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はじめに:食卓を彩る黄金色のソース、オランデーズ
こんにちは。シェフレピの池田です。今回は、フランス料理の代表的なソース「オランデーズソース」についてお話していきたいと思います。
オランデーズソース。その名を聞いて、エッグベネディクトの艶やかな黄色いソースを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?フランス料理の基本ソースの一つでありながら、家庭料理としても親しまれつつあるこのソースは、料理に華やかさとコク深さを加えてくれます。この記事では、オランデーズソースの魅力とその世界を深掘りしていきます。
初めて本格的なオランデーズソースを口にしたのは、パリで宿泊したホテルの朝食でした。ポーチドエッグにかけられた、温かく、とろりとしたソース。バターの芳醇な香りとレモンの爽やかな酸味、卵黄のコクが見事に調和していて、まさに至福の味わいでしたね。それ以来、このソースの虜です。
オランデーズソースってどんなソース? その定義と概要
オランデーズソース(Sauce Hollandaise)は、フランス料理における「マザーソース」と呼ばれる基本的なソースの一つです。主な材料は卵黄、澄ましバター、レモン果汁。これらを湯煎にかけながら泡立て器で撹拌し、「乳化」させることで、とろりとした滑らかな状態に仕上げます。塩、カイエンペッパー(または白胡椒)で風味を調えるのが一般的です。
その名の「オランデーズ」は「オランダ風の」という意味。なぜフランスのソースなのにオランダの名前がついているのか? その理由は歴史の中に隠されています。

オランダ風?その名の由来と歴史を紐解く
オランデーズソースの正確な起源は諸説ありますが、その名前が示す通り、オランダとの関連性が指摘されています。一説には、第一次世界大戦中にフランスでバターが不足した際、代替品としてオランダから輸入されたバターを使って作られたことからこの名がついたとも言われています。しかし、文献を遡ると、17世紀のフランスの料理書に既に似たようなソースの記述が見られます。フランソワ・ピエール・ラ・ヴァレンヌの『フランス料理人』(1651年)には、卵黄を使わないものの、バターとハーブを用いたソースが登場します。その後、18世紀の料理書にも「ソース・ア・ラ・オランデーズ」の名が見られますが、これも現代のものとは異なり、卵黄は使われていませんでした。
現在のような卵黄とバターを乳化させるタイプのオランデーズソースが登場するのは19世紀に入ってからと考えられています。当初は「ソース・イジニィ」と呼ばれていたこともあるようです。イジニィは、バターの名産地として知られるノルマンディー地方の村の名前ですね。いずれにせよ、その歴史はフランス料理の変遷と深く関わっていると言えるでしょう。
五感を刺激する!オランデーズソースの魅力とは?
オランデーズソース最大の魅力は、何と言ってもそのリッチでクリーミーな舌触りと、バターの芳醇な香り、そしてレモンの爽やかな酸味が織りなす絶妙なバランスにあります。
- 味わい: 卵黄のコクとバターの風味が主体ですが、レモン果汁が加わることで、濃厚でありながら後味は意外とさっぱり。塩とカイエンペッパーが全体の味を引き締めます。
- 香り: 温められたバター特有の甘く豊かな香りが立ち上ります。食欲をそそる香りですね。
- 食感: 乳化したオランデーズソースは、とろりとして滑らか。まるでカスタードクリームのような、しかし甘くない、独特のテクスチャーを持っています。この食感が、料理との一体感を生み出すのです。
このソース、温かい状態で提供されるのが基本です。冷めると固まったり、分離しやすくなったりするため、作りたてを味わうのが一番美味しい。まさに、その場で作るライブ感が求められるソースとも言えますね。
基本を超えて:オランデーズソースのバリエーションを探る
オランデーズソースは基本のソースですが、少しアレンジを加えることで、また違った表情を見せてくれます。最も有名な派生ソースはベアルネーズソースでしょう。
- ベアルネーズソース: レモン果汁の代わりにエシャロット、エストラゴン、セルフィーユ、白ワインヴィネガーを煮詰めたものを加えて作ります。ハーブの香りが特徴的で、特に肉料理との相性が抜群です。ステーキに添えられることが多いですね。
他にも、トマトを加えた「ソース・ショロン」、オレンジ果汁や皮を使った「ソース・マルテーズ(マルタ風ソース)」など、様々なバリエーションが存在します。基本のオランデーズをマスターすれば、これらの応用も楽しめるようになります。あなたならどんなアレンジを加えますか?
黄金色のソースを構成するもの:材料とその役割
オランデーズソースの基本的な材料は非常にシンプルです。しかし、それぞれの素材が重要な役割を担っています。
- 卵黄: ソースにとろみとコクを与え、バターと水分を繋ぎ合わせる「乳化剤」としての役割を果たします。新鮮な卵黄を使うことが、美味しいソースを作るための第一歩です。
- 澄ましバター: バターを溶かし、水分と不純物(主に乳固形分)を取り除いたものです。通常のバターよりも焦げ付きにくく、バター本来の風味をクリアに引き出すことができます。これがソースのリッチな風味の源泉となります。
- レモン果汁: 爽やかな酸味を加え、バターと卵黄の濃厚さを和らげ、全体の味を引き締めます。フレッシュなレモンを搾って使うのがおすすめです。
- 塩・カイエンペッパー(または白胡椒): 味の輪郭をはっきりさせ、風味にアクセントを加えます。カイエンペッパーはほんの少し加えるだけで、ピリッとした刺激が全体の味を引き立てます。
これらのシンプルな材料が、適切な温度管理と撹拌によって、あの魔法のようなソースへと変化するのです。
失敗しない!伝統的な作り方のコツとポイント
オランデーズソース作りは「難しい」というイメージがあるかもしれません。確かに、温度管理を誤ると卵黄が固まったり、バターと分離したりすることがありますが、最初は誰でも失敗するものです。しかし、いくつかのポイントを押さえれば、家庭でも美味しいオランデーズソースを作ることができます。
- 湯煎の温度管理: 卵黄は高温すぎると固まってしまいます。湯煎の温度は沸騰させず、弱火で穏やかに加熱するのが重要です。ボウルの底が直接お湯に触れないようにするのもポイント。
- バターは少しずつ: 溶かした澄ましバターは、卵黄を泡立て器で絶えず撹拌しながら、糸を垂らすように少しずつ加えていきます。一度に大量に加えると、乳化がうまくいかず分離の原因になります。
- 絶えず撹拌: 泡立て器でボウルの底からしっかりと、空気を含ませるように混ぜ続けることが、滑らかな乳化状態を保つ秘訣です。
- レモン果汁は最後に: 乳化が安定したら、最後にレモン果汁と塩、カイエンペッパーで味を調えます。
もし分離してしまった場合でも、諦めないでください。少量の冷水か、新しい卵黄を別のボウルで泡立て、そこに分離したソースを少しずつ加えて混ぜていくと、リカバリーできる場合があります。
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▼【オランデーズソースの材料の下準備】
▼【オランデーズソースの作り方】
まとめ
オランデーズソースは、卵黄とバター、レモン果汁というシンプルな材料から作られる、フランス料理の基本ソースです。その起源には諸説ありますが、濃厚なコクと爽やかな酸味のバランスが絶妙で、エッグベネディクトやアスパラガス、魚料理など、様々な料理を格上げしてくれます。
作るには少しコツが必要ですが、温度管理と撹拌のポイントを押さえれば、家庭でも本格的な味を再現できます。失敗を恐れずに、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか? きっと、いつもの食卓が、より豊かで華やかなものになるはずです。この奥深いソースの世界、あなたも探求してみませんか?
さいごに
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