この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。

Table of Contents
京都の寺が生んだ、湯葉の揚げ物
「東寺揚げ」。この名前を初めて聞いたとき、多くの人が「お寺の名前がついた揚げ物?」と首をかしげるのではないでしょうか。
その答えは、京都の東寺にあります。東寺とは教王護国寺の通称で、このお寺で湯葉が作られていたことから、湯葉を「東寺」と呼ぶことがあるのです。揚げたての衣から、湯葉の香ばしさがふわりと立ち上ります。
名前の由来をたどれば、京都の寺院文化と食の結びつきが見えてきます。東寺揚げという一皿の向こうに、長い物語が隠されています。
「東寺揚げ」の名前が示すもの
「東寺揚げ」という名前を初めて見たとき、多くの人がまず「東寺」という言葉に目を留めるのではないでしょうか。京都の地名や寺院に詳しい方なら、すぐに五重塔で知られるあの東寺を思い浮かべるはずです。実際、この料理名の「東寺」は、まさに京都の東寺(教王護国寺)に由来しています。
では、なぜ「東寺」という名前が付いたのでしょうか。諸説ありますが、有力なのは東寺で湯葉が作られていたという説です。また、東寺の周辺には湯葉屋さんが多く集まっていたことも、名前の由来に関わっているとされています。
さらに興味深いのは、この「東寺」という言葉自体が、湯葉を使った料理の総称として使われることがある点です。つまり、東寺揚げは単独の料理名であると同時に、湯葉料理の一群を指す言葉でもあるのです。京都の寺院文化と食の結びつきが、この名前の奥に隠れていると言えるでしょう。
衣にも包みにも、湯葉を自在に使う
東寺揚げは、揚げ物料理のなかでも趣向を凝らした「変わり揚げ」のひとつです。その特徴は、なんといっても湯葉の使い方にあります。
調理法は大きくふたつに分けられます。ひとつは、生湯葉で材料を包んでから揚げる方法。もうひとつは、乾燥湯葉を細かく砕いて衣にする方法です。
衣にする場合の手順を追ってみましょう。下ごしらえした材料に打ち粉をし、卵白や薄衣をくぐらせてから、砕いた乾燥湯葉をまぶして揚げます。この工程は、パン粉を使うフライの作り方によく似ています。実際、東寺揚げはフライの一種として捉えると理解しやすいかもしれません。
使われる材料は、海老や白身魚が中心です。淡白な味わいの素材に湯葉の風味が重なることで、奥行きのある味わいになります。
揚げたての衣は、サクサクとした軽い歯ざわりで、湯葉が持つ独特の香ばしさがふわりと立ちのぼります。パン粉の衣とはひと味違う、繊細な食感が楽しめます。
空海と戒律が結びつけた、湯葉と東寺
東寺揚げの名前の由来をたどると、京都の東寺にたどり着きます。この寺は真言宗の開祖である空海にゆかりの深い寺院として知られています。
空海が生きた時代の仏教では、僧侶の食事は植物性の食材を中心とする戒律があり、肉類や魚介類は避けられていました。そうした制約のなかで、植物性のたんぱく質を豊富に含む湯葉は、僧侶の食生活を支える重要な食材だったと考えられています。
湯葉と東寺の結びつきについては、いくつかの由来が伝えられています。一つは、京都の東寺(教王護国寺)で湯葉が作られていたこと。もう一つは、東寺の周辺に湯葉を商う店が多くあったことです。これらの生産の現場があったことから、湯葉を使った料理に「東寺」の名が冠されるようになったとされています。
この名称は湯葉を使った料理の総称としても広く使われており、東寺揚げのほかにも「東寺煮」「東寺蒸し」「東寺和え」「東寺巻き」などがあります。東寺揚げは、そのなかでも代表的な料理の一つです。
このように、湯葉と東寺の結びつきは、仏教の戒律という規範が生み出した食の知恵と、京都の寺社を中心とした食文化の歴史が重なって生まれたものといえるでしょう。
東寺揚げと、湯葉の仲間たち
湯葉を使った料理の総称として「東寺」の名が冠されることがあり、東寺揚げはその中のひとつにすぎません。たとえば、東寺煮、東寺蒸し、東寺和え、東寺巻き。揚げる、煮る、蒸す、和える、巻く。調理法はそれぞれ違っても、湯葉を主役に据える点では同じ「東寺」の一族です。
なぜここまで湯葉と東寺が結びついたのか。東寺で湯葉が作られていたことが背景にあるとされ、その縁から「東寺○○」という呼び名が生まれたというのが通説です。ただし、どの料理が最初に「東寺」を名乗ったのかは、はっきりとはわかっていません。
さて、同じ湯葉の揚げ物でも、博多揚げと呼ばれる料理があります。こちらは2種類以上の色の異なる食材を重ねて、切り口が縞模様になるように作るのが特徴です。その縞模様が博多帯に似ていることから名づけられたとされます。東寺揚げが生湯葉で材料を包んだり、干し湯葉を衣に用いたりするのに対し、博多揚げは切り口の縞模様を特徴とする。作り方の異なる二つの揚げ物と言えるでしょう。
湯葉というひとつの食材が、揚げ物ひとつをとってもこれだけ違う形に発展している。京都の食文化の懐の深さを感じさせる話です。
湯葉の揚げ物が語る、京都の食の物語
京都の街を歩けば、寺の名前が料理に残っていることに出会います。東寺揚げも、そんな一皿です。
名前の由来をたどると、東寺とは教王護国寺の通称です。この寺でゆばが作られていたことから、ゆばそのものを「東寺」と呼ぶ習慣が生まれました。つまり東寺揚げという名は、揚げ方の種類を指す以上に、寺の台所と日常の食卓が地続きだった時代の名残なのです。
乾燥ゆばを砕いて衣にする形も、ゆばで包んで揚げる形も、どちらも素材の持ち味を最後まで活かす知恵に満ちています。
一つの料理名に、信仰と暮らしが重なっている。東寺揚げは、単なる揚げ物ではなく、京都の寺院文化と食の結びつきを象徴する存在として見えてきます。
























