけ・としき
1992年、兵庫県生まれ。広島県の調理科高校を経て、辻調理師専門学校に入学。卒業後は、大阪市内のフランス料理店や、北新地の人気フレンチ「弘屋」に5年間勤務。2016年、大阪府豊中市で「ペルティカ」がオープンすると、同店のシェフに就任。「RED U-35」2019年 bronze eggを受賞。ソムリエでもある。
ペルティカ:https://www.tablecheck.com/shops/pertica/reserve
Instagram:https://www.instagram.com/pertica_calros_shiratake/

文/江六前一郎

このシェフが作ったレシピ