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ネパールの軽食「カジャ」とは?多様な味わいと食文化を解説

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はじめに:ネパールの食卓を彩る「カジャ」の世界へようこそ

こんにちは。シェフレピの池田です。今回はネパール料理「カジャ」についてお話ししていきたいと思います。ネパール料理と聞くと、多くの方が「ダルバート」を思い浮かべるかもしれません。しかし、ネパールの食文化はそれだけではありません。今回は、ネパールの日常に深く根付いた食習慣、「カジャ(Khaja)」についてご紹介します。カジャは特定の料理名を指すのではなく、ネパール語で「軽食」や「おやつ」、「間食」を意味する言葉です。この記事では、カジャの定義から、その多様な内容、ネパールの食文化における位置づけまで、詳しく解説していきます。

初めて新大久保のネパール料理店で「カジャセット」なるものを目にした時、「カジャって何だろう?」と興味津々でした。出てきたのは、豆のスープやカレーではなく、焼きそばのようなものや蒸し餃子のような料理の盛り合わせ。これがネパールの「軽食」なのかと驚きつつ、その美味しさと多様性にすっかり魅了されたのを覚えています。

「カジャ」って一体なに?ネパール流・軽食の定義

「カジャ」とは、ネパール語で「軽食」や「おやつ」、「間食」を意味する言葉です。日本でいう「おやつ」や「軽食」に近い概念ですが、ネパールではもう少し広い意味合いで使われています。

具体的には、朝食と昼食の間、昼食と夕食の間など、主な食事の合間に食べるものを指します。日本のおやつのように甘いものに限らず、塩気のある軽食や、時にはしっかりとした一品料理もカジャとして食べられます。まさに、ネパールの人々の生活リズムに寄り添う、自由で多様な食文化の現れと言えるでしょう。

カジャの歴史:生活に根付いた食習慣の成り立ち

カジャという食習慣の正確な起源を特定するのは難しいですが、ネパールの地理的・文化的な背景と深く関わっていると考えられます。

ネパールは農業が主要な産業であり、人々は日の出とともに働き始め、日中の暑い時間帯を避けて休憩を取る生活スタイルが伝統的に見られました。こうした生活リズムの中で、主な食事の合間にエネルギーを補給し、小腹を満たすための「カジャ」が定着していったのではないでしょうか。

また、ネパールは多様な民族が共生する国であり、それぞれの民族が持つ食文化がカジャの内容にも影響を与えています。チベット系の文化を持つ地域ではトゥクパ(麺類)やモモ(蒸し餃子)が、インド系の文化が色濃い地域ではサモサやパコウダ(揚げ物)などがカジャとして親しまれているようです。時代と共に、都市部では外食文化も発展し、カジャを提供する軽食スタンドや食堂も増え、その内容はさらに多様化しています。

カジャの魅力:時間も場所も選ばない自由なスタイル

カジャの最大の魅力は、その自由度の高さにあると言えますね。食べる時間帯も、午前10時頃、午後3時頃など、人々の生活リズムに合わせて様々です。

内容も実にバラエティ豊か。チウラ(干し米)に豆や野菜のおかずを添えたもの、サモサやパコウダのような揚げ物、モモ(ネパール風蒸し餃子)、チャウミン(ネパール風焼きそば)、トゥクパ(ネパール風うどん)、さらにはビスケットや果物まで、実に多岐にわたります。甘いものから塩辛いもの、軽いものからボリュームのあるものまで、その時の気分や状況に合わせて選べるのがカジャの面白いところです。

家庭で手作りされることもあれば、街角の屋台や食堂で気軽に食べることもできます。学校帰りや仕事の合間、友人との語らいの場など、ネパールの人々の日常の様々なシーンにカジャは登場します。まさに、ネパールの“ソウルフード”と呼べる存在かもしれません。

ネパール各地のカジャ:地域色豊かな味わいを探る

ネパールは地域によって食文化が異なりますが、カジャの内容にもその特色が現れます。

例えば、首都カトマンズ盆地に住むネワール族の間では、特別な日のごちそうとしても食べられる豪華なカジャセット(ネワール・カジャセット)があります。チウラを中心に、豆の和え物、肉料理、漬物などが美しく盛り付けられ、見た目にも華やかです。

一方、タライ平野部では、インド食文化の影響を受けたサモサやジェリ(甘い揚げ菓子)などが人気。山岳地帯では、体を温めるトゥクパやテントゥク(ネパール風すいとん)などがカジャとして食べられることもあります。

このように、地域ごとの特色がカジャの内容に反映されている点も、この食文化の興味深い側面です。旅先でその土地ならではのカジャを味わうのも、ネパール旅行の醍醐味の一つと言えるでしょう。

カジャの代表例:今日はどれにする?人気の軽食たち

カジャとして食べられる料理は無数にありますが、特に人気のある代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

  • チウラ・カジャセット: ネパールの代表的なカジャ。干し米(チウラ)に、豆の煮込み(ダール)、野菜や肉のスパイス炒め(タルカリ)、漬物(アツァール)などを添えたもの。栄養バランスも良く、腹持ちも良い定番スタイルです。
  • サモサ: ジャガイモや豆などをスパイスで味付けした具を、小麦粉の皮で三角形に包んで揚げたもの。インド由来ですが、ネパールでも非常にポピュラーなカジャです。アツアツを頬張るのが最高ですね。
  • モモ: ネパール風の蒸し餃子。具は水牛、鶏肉、野菜など様々。トマトベースのピリ辛ソース(ゴルベラ・コ・アツァール)につけて食べるのが一般的。小腹が空いたときにピッタリ!
  • チャウミン: ネパール風の焼きそば。野菜や肉と一緒に麺を炒め、スパイスで味付けしたもの。屋台や食堂の定番メニューです。
  • パコウダ: 野菜などに豆の粉の衣をつけて揚げた天ぷらのようなもの。玉ねぎやジャガイモなどがよく使われます。サクッとした食感がたまりません。
  • セルロティ: 米粉で作った甘いドーナツ状の揚げパン。お祭りやお祝い事の際によく作られますが、日常的なカジャとしても親しまれています。

これらはほんの一例。他にも様々な料理がカジャとして楽しまれています。

カジャの楽しみ方:ネパールの日常を味わう

カジャは特定の調理法があるわけではなく、様々な料理を楽しむ食習慣そのものです。もしネパールを訪れる機会があれば、ぜひ現地の食堂や屋台でカジャを試してみてください。

注文する際は、「カジャ」と伝えるよりも、具体的な料理名(サモサ、モモ、チャウミンなど)を伝える方がスムーズです。メニューに「カジャセット」があれば、色々な味を少しずつ楽しめるのでおすすめです。

家庭でネパール料理を作る際に、少し軽めのポーションで数種類を用意し、「カジャ風」として楽しむのも面白いかもしれません。ダルバートだけでなく、こうした多様な軽食文化に触れることで、ネパール料理の奥深さをより感じられるはずです。

まとめ:カジャはネパールの心意気!

ネパールの軽食文化「カジャ」は、単なる間食という言葉だけでは片付けられない、人々の生活に密着した豊かで多様な食習慣です。決まった形はなく、その時々のお腹の空き具合や気分、そして地域の特色を反映しながら、ネパールの人々の日常を彩っています。

カジャを知ることは、ネパールの食文化、ひいては人々の暮らしや価値観に触れることでもあります。もしネパール料理に興味を持ったら、ダルバートだけでなく、ぜひこの「カジャ」の世界も覗いてみてください。きっと、新しい発見と美味しい出会いが待っているはずです。

さいごに

シェフレピでは、ミシュラン掲載店、枯朽の清藤シェフによる「カジャ」のレッスンを公開しております!単体でも簡単な一品として成立する料理の数々。ぜひこの機会にチェックしてみてください!

カジャ/枯朽 清藤洸希

今回、清藤シェフが作るカジャは、炊いた米を平らに潰して干した「チウラ」を主食にし、7種類の料理を一緒に盛り付けたもので、夜の食事としてゆっくりと楽しむことができるようになってます。珍しいネパールの食材やスパイスを使いながら手作りしていきます。

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