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粉蒸肉とは?中国全土で愛される米粉蒸し料理の世界

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はじめに

こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「粉蒸肉」についてお話していきたいと思います。中国全土で愛されている粉蒸肉(フェンヂョンロウ)は、日本では「豚バラ肉の米粉蒸し」として紹介されることが多い、香り豊かな蒸し料理です。米粉をまぶした肉を蒸し上げることで生まれる独特の食感と、じわっと広がる肉の旨味が特徴的な一品です。

初めて粉蒸肉を食べたとき、その優しい味わいに心がほっこりと温まったのを今でも覚えています。米粉が肉汁を吸い込んで、もちもちとした食感に変化する様子は、まるで魔法のようでした。中国の家庭の温もりが詰まったこの料理の魅力を、今回は余すところなくお伝えします。

米粉が織りなす中国家庭料理の定番

粉蒸肉は、その名の通り「粉」で「蒸す」「肉」料理です。中国語では「フェンヂョンロウ」または「フェンジャンロウ」と発音され、本場中国ではポピュラーな家庭料理として親しまれています。

この料理の最大の特徴は、肉に米粉(蒸肉粉)をまぶして蒸し上げる調理法にあります。米粉が肉から出る旨味たっぷりの肉汁を吸収し、独特のもちもちとした食感を生み出すのです。まるで肉の旨味を閉じ込めた衣のような役割を果たしているんですね。

一般的には豚バラ肉を使用することが多いですが、使用する肉の種類は実に多彩です。牛肉や羊肉はもちろん、地域によってはナマズやうなぎといった魚介類を使用することもあります。

中国全土に広がる粉蒸肉の歴史と文化

粉蒸肉の起源については諸説ありますが、中国の長い歴史の中で各地域に根付いていった料理であることは間違いありません。特に四川省や湖南省などの内陸部では、保存性を高めるための知恵として、米粉を使った調理法が発達したと考えられています。

興味深いのは、この料理が中国全土で愛されながらも、それぞれの土地ごとに独自の特色を持っていることです。まさに「一つの料理、千の顔」とでも言えるでしょうか。各地域の食文化や気候、入手可能な食材によって、粉蒸肉は様々な姿に変化してきました。

現代においても、粉蒸肉は中国の家庭料理として重要な位置を占めています。特別な日の食卓にも、日常の食事にも登場する、まさに国民食と呼べる存在なのです。

粉蒸肉が愛される3つの理由

粉蒸肉の魅力は、単に美味しいだけではありません。この料理が長年愛され続けている理由を3つの観点から見てみましょう。

まず第一に、独特の食感です。米粉が肉汁を吸収することで生まれるもちもちとした食感は、他の料理では味わえない特別なものです。肉の柔らかさと米粉のもっちり感が口の中で絶妙に調和します。

第二に、調理の簡便性が挙げられます。基本的には肉に調味料と米粉をまぶして蒸すだけという、シンプルな調理工程。忙しい現代人にとっても作りやすい料理なんですね。

そして第三に、栄養バランスの良さです。肉のタンパク質と米粉の炭水化物が一度に摂取でき、蒸し調理により余分な油も落ちるため、比較的ヘルシーな料理と言えるでしょう。

地域色豊かな粉蒸肉のバリエーション

中国各地で愛される粉蒸肉は、その土地ならではの特色を持っています。代表的な地域のバリエーションをご紹介しましょう。

四川風粉蒸肉は、豆板醤や花椒を効かせた辛味が特徴です。ピリッとした刺激が食欲をそそり、ご飯が進む味付けになっています。豚バラ肉の下にさつまいもを敷くのも四川風の特徴ですね。

湖南風粉蒸肉は、唐辛子をふんだんに使った激辛仕様。四川風よりもさらに辛く、汗をかきながら食べるのが醍醐味です。

江南地方の粉蒸肉は、甘めの味付けが特徴的。醤油と砂糖のバランスが絶妙で、日本人の口にも合いやすい味わいです。

さらに興味深いのは、豚肉以外の食材を使ったバリエーションです。牛肉を使った「粉蒸牛肉」、羊肉を使った「粉蒸羊肉」、魚を使った「粉蒸魚」など、その土地で手に入りやすい食材を活用した粉蒸料理が存在します。

粉蒸肉の基本材料と味の決め手

粉蒸肉を作る上で欠かせない材料について詳しく見ていきましょう。

主役の肉は、やはり豚バラ肉が定番です。脂身と赤身のバランスが良く、蒸すことで余分な脂が落ちながらも、しっとりとした食感を保ちます。厚さは5〜7mm程度にスライスするのが一般的です。

米粉(蒸肉粉)は、この料理の要となる材料です。市販の蒸肉粉には、米粉に五香粉などのスパイスがブレンドされているものが多く、手軽に本格的な味を楽しめます。自家製する場合は、もち米を炒って粗く挽いたものを使用します。

調味料は、醤油、紹興酒、甜麺醤(テンメンジャン)が基本。これに豆板醤や花椒を加えることで、各地域の特色を出していきます。生姜やネギなどの香味野菜も欠かせません。

付け合わせとして、さつまいもやじゃがいも、かぼちゃなどを肉の下に敷くことも多いです。これらの野菜が肉汁を吸って、また違った美味しさを楽しめるんですよ。

伝統的な粉蒸肉の調理法

それでは、伝統的な粉蒸肉の作り方を見ていきましょう。基本的な手順は意外とシンプルです。

まず、豚バラ肉を適当な大きさにスライスし、醤油、紹興酒、甜麺醤などの調味料で下味をつけます。この時、しっかりと肉に味を染み込ませることが大切です。30分から1時間程度マリネすると良いでしょう。

次に、下味をつけた肉に米粉をまぶします。肉の表面全体に均等にまぶすことで、蒸し上がりが均一になります。米粉の量は肉がしっかりコーティングされる程度が目安です。

蒸し器に肉を並べる際は、重ならないように注意します。肉の下に野菜を敷く場合は、この段階で配置します。強火で30〜40分程度蒸せば完成です。

蒸し上がりの目安は、肉に火が通り、米粉がもちもちとした食感になっていることです。竹串を刺して、透明な肉汁が出てくれば火が通っています。

仕上げに刻んだネギや香菜を散らせば、見た目も華やかな粉蒸肉の完成です。熱々のうちに召し上がってくださいね。

まとめ

粉蒸肉は、中国全土で愛される家庭料理として、長い歴史と豊かな地域性を持つ魅力的な料理です。米粉が生み出す独特の食感と、肉の旨味が凝縮された味わいは、一度食べたら忘れられない美味しさです。

豚バラ肉だけでなく、牛肉や羊肉、魚介類など様々な食材で楽しめる粉蒸肉。各地域の特色を反映した味付けのバリエーションも豊富で、まさに中国の食文化の奥深さを体現する料理と言えるでしょう。

シンプルな調理法ながら、奥深い味わいを持つ粉蒸肉。ぜひ一度、本格的な中華料理店で味わってみてはいかがでしょうか。あるいは、市販の蒸肉粉を使って、ご家庭でも手軽に挑戦できます。中国の家庭の温もりを感じられる、素朴で優しい味わいをお楽しみください。

さいごに

シェフレピでは、ラム肉を使用した粉蒸肉、「粉蒸羊肉 (フェンジャンヤンロウ)」のレッスンを公開しております!米ともち米から、自家製の蒸肉粉を作ります。ぜひこの機会にチェックしてみてください!

粉蒸羊肉 (フェンジャンヤンロウ)/味坊 梁宝璋

ラム肉の米粉蒸し「粉蒸羊肉(フェンジャンヤンロウ)」は、中国では豚肉を使った「粉蒸肉(フェンジャンロウ)」が一般的です。レシピを考案した梁宝璋シェフも「ラム肉はごちそうの肉です」と、ハレの日の料理だといいます。 下に水で戻した乾燥野菜を敷き詰めて、米から炒って作った米粉に、スパイス漬けにしたラム肉を混ぜ合わせて蒸し上げます。

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