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ガパオライスとは?タイの定番ソウルフードの魅力と本格レシピ

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はじめに

みなさんこんにちは、シェフレピの山本です。今回は、「ガパオライス」についてお話ししていきたいと思います。ガパオライスという料理名を聞いて、エスニック料理好きの方なら思わず食欲をそそられるのではないでしょうか。タイ料理レストランやカフェのメニューで見かけることも増えてきたこの料理は、実は日本独自の呼び名であることをご存知でしたか?本記事では、タイの国民的ソウルフード「パットガパオ」から生まれたガパオライスの魅力を、その歴史的背景から本格的な調理法まで、詳しく解説していきます。

ガパオライスが持つ二つの顔:タイと日本の架け橋

ガパオライスとは、タイの定番家庭料理「パットガパオ」を日本人の味覚に合わせてアレンジした料理です。興味深いことに、「ガパオライス」という名称は日本特有のもので、本場タイでは通じません。タイでは「パットガパオ・ガイ(鶏肉のホーリーバジル炒め)」や「パットガパオ・ムー(豚肉のホーリーバジル炒め)」と、使用する肉の種類によって呼び分けられています。

この料理の最大の特徴は、何といってもガパオ(ホーリーバジル)の独特な香りでしょう。スイートバジルとは異なる、スパイシーで清涼感のある香りが料理全体を包み込みます。ひき肉をナンプラーやオイスターソースで味付けし、唐辛子でピリッと辛味を効かせた炒め物に、とろりとした半熟の目玉焼きを添える。シンプルながら、味のバランスが絶妙な一皿なんですね。

戦時中に生まれた国民食:パットガパオの意外な歴史

パットガパオの歴史を紐解くと、第二次世界大戦中のタイにまで遡ります。当時のプレーク・ピブーソンクラーム首相が推進したタイ文化振興政策の一環として、パットガパオやパッタイといった料理が国民に広められました。中華料理の炒め物をヒントに考案されたこの料理は、タイ料理コンテストでも取り上げられ、瞬く間に国民的な料理として定着していったのです。

時代とともに、パットガパオの具材も多様化してきました。当初は肉とガパオ、ニンニクというシンプルな組み合わせでしたが、現在では玉ねぎ、ピーマン、ベビーコーン、マッシュルームなど、様々な野菜が加えられることも。これは単に味の変化を求めただけでなく、飲食店が原価を抑えつつボリューム感を出すための工夫でもあったようです。でも、野菜が加わることで栄養バランスも良くなり、結果的により親しみやすい料理になったと言えるでしょう。

香りと辛さの絶妙なハーモニー:ガパオライスの味わい

ガパオライスの魅力は、複雑な味わいの層にあります。まず口に入れた瞬間、ガパオの爽やかな香りが鼻を抜けていきます。次に、ナンプラーの旨味とオイスターソースのコクが舌に広がり、唐辛子のピリッとした辛さがアクセントを加える。そこに半熟の目玉焼きを崩して混ぜると、まろやかさが加わって全体の味がまとまるんです。

日本のガパオライスは、本場のものと比べると辛さが控えめで、野菜も多めに入っていることが多いですね。これは日本人の好みに合わせた結果ですが、むしろこのアレンジによって、より多くの人に愛される料理になったのではないでしょうか。

地域で変わる個性:タイと日本のガパオの違い

本場タイのパットガパオと日本のガパオライスには、いくつか興味深い違いがあります。まず、使用するバジルの種類。タイではホーリーバジル(ガパオ)が必須ですが、日本では入手困難なため、スイートバジルで代用されることが多いんです。でも実は、この代用によって日本独自の優しい味わいが生まれたとも言えます。

また、タイでは豚肉、鶏肉、牛肉、さらには魚介類まで様々な具材が使われますが、日本では鶏ひき肉か豚ひき肉が主流。野菜の種類も、タイではササゲやカイラン(中国野菜)が使われるのに対し、日本ではピーマンや玉ねぎが定番となっています。付け合わせも、タイでは目玉焼きは必須ではありませんが、日本では”ガパオライスといえば目玉焼き”というイメージが定着していますね。

家庭でも再現できる本格的な材料と味の秘密

ガパオライスの基本的な材料は、実はとてもシンプルです。ひき肉(豚または鶏)、バジル、ナンプラー、ピーマン、玉ねぎ、ニンニク、唐辛子、そして調味料としてオイスターソース、砂糖少々。これだけで本格的な味が再現できるんです。

ポイントは、ナンプラーの使い方にあります。最初から全量入れるのではなく、炒めながら少しずつ加えていくことで、香ばしさが増します。また、砂糖を少量加えることで、辛さと塩味のバランスが整い、タイ料理特有の複雑な味わいが生まれるんですね。バジルは最後に加えて、さっと炒める程度に。火を通しすぎると香りが飛んでしまうので要注意です。

プロが教える本格ガパオライスの調理テクニック

本格的なガパオライスを作るコツは、強火で一気に炒めることです。中華鍋やフライパンを煙が出るくらいまで熱してから油を入れ、まずニンニクと唐辛子を炒めて香りを出します。次にひき肉を入れて、パラパラになるまでしっかり炒める。ここで手を抜くと、べちゃっとした仕上がりになってしまいます。

野菜を加えたら、調味料を回し入れて手早く炒め合わせます。最後にバジルを加えて、さっと炒めたら完成。目玉焼きは、白身はカリッと、黄身は半熟に仕上げるのが理想的です。フライパンに多めの油を入れて、高温で揚げ焼きにすると、お店のような仕上がりになりますよ。

まとめ

ガパオライスは、タイの伝統的な家庭料理が日本で独自の進化を遂げた、まさに食文化交流の象徴とも言える料理です。第二次世界大戦中に生まれたパットガパオが、時を経て日本でガパオライスとして愛されるようになった歴史は、料理が持つ文化を超える力を物語っています。

シンプルな材料で作れる手軽さと、複雑で奥深い味わいを併せ持つガパオライス。本格的なホーリーバジルが手に入らなくても、スイートバジルで十分美味しく作れます。強火で手早く炒めることと、調味料のバランスさえ押さえれば、自宅でも本格的な味が楽しめるでしょう。今夜の夕食に、エスニックな香りに包まれたガパオライスはいかがでしょうか。

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