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はじめに
こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、「ラザニア」についてお話していきたいと思います。ラザニアという料理名を聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?幾重にも重なったパスタとソースが織りなす、まるで食べる建築物のような美しい断面。オーブンから取り出したばかりの熱々のラザニアから立ち上る、チーズとトマトソースの芳醇な香り。この記事では、イタリアが誇る伝統料理ラザニアについて、その歴史から特徴、地域による違いまで、詳しく解説していきます。
初めてラザニアを口にしたのは、学生時代に訪れたイタリアンレストランでした。フォークを入れた瞬間、層になったパスタがほろりと崩れ、とろけるチーズがソースと絡み合う様子に心を奪われたものです。
ラザニアとは?層が生み出す至福の一皿
ラザニアには実は二つの意味があります。一つは平たいシート状のパスタそのものを指し、もう一つはそのパスタを使った料理全体を指します。料理としてのラザニアは、このシート状のパスタとソース、チーズを交互に重ねてオーブンで焼き上げた、まさに「ミルフィーユ」とでも言うべき料理です。
その特徴的な形状は、幅が広く、両端が波打っているものが一般的です。この波打った部分と中央の滑らかな部分で食感が異なり、一口ごとに違った楽しみがあるんですね。波打った部分はソースとの絡みも良く、まるでソースを抱きしめているかのよう。これこそがラザニアの醍醐味と言えるでしょう。
古代ローマから続く、ラザニアの長い旅路
ラザニアの歴史は驚くほど古く、その起源は古代ローマ時代にまで遡ります。語源となったのは、古代ローマ人が使っていた料理用の浅い鍋「ラサヌム(lasanum)」。この言葉自体も、ギリシア語の「リボン状にカットした大きなシート」を意味する語に由来しているというから、まさに国際的な料理と言えますね。
興味深いことに、古代ローマ時代のラガヌム(laganum)は、現在のラザニアとは全く異なる料理でした。当時は揚げ物やパイ料理として作られていたようです。紀元前1世紀の医学書では、なんと甘い食べ物として分類されていたとか。
中世イタリアになると、宮廷料理人たちの料理書にラザニアが頻繁に登場するようになります。14世紀の『料理の書』には発酵させたパスタ生地を使ったラザニアの記述があり、同時期には雄鳥の皮など四角いパスタ状のものを使った料理も「ラザニア」と呼ばれていました。現在のような茹でたパスタ料理として定着したのは15世紀以降のこと。長い時間をかけて、今の形に進化してきたんですね。
層が織りなす食感のハーモニー
ラザニアの最大の魅力は、なんといってもその層構造にあります。一口頬張ると、まず表面のカリッと焼けたチーズの香ばしさが広がり、続いてもちもちとしたパスタの食感、そしてジューシーなミートソースとクリーミーなホワイトソースが口の中で混ざり合います。
この複雑な食感と味わいの組み合わせこそが、ラザニアを特別な料理にしているのではないでしょうか。まるでオーケストラのように、それぞれの要素が絶妙なタイミングで現れては消え、最後には見事な調和を生み出す。これぞ料理の芸術と言えるでしょう。
また、オーブンでじっくりと焼き上げることで、全体が一体化し、切り分けた時の美しい断面も楽しめます。パーティー料理としても人気が高いのは、この見た目の華やかさも理由の一つですね。
地域色豊かなラザニアの世界
イタリア発祥のラザニアですが、今では世界中で愛され、それぞれの地域で独自の進化を遂げています。
本場イタリアでも地域によって違いがあります。例えば、ボローニャ地方の「ラザニア・アッラ・ボロネーゼ」は、パルミジャーノ・レッジャーノチーズのみを使用し、伝統的なボロネーゼソースで作られます。一方、ナポリではリコッタチーズ、モッツァレラチーズ、パルメザンチーズの3種類を混ぜて使うのが一般的です。
アメリカでは、全体が波打っているラザニアシートが主流で、よりボリューミーな仕上がりになります。イギリスでは複数形の「lasagne」で料理とパスタの両方を指しますが、アメリカでは単数形の「lasagna」を使うという違いも。言葉一つとっても、その土地の文化が反映されているんですね。
日本では、1980年代のアニメ『宇宙船サジタリウス』で主要キャラクターの好物として登場し、多くの人がラザニアの存在を知るきっかけになったという、ちょっとユニークな歴史もあります。
ラザニアを彩る基本の材料たち
伝統的なラザニアに欠かせない材料をご紹介しましょう。まず主役となるのは、もちろんラザニアシート。平たく幅広のパスタで、乾燥タイプと生タイプがあります。
ソースは大きく分けて2種類。濃厚なミートソース(ボロネーゼソース)と、まろやかなホワイトソース(ベシャメルソース)です。この2つのソースの組み合わせが、ラザニアに深みのある味わいを与えてくれます。
チーズも重要な要素です。一般的にはリコッタチーズ、モッツァレラチーズ、パルメザンチーズの3種類を使います。リコッタのさっぱりとした味わい、モッツァレラのとろける食感、パルメザンの芳醇な香り。それぞれが異なる役割を果たし、完璧なハーモニーを奏でるのです。
最近では、ほうれん草入りの緑色のラザニア・ヴェルデや、トマトで色付けした赤いラザニアなど、カラフルなバリエーションも登場しています。見た目も楽しく、栄養価も高まるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
伝統が息づく、本格的な調理法
本格的なラザニアの調理は、実は思っているほど難しくありません。ただし、愛情と時間は必要です。
まず、ミートソースをじっくりと煮込みます。玉ねぎ、にんじん、セロリなどの香味野菜(ソフリット)を細かく刻み、オリーブオイルでじわっと色づくまで炒めます。そこに挽肉を加えて炒め、トマトソースと合わせて最低でも1時間は煮込みましょう。時間をかけることで、素材の旨味が凝縮されるんです。
ホワイトソースは、バターと小麦粉を炒めて作るルーに、温めた牛乳を少しずつ加えながら作ります。ダマにならないよう、絶えずかき混ぜるのがコツ。なめらかなソースができたら、ナツメグを少々加えると、ぐっと本格的な味わいになります。
組み立ては、まるで建築作業のよう。耐熱皿の底にソースを薄く敷き、茹でたラザニアシート、ミートソース、ホワイトソース、チーズの順に重ねていきます。この作業を3〜4回繰り返し、最後はたっぷりのチーズで覆います。
180度に予熱したオーブンで30〜40分。表面がこんがりと黄金色に焼けたら完成です。焼き上がりを待つ間の、あの期待感といったら!キッチンに広がる香りだけで、もう幸せな気分になれますね。
まとめ
書いているそばから、思わず手を伸ばしたくなるほど食欲をそそられます。ラザニアは、古代ローマから続く長い歴史を持ち、イタリアのナポリで花開いた伝統料理です。シート状のパスタとソース、チーズを幾重にも重ねて焼き上げるこの料理は、見た目の美しさ、食感の楽しさ、味わいの深さ、すべてにおいて完成度の高い一品と言えるでしょう。
地域によって異なる作り方や、時代とともに進化してきた調理法も、ラザニアの魅力の一つです。伝統を大切にしながらも、新しいアイデアを取り入れて進化し続ける。まさに生きた料理文化の象徴ですね。
次にラザニアを食べる機会があったら、ぜひその層の一つ一つに込められた歴史と文化、そして作り手の愛情を感じながら味わってみてください。きっと、今までとは違った美味しさを発見できるはずです。
さいごに
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