この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。
Table of Contents
h.b.|枯朽
伝統的なフランス料理をルーツに持ちながら、インドやネパールといったニューワールドな料理を積極的に取り入れて、オリジナリティあふれる世界観の料理が話題の料理人、h.b.さん。店舗をもたないフリーランスではありますが、不定期で開催するイベントは、告知したとたんに満席になる人気ぶりです。
「皿の上は自由だ」というジャンルにとらわれないh.b.さんの料理観について聞きました。
一つ星レストランとビストロでフランス料理を学んだ
「母方の祖父が鹿児島でお寿司屋さんをやっていました。福岡に生まれて暮らしていた僕は、小学校の低学年くらいから高校生まで、お正月やお盆に遊びにいっては、釣りを教えてもらったり、獲った魚を刺身にして食べたり。食の記憶は、その祖父との思い出が強いように思います」
高校を卒業したh.b.さんは、大阪の調理師専門学校に入学。お店を持ちたいと考えていたこともあり、マネジメント学科に2年間通いました。卒業後は、大阪のミシュラン一つ星の高級フランス料理店に入店します。
「マネジメント学科では、料理のジャンルを選択できたんですね。ですので、いろいろと経験できたんですけど、そのなかでフランス料理だけがどうやってできるのか”よくわからなかった”んです。それがフランス料理を選んだきっかけです」
3年間、フランス料理を通じて、料理の基礎をしっかりと学んだh.b.さんは、東京・渋谷でビストロの料理長兼店長として、経営や運営を含めたお店作りを学びます。2020年まで務め、現在は独立準備期間もかねて、フリーランスの出張料理人として活動をしています。
「お店は、10人程度の規模にしたいと考えているので、そのオペレーションを身につけるためにも小さな食事会を企画しています」
知的好奇心のおもむくままに
「もともと物事の成り立ちや起源を調べることが好きでした。いろいろな料理を学びたいですし、知らないことを知りたい。そんな性格ですので、一つのところにとどまらないで、いろいろな経験ができる環境を選んでいると思います」
実際、レストランやビストロで働きながらも、自宅や友人のキッチンで世界各国の料理を作っては料理を振る舞うような、現在のフリー料理人に似た活動を続けていたh.b.さんを見ていると、”知的欲求に正直に生きる”というスタンスは、昔も今も変わっていないように見えます。
自分らしい料理を高めていきたい。そんな志がh.b.さんにはつねにあるようです。
「フランスに憧れもあって、現地で学びたいと思うこともあったのですが、行って帰ってきた人を見ると『人生が変わる』とか『価値観が変わる』と言っていても、どうかわったのか、その経験がどう活かされているのかが僕には伝わってこなかったんです。普通に旅行にいっても、人生や価値観は変わりますからね。それなら技術を学びに行くかと思っても、日本のレストランは十分にレベルが高い。そう思うと、日本にいて学びたいことを学んでいた方が、よっぽど自分らしい料理ができるんじゃないかと思いました」
「ひねくれた自分」も皿の上にのっている
出張料理人として活動していくなかで、お客様に「h.b.さんの人生そのものを盛り込んだ料理だね」と言ってもらえたことが、忘れられないとh.b.さんはいいます。
「フランス料理でもこぎれいな今っぽいのも好きですし、王道のクラシックも好き。インドやネパールのスパイスを使ったカレーも好き。中国料理も、東南アジアの料理にも興味がある。ちょっとひねくれた僕の性格がそのままお皿の上にのっているような料理を作っていきたいです」
上:取材当日、h.b.さんがお弁当として持参したビリヤニ。
散歩が好きで、写真も好き。そういった普段の生活までを盛り込んだ料理を「おもしろい」と言ってくれる人たちのおかげで「皿の上は自由でいい」という言葉の意味を本当に知ることができたといいます。
4月の煮込み料理で紹介してくれた「豚肉のトムセップ風」も、皿の上で自由を謳歌しているh.b.さんが見える、そんな料理です。
ハーブや豚の内臓を使ったタイの料理「トムセップ」を、豚バラ肉にアレンジ。豚バラの塊肉を煮込む前に塩漬けにすることで、煮込んだ後も肉にしっかりと深い味わいが残ります。さらに煮込みの見極めやスパイスを入れるタイミングなどのプロの技やオレンジやタマリンドの組み合わせの妙がレシピでは学べます。
たとえば、「健康にとって脂は敵」と思われ、動物性の脂(油)をできるだけ摂らないようにする人もいると思います。もちろん酸化した油や過剰の摂取は体に悪影響をあたえますが、”いい油”は体によい影響を与えます。「豚肉のトムセップ風」では、アンチエイジング効果が期待されるオレイン酸を多く含む豚肉の脂をしっかりと味わえる料理です。
「料理をすることで、食に対する意識も変わってくるでしょうし、”当たり前”を見直すことにもなると思います。そういった経験を積むことで、さらに料理は自由になっていくと思います。シェフレピを通じて、プロがもつ『皿の上の自由』を手に入れてもらえたら素晴らしいことだと思います」h.b.●エイチ・ビー
福岡県生まれ。高校卒業後、大阪の調理師専門学校に入学。
卒業後は大阪市内のミシュラン一つ星のフランス料理店に勤務し、フランス料理から料理人の基礎を学ぶ。その後、東京に移り、都内のビストロで料理長兼店長として務めた。その後、ビストロを退職し、独立準備に入る。伝統的なフランス料理をルーツにニューワールドな料理を積極的に取り入れた独創的な料理を発表し続けている。
Twitter:@huji_no_hana1