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焼売とは?世界中で愛される中国料理の魅力を解説

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はじめに

こんにちは。シェフレピの池田です。今回は「焼売」についてお話ししていきたいと思います。焼売(しゅうまい)は、豚ひき肉を薄い小麦粉の皮で包んで蒸し上げる、中国料理を代表する点心の一つです。日本の食卓でも広く親しまれ、家庭料理としても定着しているこの料理には、実は奥深い歴史と地域ごとの多彩なバリエーションが存在します。本記事では、焼売の起源から各地の特色、そして基本的な材料と調理法まで、この魅力的な点心の世界を詳しくご紹介します。

焼売とは?豚肉と野菜が織りなす点心の定番

焼売は、豚の挽肉を主体とした餡を小麦粉の薄い皮で包み、蒸して調理する中華料理の点心です。日本では「シュウマイ」として親しまれていますが、これは広東語の「シウマイ」という発音が由来となっています。興味深いことに、崎陽軒の「シウマイ」表記は、初代社長が栃木訛りで「しゅー」の発音ができなかったことに由来するそうです。

餃子と同じ点心として扱われることが多い焼売ですが、いくつかの明確な違いがあります。まず皮が薄い四角形(丸い皮もあります)で、澱粉がやや多く配合されていること。そして必ず最初は蒸して調理すること、さらに塩味などの味付けが強めで、調味料なしでも美味しく食べられるという点が挙げられます。

中国では「焼売」「焼麦」「稍麦」など、地域によって異なる表記が使われていますが、これらはすべて同音です。北方では「燒麥」、南方では「焼売」と表記する傾向があり、使用する食材にも違いが見られるのです。

14世紀から続く焼売の歴史:元朝から現代まで

焼売の歴史は想像以上に古く、確認できる最古の史料は14世紀の元朝時代にまで遡ります。高麗で発刊された『朴通事』には、元の大都(現在の北京)で「素酸馅稍麦」を販売する店があったことが記されています。この「稍麦」は、薄切り肉またはくず肉を小麦の麺で包んで蒸し上げた料理でした。

17世紀末の清朝初期には、現在の中国内モンゴル自治区西方で現在の焼売の原型が誕生したと考えられています。その後、瀋陽、北京、天津へと広がり、さらに浙江、江蘇、広東と南方へと伝播していきました。瀋陽市には1796年創業と言われる焼売屋があり、初代の馬春は一輪車で牛肉と羊肉を用いた焼売を販売して人気を博していたそうです。

文学作品にも焼売は登場します。明代の長編小説『金瓶梅』には「桃花焼売」を食する場面があり、18世紀の『儒林外史』にも餃子と共に豚肉を用いた焼売が描かれています。清の乾隆帝が揚子江の南へ行った際のメニューにも「豚肉とホウレンソウの稍麦」が何度も登場しており、当時から高級料理として扱われていたことがうかがえます。

肉汁たっぷり!焼売の魅力的な3つの特徴

焼売の最大の魅力は、なんといってもその”じゅわっ”とした肉汁でしょう。蒸し上がった焼売を一口噛むと、中から溢れ出す旨味たっぷりの肉汁が口いっぱいに広がります。この肉汁は、豚ひき肉の脂分と野菜の水分、そして調味料が絶妙に混ざり合って生まれるものです。

次に注目したいのは、その独特な形状です。上部が開いた円柱状の形は、まるで小さな花が咲いているよう。北京風の「燒麥」では、皮が具材よりも大きくはみ出した形状が特徴的で、清代の『證俗文』には「ザクロの花の形状をした」という記述もあります。この美しい見た目も、焼売の大きな魅力の一つですね。

そして三つ目の特徴は、その多様性です。基本は豚肉ですが、エビや蟹、牛肉を使ったものもあり、皮の代わりにもち米をまぶすバリエーションも存在します。調理法も蒸すだけでなく、鉄板で加熱する「焼き焼売」、油で揚げる「揚げ焼売」、スープに入れる「水焼売」など、実に多彩。日本ではおでん種として使われることもあり、コンビニのおでんには「シュウマイ巻」なんていうユニークな商品もあるんです。

北と南で異なる焼売文化:地域ごとの個性豊かなバリエーション

中国の焼売は、北方と南方で大きく異なる特徴を持っています。北方では羊肉、ネギ、大根を主な具材として使用し、「燒麥」と表記されることが多いです。一方、南方では豚肉やもち米が主流で、「焼売」の表記が一般的です。

北京風の「燒麥」は、皮が大きめで具材からはみ出すような形状が特徴的。中身にはもち米を入れることが多く、ボリューム感のある仕上がりになります。これに対して広東省や香港では「干蒸燒賣」というエビシュウマイが定番となっており、プリプリとした食感が人気を集めています。

上海には「香港式焼売・広東式焼売」と呼ばれる独特のスタイルがあります。これは切った細巻きのように見える焼売の具を使用した蒸し料理で、見た目も味わいも他の地域とは一線を画しています。中国南部では、もち米を具材に用いることが多く、もち米を焼売に必須と考える人もいるほど。地域によってこれほど違いがあるなんて、焼売の世界は本当に奥が深いですね。

豚ひき肉・玉ねぎ・焼売の皮:基本材料が生み出す絶妙なハーモニー

焼売の基本的な材料は、実にシンプルです。主役となるのは豚ひき肉で、これに玉ねぎのみじん切りを加えることで、甘みと食感のアクセントが生まれます。調味料としては醤油、酒、オイスターソース、砂糖、ごま油、塩、胡椒などを使用し、つなぎとして片栗粉を加えます。

豚ひき肉は脂身と赤身のバランスが重要で、脂身が多すぎるとべたつき、少なすぎるとパサついてしまいます。理想的なのは脂身3:赤身7程度の割合でしょうか。玉ねぎは生のままみじん切りにして加えることで、蒸している間に甘みが引き出され、肉の旨味と絶妙に調和します。

焼売の皮は餃子の皮よりも薄く、澱粉が多めに配合されているのが特徴です。この薄さが、蒸し上がったときの”つるん”とした食感を生み出します。市販の焼売の皮は四角形のものが多いですが、丸い皮を使うこともあります。皮の包み方によって見た目の印象も大きく変わるので、これも焼売作りの楽しみの一つと言えるでしょう。

蒸籠で仕上げる本格派:伝統的な焼売の調理法

焼売の調理法で最も重要なのは、やはり「蒸す」という工程です。伝統的には竹製の蒸籠を使用しますが、これには理由があります。竹の蒸籠は余分な水分を吸収し、蒸気を適度に逃がすため、焼売がべたつかず、ふっくらと仕上がるのです。

蒸し時間は一般的に10〜15分程度。火加減は強火で一気に蒸し上げるのがコツです。弱火でじっくり蒸すと、肉汁が流れ出てしまい、パサついた仕上がりになってしまいます。蒸し上がりの目安は、皮が透き通って中の具材が見えるようになったとき。この瞬間の美しさは、まさに料理の醍醐味と言えるでしょう。

現代では電子レンジやフライパンを使った調理法も普及していますが、やはり蒸籠で蒸した焼売の美味しさは格別です。蒸籠の蓋を開けた瞬間に立ち上る湯気、その中から現れる艶やかな焼売の姿は、視覚的にも食欲をそそります。好みで酢醤油や辛子を添えていただきますが、しっかりと味付けされた焼売は、何もつけなくても十分に美味しいものです。

まとめ

焼売は14世紀の元朝時代から続く長い歴史を持ち、中国各地で独自の発展を遂げてきた奥深い料理です。北方の羊肉を使った「燒麥」から、南方のもち米入り焼売、香港のエビシュウマイまで、その多様性は中国の食文化の豊かさを物語っています。

基本的な材料はシンプルながら、豚ひき肉と玉ねぎ、調味料の絶妙なバランスが生み出す味わいは、まさに点心の王道と呼ぶにふさわしいものです。蒸籠で蒸し上げる伝統的な調理法は、素材の旨味を最大限に引き出し、ジューシーな肉汁と共に口の中に幸せを運んでくれます。

日本でも広く愛される焼売は、家庭料理としても定着し、さらなる進化を続けています。次回焼売を食べる際には、その長い歴史と地域ごとの特色を思い浮かべながら、一つ一つの味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか。

さいごに

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冬の3種のシュウマイ (蟹、ゴボウ、春菊)/AUBE 東浩司

蟹のリッチなうま味と風味、春菊は冬の苦味と香り、ゴボウにはチンピ(ミカンの皮)をぶつけて土の香りにさわやかさをプラス。そもそもシュウマイの豚肉は、こんなにフワフワで軽やかになるのか! 大阪のカウンタースタイルの現代中国料理「AUBE」の東浩司シェフのレシピで作った3種のシュウマイを食べると、「シュウマイってこんなに自由で季節感がある料理だったのか」と、これまであった“シュウマイ観”を、おそらく多くの人が覆されるはずです。 ひき肉を使わずに塊から肉を切ってから野菜と調味料を加えて練り、さらに旬の食材を加えたら皮で包んでたっぷりの湯で蒸しあげる。作り方自体は難しくなく、基本に忠実な東シェフのシュウマイは、一つひとつを丁寧に作るからこそ、ふだん食べているシュウマイの食感や風味とまったく異なることに気づきます。 動画では、季節ごとにおススメな餡に加える食材を東シェフが教えてくれます。一度覚えたら一生使える、シュウマイレシピを学んでみませんか。

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