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マカロニグラタンをシェフが徹底解剖

この記事を読むのに必要な時間は約 14 分です。

h.b.シェフが監修したレッスンコース「フレンチシェフが教える洋食の定番メニュー」のなかから「ホワイトソースから作る基本のマカロニグラタン」を、シェフ自身の言葉で徹底解剖していきます。

マカロニグラタンとはどんな料理か?

マカロニグラタンとは、ベシャメルソース(ホワイトソース)に鶏肉、キノコ(マッシュルーム)を白ワインで煮込んだものと茹でたマカロニを加えてチーズやパン粉をふりかけ、オーブンなどで焼き色をつけた料理です。

日本でも洋食として慣れ親しまれているマカロニグラタンですが、ルーツはフランス郷土料理にあり、オーギュスト・エスコフィエ著『料理の手引き』(Le Guide Culinaire)(1902)にも掲載されいています。

h.b.シェフが教えるマカロニグラタンと普段食べるマカロニグラタンとの違いは?

今回シェフレピで紹介した僕のマカロニグラタンと、一般的にみなさんがお家で作るマカロニグラタンとの1番大きな違いは、おそらくベシャメル(ホワイト)ソースにあるのではないかと思います。

一般的に家庭でよく作られるマカロニグラタンでは、既製品のソースが使用されることが多いです。また、ベシャメルソースを自分で作る場合であっても、事前に作り置きしておいたソースを温め直して使うケースも多いと思います。

今回、僕が紹介するレシピでは、一からマカロニグラタン用のベシャメルソースを作り、なおかつ作り置きではなくその場でしっかりと焼き上げることで、できたての美味しさや、洗練された味わいを作れるようになっています。みなさんには、ぜひ「ベシャメルソースを自分で一から作るとやっぱり美味しいよね!」という感動を味わっていただきたいです。今回紹介するレシピで作って一度食べてみると、既製品のソースで作ったマカロニグラタンとは全くの別物だということを感じてもらえると思います!

今回紹介するマカロニグラタンを作る際は、ベシャメルソースだけでなく、野菜の甘みの出し方や、鶏肉の火入れの仕方、マカロニの茹で方など、それぞれの素材を適切に処理することも大切です。例えば、鶏肉に火が入りすぎるとボソボソとした食感になりますし、マカロニは茹ですぎたり、茹でた後に置きすぎたりするとフニャフニャになってしまいます。こうした点で失敗しなければ、「それぞれの素材が独立して美味しくて、なおかつ料理として一体感がある」という味わいのマカロニグラタンが作れると思います。

そもそもベシャメルソースとは?

名前に聞き馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、ベシャメルソースとは、簡単にいうと、ホワイトソースのことです。

フランス料理ではソースの濃度付けに「roux(ルー)」というものを使うことが多いです。「roux(ルー)」とは同量のバターと小麦粉を混ぜて粉気がなくなり、さらさらになるまで加熱したものです。
この「roux(ルー)」に牛乳を合わせて濃度を付けたものを、ベシャメルソースと呼んでいます。使い方によって、ベシャメルソースに塩で味付けしたり、ナツメグで風味付けしたりすることもあります。

ベシャメルソースの濃度はルーの量で決まり、単純に小麦粉の量が増えればしっかりとした濃度になります。

何をしてもおいしくなるベシャメルソースの応用方法

ベシャメルソースは、さまざまな料理に応用できます。例えば、ベシャメルソースにある「小麦粉の量を減らすと少しゆるくなる」という原理を応用すれば、生クリームがなくても家庭で簡単にクリームパスタのソースを作ることができます。

これとは反対にベシャメルソースを少し硬めにすると、クリームコロッケを作れます。余ったベシャメルソースをお米と合わせれば、ドリアを作ることもできますね。

なので、ベシャメルソースを作って冷凍庫にストックしておくと非常に便利です。例えば、ベシャメルソースをたくさん作ってバットなどに広げて冷凍し、カットして小分けにしておくととても使い勝手が良いですね。

マカロニグラタンの仕上げにかけるチーズになぜ「マリボーチーズ」をチョイスしたか

マリボーチーズには、特にこれといったクセがありません。イメージとしては「美味しいとろけるチーズ」に近いです。

僕がマカロニグラタンをシェフレピの企画として作ってほしいと依頼されたときに、フランス料理人としてどこまで工夫して良いものか、とても悩みました。料理は工夫しようと思えばいくらでも工夫できるものですが、やりすぎると素材本来の良さがなくなったり、美味しいけど別物の料理になってしまったりします。

今回、洋食というテーマで料理をご紹介させていただくにあたって、僕自身の中にある「洋食らしさ」と「自分らしさ」をいかに出していくのか葛藤しました。いわば「みなさんが想像する洋食を紹介したいけど、自分らしさもちゃんと持たせたい」というちょっと欲張りな願望です(笑)。

その中でチーズについてもさまざまな選択肢がありました。例えば、ブルーチーズでマカロニグラタンを作ったとしても、それはそれでとても美味しくできあがります。ただ、さまざまな選択肢がある中で「みなさんが思い浮かべるマカロニグラタンにしたい」と考えたときに、美味しいとろけるチーズのようなマリボーチーズはベストの選択肢だと思いました。僕としては、マリボーチーズの「クセがありすぎない」「加熱して美味しい」「しっかりした味がある」「チープさがない」といった点がお気に入りです。

もちろん、既製品のとろけるチーズやシュレッダーチーズ、ピザ用チーズなど、それぞれみなさんの好きなチーズを自由に選んでアレンジしてみても美味しくできあがります。

マカロニグラタンになぜBarillaのマカロニを選んだのか

Barilla(バリラ)のマカロニは、ご存じの方も多くいらっしゃると思います。マカロニもチーズと同様にさまざまな選択肢があり、こだわろうと思えばいくらでもこだわれます。その中で、当初は比較的ザラザラした食感で粉の味がしっかりするタイプのマカロニを採用しようと考えていました。

しかし、僕自身の中で思い浮かべる「洋食らしさ」に寄せていく中で、マカロニの主張が強すぎると、マカロニグラタンの理想からは外れてしまうのではないかと考えました。

僕の中でのマカロニグラタンは、あくまでもベシャメルソースがメインとなる料理であり、食べた人がベシャメルソースのトロッとした食感を最大限に味わえるものであってほしいと考えています。また、僕としては、マカロニグラタンのマカロニはツルツルとした食感であってほしいのです。

これらの点を考慮したときに、僕はBarillaのマカロニがベストなのではないかと思って選びました。

マカロニグラタンの香ばしさを引き立てる黒コショウを加えるタイミング

ポイントの1つとして、グラタンを焼くタイミングで黒コショウを加えることをおすすめします。フランス料理を手掛けている多くの人からすると、黒コショウを加熱することは香りが消えてしまったり、焦げたり、雑味につながったりするというイメージがあり、黒コショウを加えてから加熱することに抵抗感があるのですが、僕としては最後に挽きたての黒コショウを加え、未加熱で食べること自体、それほど好みではないんですよね。

黒コショウを加熱すると、挽きたてのときとは全く違う、独特な香りがします。僕としてはカカオやコーヒーなどの匂いに近いように感じて、それがとても好みなんです。匂いを効果的に出すには、ベシャメルソースも最後までしっかり焼き切ることが大切です。これにより黒コショウがチーズの油脂分でテンパリングされたような状態になり、香り高くなります。コショウの香ばしさとチーズの香ばしさが一緒に付いてくれると、「グラタンの中身の上品でトロトロしてるベシャメルソースの層」と「焼き切った香ばしさのある上の層」で、良いコントラストになります。

美味しいマカロニグラタンをつくるh.b.シェフのこだわりとは?

これまでさまざまなマカロニグラタンを作ってきた中で、自分なりにどうやったら美味しくなるだろうかと試行錯誤を重ねてきました。その中で、フランス料理的な考え方に沿ってマカロニグラタンを作ると、一般的にはソースを美味しくしようと考えるわけです。

僕が一時期よく作っていたマカロニグラタンは、まず鶏肉と野菜と白ワインで美味しい白ワイン煮込みを作り、その液体で固めのベシャメルソースを伸ばすという手法を採用していました。しかし、これは僕自身の理想とは違うなと、途中で違和感を覚えました。つまり、僕が思い浮かべるマカロニグラタンには必要のない美味しい要素が入ってしまい、「美味しいけどよくわからない味」になってしまったのです。

もちろん白ワイン煮込みの旨味はベシャメルソースに必要不可欠だと思いますが、あくまでもベシャメルソースの主張が強くあってほしいんですよね。なので、最近の僕のマカロニグラタンでは、最初の白ワイン煮込みの時点で液体をかなり煮詰めています。ベシャメルソースを伸ばすというよりも、旨味のある濃縮された少量の液体をベシャメルソースに混ぜるというイメージで、基本的にはほとんどベシャメルソースが占めています。

そのほうが、僕自身が思い浮かべるベシャメルソースになり、黒コショウを振った表面の香ばしいチーズ層とのメリハリを楽しめます。中に香ばしい鶏肉の旨味が入っていると、その上のチーズと黒コショウの香ばしさが薄れてしまうような気がするので、このメリハリがとても大切だと思います。

僕は最近「最適化を目指しすぎると、良くなくなる料理も存在する」と考えています。フランス料理的な考えでマカロニグラタンを最適化しようとすると、「皮を美味しく香ばしく焼き切ろう」とか「美味しい煮込みの汁でベシャメルソースを伸ばして味をワンランクアップさせよう」というように改善ポイントが山のように見つかるのですが、それを全て実践した結果、マカロニグラタンとして美味しい料理は完成しませんでした。なので、今回、僕が目指したのは、マカロニグラタンとしての完成度です。マカロニグラタンの理想を思い浮かべ、そこにいかに自分らしく寄せていくか、という点にこだわりました。

マカロニグラタンを作る上で気をつけてほしい点

マカロニグラタンは、難しそうに見えて意外と一番落ち着いて簡単に作れる、失敗の少ない料理だと思います。例えば、ナポリタンは、簡単そうに見えて、加熱しはじめたら止まれなくなるなど焦ってしまう場面が多いです。

その点、マカロニグラタンはさまざまなパーツで構成されているものの、焦って作る場面がない料理です。なので、落ち着いて作ることができます。その反面、白ワインを加えた後の煮詰め具合や、ベシャメルソースのルーを作るときの火加減など、焦る必要のない料理であるがゆえに要所要所のポイントを押さえて実践することが大切です。シンプルな料理である分、これらのポイントで失敗すると味に直接響いてきますので、1度予習するなどしてゆっくり落ち着いて作ってもらえれば、他の料理よりも失敗は避けやすいと思います。

ベシャメルソースのルーを作る際は小麦粉とバターを弱火で加熱していきますが、これらは非常に焦げやすいので、テフロン加工や鍋底が厚めの焦げにくい鍋・しっかりこそげ落とせるゴムベラなど火加減を考慮した調理器具選びを行うほか、なるべく弱火でじっくり調理していくことが大切です。こうした点に注意しつつ、楽しみながらチャレンジしてみてくださいね。

連載料理の徹底解剖
シェフレピがTwitterルームで毎週日曜に配信している「#シェフレピ深掘りラジオ」の内容を構成したものです。料理の考え方やおいしくするためのポイントを、元料理人であるシェフレピ代表の山本篤が、シェフに根掘り葉掘り聞いていきます。
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カリカリに焼けた表面のチーズ、中はトロトロのベシャメルソース(ホワイトソース)と食べ応えのあるマカロニ、それらをスプーンですくってひと口で頬張る。そんな理想のグラタンを作るために、基本のベシャメルソースの作り方やグラタンの焼き方、食べ飽きさせないソースの隠し味や食材の扱い方などシェフならではの技を学んでみましょう。

h.b.●エイチ・ビー
福岡県生まれ。高校卒業後、大阪の調理師専門学校に入学。卒業後は大阪市内のミシュラン一つ星のフランス料理店に勤務し、フランス料理から料理人の基礎を学ぶ。その後、東京に移り、ビストロで料理長兼店長を務めた。現在は独立準備のかたわら、「枯朽」の屋号でポップアップイベント「間借り」などを行い、料理を作り続けている。
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