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ソットオーリオとは?イタリアの伝統的な野菜のオイル漬けの魅力と基本を解説

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はじめに

イタリア料理と聞くと、パスタやピッツァを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、その魅力は多岐にわたります。今回ご紹介する「ソットオーリオ(Sott’olio)」は、イタリアの食卓に彩りを添える伝統的な保存食であり、味わい深い前菜(アンティパスト)としても親しまれています。「ソットオーリオ」とはイタリア語で「オイルの下」を意味し、その名の通り、野菜などをオイルに漬け込んで作られます。この記事では、ソットオーリオの基本的な情報から、その背景、特徴、使われる材料までを掘り下げて解説します。

料理の定義と概要

ソットオーリオは、旬の野菜などを長期保存するために生まれたイタリアの伝統的な調理法、およびその料理自体を指します。主な目的は保存性を高めることですが、オイルに漬け込むことで野菜の風味が増し、独特の食感が生まれます。主に前菜として、パンに添えたり、肉料理や魚料理の付け合わせとして楽しまれます。オイル漬けというと油っこいイメージがあるかもしれませんが、良質なオリーブオイルと新鮮な野菜、ハーブなどが組み合わさることで、素材の味が生きた豊かな味わいとなります。

イタリア料理人の関口シェフからお聞きした話によると、イタリアではジャルディニエーラ(畑で採れたもの・女性の庭師などを表す)とも呼ばれるこの料理は、使う野菜に決まりはなく、その時に収穫された野菜が使用されるそうです。まさにイタリアらしい考え方ですね。

起源と歴史

ソットオーリオの正確な起源を特定するのは難しいですが、食品をオイルに漬けて保存する技術は古代ローマ時代から存在していたと考えられています。オリーブオイルが豊富に生産される地中海地域では、オイルが食品を空気から遮断し、腐敗を防ぐ役割を果たすことが古くから知られていました。特に、収穫期が限られる野菜を年間を通して楽しむための知恵として、イタリアの各家庭で受け継がれてきた調理法と言えるでしょう。冷蔵技術が普及する以前は、ソットオーリオのような保存食は食料を確保する上で非常に重要な役割を担っていました。

主要な特徴

ソットオーリオの最大の特徴は、オイルによる保存性の高さと、それによって生まれる独特の風味と食感です。

  • 風味: オイルが野菜の旨味を閉じ込め、時間を置くことで味が馴染み、深みが増します。使用するハーブやスパイス(ニンニク、唐辛子、オレガノ、ローリエなど)によって、様々な風味付けが可能です。
  • 食感: 野菜の種類や下処理の方法によって、シャキシャキとした食感を残したり、しっとりと柔らかく仕上げたりすることができます。オイルに漬かることで、口当たりがまろやかになるのも特徴です。
  • 汎用性: そのまま前菜として食べるだけでなく、刻んでパスタソースに加えたり、サラダのトッピングにしたりと、様々な料理に応用できます。

地域による違いや派生料理

イタリアは地域ごとに食文化が多様であり、ソットオーリオに使われる野菜や風味付けも地域によって特色があります。

  • 南イタリア: 日差しの強い南イタリアでは、ナス、パプリカ、ドライトマトなどがよく使われます。唐辛子を効かせたスパイシーな風味付けも人気です。
  • 北イタリア: 北部では、キノコ類やアーティチョークなどもソットオーリオの材料として用いられることがあります。比較的穏やかな風味付けが好まれる傾向があると言われています。

特定の「派生料理」というよりは、各家庭や地域で使う野菜やハーブ、スパイスの組み合わせによって、無数のバリエーションが存在するのがソットオーリオの魅力です。

一般的な材料と特徴

ソットオーリオには、様々な野菜が使われます。一般的に用いられる主な材料は以下の通りです。

  • 野菜: ナス、ズッキーニ、パプリカ、玉ねぎ、ニンジン、セロリ、キノコ類、アーティチョーク、ミニトマト、オリーブなど。旬の新鮮な野菜を選ぶのが美味しさの秘訣です。
  • オイル: 主にエクストラバージンオリーブオイルが使われますが、ひまわり油など他の植物油とブレンドすることもあります。風味の良い高品質なオイルを選ぶことが重要です。
  • 酢: 野菜の下処理や風味付け、保存性を高めるために、ワインビネガーなどが使われることがあります。これにより、ピクルスのような爽やかな酸味が加わることもあります(ただし、酢を使わないレシピもあります)。
  • 香味料: ニンニク、唐辛子、ローリエ、ローズマリー、オレガノ、タイム、黒胡椒などが風味付けと保存性の向上のために加えられます。

これらの材料を組み合わせることで、各家庭ならではの味わいが生まれます。

本来の伝統的な調理法

ソットオーリオの基本的な作り方は、野菜に適した下処理を施し、オイルに漬け込むというものです。

  1. 野菜の下処理: 野菜を食べやすい大きさに切り、種類に応じて下処理を行います。一般的には、塩水で茹でる、グリルする、または酢水で茹でるなどの方法があります。これは野菜のアク抜きや殺菌、適度な食感を残すために行われます。
  2. 水気を切る: 下処理した野菜の水気をしっかりと切ることが非常に重要です。水分が残っていると、オイルの中で雑菌が繁殖しやすくなり、保存性が損なわれます。キッチンペーパーで丁寧に拭き取ったり、場合によっては一晩置いて乾燥させることもあります。
  3. 瓶詰めとオイル注入: 清潔な保存瓶に、水気を切った野菜と香味料(ニンニク、ハーブ、スパイスなど)を詰めます。その後、野菜が完全に浸るようにオイルを注ぎ入れます。野菜がオイルから出ていると、そこから傷みやすくなるため注意が必要です。
  4. 熟成: 瓶の蓋をしっかりと閉め、冷暗所で保存します。数日から1週間ほど置くと味が馴染んで美味しくなります。

伝統的な方法では、長期保存のために瓶ごと煮沸消毒することもありますが、家庭で少量作る場合は、清潔な器具を使用し、冷蔵庫で保存するのが一般的です。

まとめ

ソットオーリオは、イタリアの豊かな食文化と、食材を大切にする知恵が生んだ伝統的なオイル漬けです。旬の野菜の美味しさをオイルと共に閉じ込め、時間をかけて熟成させることで、独特の深い味わいが生まれます。そのまま前菜として楽しむのはもちろん、様々な料理に活用できるのも魅力です。ぜひ、ご家庭でも好みの野菜を使って、自家製ソットオーリオ作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。イタリアの家庭の味を身近に感じられるはずです。

さいごに

シェフレピでは、作り置きにもぴったりな「野菜のソットオーリオ」のレッスンを公開しております!
オイル漬けにすることで酸味がまろやかになり、食べやすいピクルスに仕上がります。
酸味の強いピクルスが苦手な方にもおすすめのレシピです。

ぜひこの機会にチェックしてみてください!

野菜のソットオーリオ/イタリア料理人 関口幸秀

イタリアではジャルディニエーラ(畑で採れたもの・女性の庭師などを表す)とも呼ばれるこの料理。使う野菜に決まりはなく、その時に収穫された野菜を使用します。ご家庭で作る場合も、冷蔵庫で余っている野菜を利用するといいでしょう。ビネガーベースの液体で野菜を茹でた後、オイルに漬けることで、程よく酸味が落ち着き、食べやすいピクルスになります。日持ちもするため、作り置きにもぴったりです。

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