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鶏肉のバスク風煮込みとは?情熱の赤が彩るバスク地方の家庭料理を徹底解説

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はじめに:太陽の色を映した煮込み料理

こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、バスク地方の定番「鶏肉のバスク風煮込み」についてお話していきたいと思います。鶏肉のバスク風煮込み(Poulet Basquaise)。その名前を聞いただけで、陽気な食卓の風景が目に浮かぶようです。フランスとスペインにまたがる、独自の文化が息づくバスク地方。その地で生まれたこの料理は、鮮やかな赤色が印象的な、心温まる一皿です。鶏肉の旨味と、トマトやパプリカといった野菜の甘みが溶け合い、食欲をそそる香りが立ち上ります。この記事では、そんな鶏肉のバスク風煮込みの世界を深掘りし、その魅力に迫ります。

初めてこの料理を口にした時の感動は、今でも忘れられません。鮮烈な見た目とは裏腹に、どこか懐かしく優しい味わい。鶏肉はほろりと柔らかく、野菜の甘みが口いっぱいに広がりました。バスク地方の豊かな食文化が、この一皿に凝縮されているように感じたものです。あなたもきっと、その魅力の虜になるはずです。

鶏肉のバスク風煮込みって、どんな料理?

鶏肉のバスク風煮込みは、その名の通り、フランス南西部からスペイン北東部にまたがるバスク地方を起源とする鶏肉の煮込み料理です。骨付きの鶏肉を使い、トマト、パプリカ(特に赤パプリカ)、ピーマン、玉ねぎ、にんにくなど、たっぷりの野菜と共に煮込むのが特徴。鮮やかな赤色は、主にトマトとパプリカに由来します。また、この料理をはじめとしたバスク料理では、赤と緑のピーマン(パプリカ)がよく使用されます。スペイン・バスク料理レストラン「ETXOLA」の清水シェフのお話によると、これは、白・緑・赤の三色からなるバスクの国旗に由来しているとのことです。

この料理のベースとなるのは、「ピペラード(Piperade)」と呼ばれるバスク地方の伝統的な野菜のトマト煮込みです。ピペラード自体も単独で卵料理の付け合わせなどに用いられますが、これに鶏肉を加えることで、より満足感のある主菜へと昇華するのです。まさに、バスクの家庭の味、おふくろの味と言える存在かもしれませんね。

情熱の赤はどこから?そのルーツを探る

鶏肉のバスク風煮込みの正確な起源を特定するのは難しいですが、バスク地方の食文化と深く結びついていることは間違いありません。この地域は、フランスとスペイン両国の影響を受けつつ、独自の言語や文化、そして食文化を育んできました。

特筆すべきは、新大陸からもたらされた食材、トマトやパプリカを早くから料理に取り入れてきた点です。これらの野菜が、バスク料理の特徴である鮮やかな色彩と豊かな風味を生み出す重要な要素となりました。鶏肉のバスク風煮込みも、こうした歴史的背景の中で、地元の食材を活かした家庭料理として定着していったと考えられています。一説には、修道院で生まれた料理とも言われていますが、その真偽は定かではありません。いずれにせよ、庶民の知恵と工夫が生んだ、愛情たっぷりの煮込み料理であることは確かでしょう。

この料理ならではの魅力とは?

鶏肉のバスク風煮込みの最大の魅力は、何と言ってもその味わいのバランスの良さにあるでしょう。

  • 鶏肉の旨味と野菜の甘みの融合: じっくり煮込むことで、鶏肉からは豊かな旨味が溶け出し、トマトやパプリカ、玉ねぎなどの野菜からは自然な甘みが引き出されます。これらが一体となり、複雑で深みのある味わいを生み出すのです。
  • 鮮やかな色彩と香り: トマトとパプリカが織りなす鮮やかな赤色は、見た目にも食欲をそそります。ニンニクや、場合によってはハーブ(タイムなど)の香りが加わり、五感を刺激する一皿となります。
  • 家庭料理ならではの温かみ: 気取らない、素朴でありながらも満足感の高い味わいは、まさに家庭料理の真骨頂。家族や友人と囲む食卓にぴったりの、心温まる料理と言えますね。

これらの要素が組み合わさることで、シンプルながらも忘れられない、奥深い味わいが生まれるのです。

バスク地方だけじゃない?広がるバリエーション

鶏肉のバスク風煮込みは、バスク地方の家庭料理として広く親しまれていますが、フランス全土、さらには世界各地のフレンチレストランや家庭でも作られています。基本的なレシピは共通していますが、地域や家庭によって細かな違いが見られます。

例えば、フランス側バスクでは生ハム(バイヨンヌ産など)を加えることが多く、よりコク深い味わいに。一方、スペイン側バスクでは、チョリセロ・ペッパー(乾燥赤ピーマンの一種)を使い、独特の風味を加えることもあります。また、辛味をプラスするために、バスク地方特産のエスプレット唐辛子(Piment d’Espelette)を使うのが本格的ですが、手に入らない場合は他の唐辛子で代用されることも。白ワインで風味付けをするレシピもあれば、ハーブの種類を変えるなど、作り手の個性が出るのも面白い点ですね。まさに、”おふくろの味”は無限大、ということでしょうか。

主役と脇役たち:美味しさを支える食材

この料理の美味しさを支える、主な材料を見ていきましょう。

  • 鶏肉: 骨付きのもも肉や手羽元などがよく使われます。骨から出る旨味がソースに深みを与えます。皮目をしっかり焼き付けてから煮込むのが、香ばしさを加えるコツ。
  • トマト: 完熟トマト、またはトマトの水煮缶が使われます。酸味と旨味のベースとなります。
  • パプリカ: 赤パプリカが主役。甘みと鮮やかな色を与えます。緑や黄色のパプリカを組み合わせることも。
  • ピーマン: パプリカと共に、独特の風味を加えます。
  • 玉ねぎ・にんにく: 香味野菜として、味のベースを作ります。じっくり炒めて甘みを引き出すのがポイント。アッシェ(みじん切り)にしたり、スライスしたり、形はお好みで。
  • 白ワイン(任意): 風味付けや鶏肉の臭み消しに使われることがあります。
  • オリーブオイル: 炒め油として。
  • ハーブ類(任意): タイムやローリエなどが使われることがあります。
  • エスプレット唐辛子(任意): バスク地方特産の唐辛子。ピリッとした辛味と独特の香りを加えます。

これらの材料が、それぞれの役割を果たし、見事なハーモニーを奏でるのです。

美味しさの秘訣:伝統的な調理のポイント

鶏肉のバスク風煮込みを美味しく作るための、伝統的な調理法のポイントをいくつかご紹介しましょう。もちろん、家庭によって細かな違いはありますが、基本を押さえることが大切です。

  1. 鶏肉の下準備: 鶏肉に塩、こしょうで下味をつけ、皮目からフライパンで焼き付けます。ここでしっかりと焼き色をつけることで、香ばしさが増し、煮崩れも防ぎます。余分な脂は取り除きましょう。
  2. 香味野菜をじっくり炒める: 鶏肉を取り出したフライパンで、玉ねぎやにんにくを弱火でじっくりと炒めます(ソフリット)。焦がさないように注意しながら、甘みを引き出すのが肝心。ここで手を抜かないことが、味の深みにつながります。
  3. 野菜を加えて炒め煮: パプリカやピーマンを加えてさらに炒め、トマト(水煮缶の場合は潰しながら)を加えます。白ワインを加える場合はここで。
  4. 鶏肉を戻して煮込む: 焼き付けた鶏肉を鍋に戻し入れ、ハーブ類を加えます。蓋をして、弱火でコトコトと煮込みます。煮込み時間は鶏肉の大きさや部位によりますが、肉が柔らかくなるまで、最低でも30分~1時間程度は煮込みたいところ。焦げ付かないように、時々様子を見てくださいね。
  5. 味の調整: 最後に塩、こしょうで味を調えます。エスプレット唐辛子を加える場合は、ここで。

この「じっくりコトコト」が、美味しさの秘訣。焦らず、素材の味を引き出すことを意識してみてください。想像いただけましたでしょうか?

まとめ:バスクの太陽を食卓へ

鶏肉のバスク風煮込みは、フランスとスペインの文化が交わるバスク地方の豊かな食文化を象徴する一皿です。鶏肉の旨味と、トマトやパプリカを中心とした野菜の甘みが織りなす、鮮やかで深みのある味わいは、一度食べたら忘れられない魅力を持っています。

その起源はバスクの家庭にあり、ピペラードという伝統的な野菜の煮込みがベースとなっています。特別な日のごちそうというよりは、日常的に親しまれる、温かみのある料理。地域や家庭によって少しずつレシピが異なるのも、また面白い点ですね。基本的な材料はシンプルですが、鶏肉の焼き方や野菜の炒め方、そしてじっくり煮込む工程が、美味しさを引き出す鍵となります。

あなたもぜひ、この太陽の色をした煮込み料理をご家庭で試してみてはいかがでしょうか?きっと、バスク地方の陽気な風を食卓に運んできてくれるはずです。

さいごに

シェフレピでは、ETXOLA(エチョラ) の清水和博シェフによる「鶏肉のバスク風煮込み」のレッスンを公開しております!
シンプルな工程ながらも、素材の味わいをしっかりと楽しめる、ご家庭でも作りやすい料理です。ぜひこの機会にチェックしてみてください!

鶏肉のバスク風煮込み/ETXOLA (エチョラ) 清水和博

バスク地方の定番家庭料理。バスクらしく、たくさんのピーマンを使って作る煮込み料理です。 現地では鶏だけではなく羊などを使ったりもします。ぜひ、バスク地方の家庭の味わいを体験してみてください。

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