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マファルディーネとは?王女の名を冠したリボン状パスタの世界

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はじめに

こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、特徴的な形のパスタ「マファルディーネ」についてお話していきたいと思います。
マファルディーネという名前を聞いて、すぐにその姿を思い浮かべられる方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?イタリアには数百種類ものパスタが存在しますが、その中でもマファルディーネは特に優雅な佇まいを持つパスタです。幅広のリボン状で、両端が美しく波打つその姿は、まるでドレスの裾のよう。この記事では、「小さな女王」という別名を持つマファルディーネの魅力について、その歴史から調理法まで詳しくご紹介します。

初めてマファルディーネを目にしたとき、その優美な形状に心を奪われました。波打つエッジが生み出す独特の食感は、シンプルなトマトソースでさえも特別な一皿に変えてしまう魔法のような力を持っています。

王女の名を冠したパスタの正体

マファルディーネは、幅約1センチメートルの平たいリボン状のパスタです。最大の特徴は、両側のエッジが波状になっていること。この波打つ形状は単なる装飾ではありません。ソースがよく絡み、食感にも変化をもたらす機能的な役割を果たしているのです。

イタリア語で「レジネッテ(reginette)」、つまり「小さな女王」という別名も持つこのパスタ。また、単に「マファルダ(mafalda)」と呼ばれることもあります。これらの名称が示すように、マファルディーネには王室にまつわる興味深い歴史が隠されています。

フェットチーネやリングイネといった他のリボン状パスタと同じ製法で作られますが、両端が丸く巻かれているのも特徴的です。この形状は調理後もしっかりと残り、見た目の美しさと食感の楽しさを演出してくれるんですね。

ナポリから始まった王女への献上品

マファルディーネの起源は、南イタリアのナポリ地域にさかのぼります。かつては「フェットチーネ・リッチェ(fettuccelle ricce)」と呼ばれていたこのパスタが、現在の名前になったのは1902年のこと。

その年、イタリア王家にマファルダ・ディ・サヴォイア王女が誕生しました。この慶事を記念して、波打つエッジを持つ優雅なパスタに王女の名前が付けられたのです。まさに「小さな女王」という別名がぴったりの由来ですね。

興味深いことに、似たような形状のパスタ「トリポリーネ」も存在します。こちらは片側だけが隆起した厚めのパスタで、1930年代のファシスト政権時代に、アフリカの植民地トリポリを記念して作られました。パスタの名前一つとっても、イタリアの歴史が垣間見えるのは実に興味深いことです。

カンパニア州の伝承によれば、ナポリではヴィットーリオ・エマヌエーレ2世を記念したパスタも作られたとか。イタリア人のパスタに対する情熱と、歴史的出来事を食文化に刻み込む伝統が感じられますね。

波打つエッジが生み出す独特の魅力

マファルディーネの最大の特徴である波打つエッジ。これは見た目の美しさだけでなく、実用的な意味でも重要な役割を果たしています。

まず、この波状の形状によってソースとの接触面積が増えます。トマトソースやクリームソース、ラグーソースなど、どんなソースもしっかりとパスタに絡みつくんです。特に濃厚なソースとの相性は抜群で、一口ごとに豊かな味わいを楽しめます。

食感の面でも、波打つエッジは独特の存在感を発揮します。中央部分のもちもちとした食感と、エッジ部分の軽やかな歯ごたえのコントラスト。これがマファルディーネならではの食べ応えを生み出しているのです。

さらに、調理後も形状がしっかりと保たれるため、見た目の美しさも長持ちします。レストランでも家庭でも、盛り付けた時の華やかさは格別。まるで皿の上に小さな芸術作品があるかのようです。

イタリア各地で愛される多彩な楽しみ方

マファルディーネは、イタリア全土で様々な調理法で楽しまれています。発祥の地ナポリでは、新鮮なトマトとバジルを使ったシンプルなソースで食べることが多いようです。南イタリアらしい、素材の味を活かした調理法ですね。

一方、北イタリアでは濃厚なクリームソースやチーズソースと合わせることも。特にトリュフを使った贅沢なソースとの組み合わせは、特別な日のご馳走として人気があります。

地域によっては、海の幸をふんだんに使ったペスカトーレ風や、野菜たっぷりのプリマヴェーラ風など、季節の食材を活かした調理法も見られます。マファルディーネの形状は、具材をしっかりとキャッチしてくれるので、具だくさんのソースにもぴったりなんです。

最近では、冷製パスタとしても注目されています。波打つエッジが涼しげな印象を与え、夏の食卓を彩る一品として人気を集めているとか。伝統を大切にしながらも、新しい食べ方を模索するイタリア人の柔軟性が感じられますね。

家庭で楽しむマファルディーネの基本

マファルディーネを美味しく調理するには、いくつかのポイントがあります。まず、茹で時間は通常のパスタよりもやや長め。パッケージに記載された時間を目安に、アルデンテに仕上げることが大切です。

茹でる際は、たっぷりのお湯を使うこと。マファルディーネは幅広なので、狭い鍋だとくっついてしまう可能性があります。塩は1.5%の濃さ(水1リットルに対して塩15グラム程度)を目安に。これがパスタ自体に下味をつける重要なポイントです。

ソースと和える際は、パスタの茹で汁を少し加えるのがコツ。でんぷん質を含んだ茹で汁が、ソースとパスタをしっかりと結びつけてくれます。フライパンで軽く煽りながら、ソースを全体に行き渡らせましょう。

盛り付けの際は、マファルディーネの美しい形状を活かすことを意識して。トングでくるくると巻いて高さを出したり、波打つエッジが見えるように広げたり。ちょっとした工夫で、レストランのような一皿に仕上がります。

伝統を受け継ぐ職人たちの技

本場イタリアでは、今でも伝統的な製法でマファルディーネを作る職人たちがいます。良質なデュラム小麦のセモリナ粉と水だけを使い、じっくりと時間をかけて生地を作り上げます。

波打つエッジを作る工程は、まさに職人技の見せ所。専用の型を使って、一定の圧力で生地を押し出していきます。この時の力加減一つで、エッジの波の深さや形状が変わってしまうのだとか。

乾燥工程も重要です。低温でゆっくりと乾燥させることで、パスタ本来の風味と食感が保たれます。工業的に大量生産されるパスタとは一線を画す、職人の手仕事ならではの味わいが生まれるのです。

最近では、古代小麦を使ったマファルディーネや、野菜を練り込んだカラフルなものも登場しています。伝統を守りながらも、新しい挑戦を続ける。これもまた、イタリアの食文化の素晴らしさではないでしょうか。

まとめ

マファルディーネは、その優雅な見た目と機能的な形状、そして王女の名を冠した歴史的背景を持つ、まさに特別なパスタです。

波打つエッジが生み出す独特の食感とソースとの絡み具合は、一度味わえば忘れられない美味しさ。シンプルなトマトソースから濃厚なクリームソースまで、どんな味付けにも対応できる懐の深さも魅力です。

イタリアの食文化が育んだこの「小さな女王」を、ぜひ一度お試しください。きっと、あなたの食卓に新しい彩りと楽しみをもたらしてくれることでしょう。マファルディーネとの出会いが、イタリア料理の奥深い世界への扉を開くきっかけになれば幸いです。

さいごに

シェフレピでは、「デュカ風味の自家製サルシッチャとキノコのマファルディーネ、マーガオの香り」のレッスンを公開しております!
ぜひこの機会にチェックしてみてください!

デュカ風味の自家製サルシッチャとキノコのマファルディーネ、マーガオの香り/イタリア料理人 関口幸秀


ソースが絡みやすく食べ応えがあるため、ラグーソースやクリームソースを定番で合わせます。
今回は、デュカを混ぜ込み、家庭でもできるようにアレンジしたサルシッチャ(イタリア語で腸詰)とキノコをしっかり炒めて作るトリフォラーティを使ったクリームソースを作ります。さらに仕上げのマーガオの香りがさわやかさをプラス。
追いデュカなどで味変しながら、オリエンタルなオリジナルパスタを味わってください。

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