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ビリヤニとは?インド発祥、スパイス香る炊き込みご飯の魅力と歴史を徹底解説

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はじめに

「ビリヤニ」という料理をご存知でしょうか? インド料理店などで見かける、スパイスの香りが食欲をそそる、彩り豊かな米料理です。近年、日本でも専門店やコンビニエンスストアなどで見かける機会が増え、その人気はますます高まっています。
この記事では、インド亜大陸で広く愛されるビリヤニについて、その定義から起源、歴史、特徴、そして地域による違いまで、深く掘り下げて解説します。ビリヤニの奥深い世界を一緒に探求しましょう。

料理の定義と概要

ビリヤニは、スパイスと米、そして肉や魚介、野菜などを主な材料として作られる炊き込みご飯、あるいは混ぜご飯の一種です。インドやパキスタンをはじめとする南アジア地域で広く親しまれており、お祝いの席など特別な機会にもよく登場する、華やかな料理として知られています。最大の特徴は、複数のスパイスを組み合わせた「マサラ」が生み出す複雑で豊かな香りと、具材の旨味が染み込んだ米の味わいです。

起源と歴史

ビリヤニの起源には諸説ありますが、ペルシャ(現在のイラン)に由来するという説が有力とされています。ペルシャ語で「炒める」や「焼く」を意味する「beriyan」や、米を意味する「birinj」が語源になったと考えられています。

この料理がインド亜大陸に伝わったのは、ムガル帝国の時代と言われています。ペルシャ文化の影響を強く受けたムガル帝国の宮廷料理として洗練され、インド各地へと広まっていきました。各地の食文化と融合しながら、地域ごとに独自のスタイルを持つビリヤニが生まれていったのです。

主要な特徴

ビリヤニの最も際立った特徴は、その芳醇なスパイスの香りです。シナモン、クローブ、カルダモン、クミン、コリアンダー、ターメリックなど、多種多様なスパイスが使われます。これらのスパイスを独自に配合したミックススパイス「マサラ」が、ビリヤニの味の決め手となります。家庭や地域、お店によってマサラの配合は異なり、それが多様なビリヤニの風味を生み出しています。

また、調理法にも特徴があります。多くの場合、スパイスで味付けした具材と米を層状に重ねて、蒸し焼き(ダム・プクトと呼ばれる調理法)にします。これにより、スパイスの香りが米全体に行き渡り、具材の旨味も米にしっかりと染み込みます。米には、香り高い長粒種のバスマティライスが使われることが多いのも特徴です。

食べる際には、ヨーグルトに野菜やスパイスを加えた「ライタ」を添えるのが一般的です。ビリヤニのスパイス感とライタの爽やかな酸味が絶妙な組み合わせを生み出します。
ご飯にヨーグルトをかけると聞くと、抵抗のある方も多いのではないでしょうか?
私も初めは半信半疑でしたが、実際に食べてみると、ビリヤニにライタはなくてはならない存在だと感じるほど、その相性の良さに驚きを隠せませんでした。

地域による違いや派生料理

広大なインド亜大陸では、地域ごとに特色あるビリヤニが存在します。

  • ハイデラバーディ・ビリヤニ: インド南部の都市ハイデラバードのビリヤニは特に有名です。生肉をスパイスでマリネし、米と一緒に炊き上げる「カッチ(生の意味)・ビリヤニ」が特徴的です。じっくりと火を通すことで、肉は柔らかく、米には旨味が凝縮されます。一方、調理済みの肉を使う「パッキ(調理済みの意味)・ビリヤニ」もあります。
  • ラクナウイ・ビリヤニ: 北インドのラクナウ地方のビリヤニは、よりマイルドで繊細な味わいが特徴とされ、「アワディ・ビリヤニ」とも呼ばれます。
  • コルカタ・ビリヤニ: 東インドのコルカタでは、ジャガイモやゆで卵が入ることが特徴です。
  • その他: 他にも、南インドのマラバール地方のビリヤニや、菜食主義者向けの野菜だけで作るベジタブル・ビリヤニなど、数多くのバリエーションが存在します。

一般的な材料と特徴

ビリヤニに使われる主な材料は以下の通りです。

  • 米: 香り高いバスマティライス(長粒種インディカ米)が最もよく使われますが、地域によっては他の種類の米も使用されます。
  • スパイス: シナモン、クローブ、カルダモン、ベイリーフ(月桂樹の葉)、ナツメグ、メース、スターアニス、クミン、コリアンダー、ターメリック、チリパウダー、ブラックペッパーなどが基本です。これらを組み合わせて独自の「マサラ」を作ります。サフランを使うと、色鮮やかで高貴な香りが加わります。
  • 香味野菜: 玉ねぎ、にんにく、ショウガは風味のベースとして欠かせません。
  • 具材:
    • 肉類: 鶏肉(チキン)、羊肉(マトン)、山羊肉(ゴート)が一般的です。牛肉(ビーフ)が使われることもあります。
    • 魚介類: エビや魚を使ったビリヤニもあります。
    • 野菜: ジャガイモ、ニンジン、グリーンピース、カリフラワーなどが使われるベジタブル・ビリヤニもあります。
    • その他: ゆで卵、パニール(インドのカッテージチーズ)、ナッツ類、ドライフルーツなどが加えられることもあります。
  • 油脂: ギー(澄ましバター)や植物油が使われます。ギーを使うと、より豊かなコクと香りが加わります。
  • その他: ヨーグルト(肉のマリネやライタに使用)、ミントやパクチー(香りづけや飾り付け)などもよく使われます。

これらの材料の組み合わせやスパイスの配合によって、ビリヤニの風味は無限に広がります。

本来の伝統的な調理法

ビリヤニの調理法は、大きく「カッチ式」と「パッキ式」の二つに分けられます。

  • カッチ式 (Kacchi): 「カッチ」はヒンディー語などで「生の」という意味です。スパイスやヨーグルトでマリネした生の肉や野菜を鍋の底に敷き、その上に半茹でにした米を重ね、蓋をして弱火でじっくりと蒸し焼きにします。ハイデラバーディ・ビリヤニがこの方式の代表例です。生の状態から加熱することで、素材の旨味が米に深く浸透します。
  • パッキ式 (Pakki): 「パッキ」は「調理済みの」という意味です。あらかじめスパイスと共に調理した肉や野菜のカレー(コルマやカリヤと呼ばれるもの)を作り、それを半茹でにした米と層状に重ねて蒸し上げます。カッチ式に比べて調理時間が短縮できるとされています。

どちらの方式も、鍋の蓋の隙間を生地などで密閉し、蒸気を逃さずに調理する「ダム・プクト」という技法が用いられることがあります。これにより、香りが凝縮され、ふっくらとした仕上がりになります。
南インド料理の名店、エリックサウスの稲田俊輔シェフにビリヤニの作り方を教わった際、鍋の蓋の穴にクローブを刺して密閉していたことがとても面白く、感心してしまいました。

まとめ

ビリヤニは、豊かなスパイスの香りと具材の旨味が絶妙に調和した、インド亜大陸を代表する米料理です。ペルシャに起源を持つとされるこの料理は、ムガル帝国時代に洗練され、インド各地で独自の発展を遂げてきました。ハイデラバードのカッチ・ビリヤニや、地域ごとの特色あるバリエーション、そして菜食・非菜食の違いなど、その世界は非常に奥深く、多様性に富んでいます。

基本的な材料は米とスパイス、そして肉や野菜ですが、その組み合わせや調理法によって味わいは千差万別。ぜひ、様々な種類のビリヤニを試して、その魅力的な香りと味わいの虜になってみてはいかがでしょうか。

さいごに

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鍋で炊く際の香りの変化などを実際に感じられるのは、自分で作るからこその楽しみ方です。

ぜひこの機会にチェックしてみてください!

ハイデラバーディ チキンカッチ ビリヤニ/エリックサウス 稲田俊輔

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