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関口シェフが講師を務めるレッスンコース「くり返し作りたくなるイタリアンの定番料理」のなかから「パンチェッタから作るカルボナーラ」を、シェフ自身が徹底解剖していきます。
Table of Contents
カルボナーラとはどんな料理か?
カルボナーラとは、卵、チーズ、黒コショウ、パンチェッタもしくはグアンチャーレなどを使用して作る濃厚なパスタソースの1種です。
生クリームや牛乳を使用するレシピが多く普及しておりますが、本場イタリアでは、ほとんど生クリームや牛乳を使うことはありません。
「炭焼き職人(Carbonara)」が語源となったという説が有力で、炭焼き職人がパスタを作ったところ、体についていた炭の粉がパスタの上に落ちた、黒コショウをその炭に見立てて作った説や、カリカリに焼けたパンチェッタやグアンチャーレが炭に見えたからという説など、他にも様々な説があります。
カルボナーラに生クリームを入れない理由
カルボナーラは、食べたことがない人が少ないくらい、ポピュラーな料理だと思います。その中でも、生クリームを入れた「なめらかで濃厚な美味しさ」のカルボナーラが日本人の方にとって馴染みが深く、そういったレシピが普及しています。
その一方で、特にイタリアの郷土料理を手掛けている人の中では、カルボナーラに生クリームを入れないのが一般的です。その中で、イタリア料理の基本を踏まえながら、私なりにカルボナーラ本来の美味しさを追求するために、今回は生クリームを入れずに卵だけでカルボナーラを作るレシピを紹介しました。
もともとカルボナーラは、加熱された卵のコク、パンチェッタのパンチ力のある旨味、チーズのコクや深み、コショウの辛味、これらをバランスよく保つ塩によって成り立っている料理だと思います。今回のレシピでも、生クリームを使用しないことに対するハードルは高くありませんので、これまで生クリームを使っていた人でも不安なく作れると思います。
あとは、「イタリア料理の歴史的な忠実さ」を抜きにしても、個人的に「卵の美味しさを全面的に味わうためには、生クリームを入れないほうが良いのでは?」と考えました。生クリームは、卵やチーズのコクを薄めてしまうことがあるからです。
関口シェフのカルボナーラのレシピ
- パンチェッタ80 g
- ペコリーノ・ロマーノ30 g
- パルミジャーノ・レッジャーノ20 g
- 卵黄(Mサイズ)2 個
- 全卵(Mサイズ)1 個
- オリーブオイル(卵液用)10 g
- オリーブオイル適量(パンチェッタを炒める用)目安10g
- 水(パスタを茹でる用)適量
- 黒コショウ適量
- 塩(モティア・サーレフィーノ)(パスタを茹でる用)適量
- 白ワイン30 g
- リガトーニ(パスタ)150 g
- パスタの茹で汁 適量
カルボナーラの2種類の仕上げ方
カルボナーラのソースは、大きく分けて2パターンの仕上がりイメージがあります。1つ目は、ピューレ状になっているような、なめらかな舌触りの卵黄ソースで、今回私が作ったものです。2つ目は、もう少しエアリーな(軽い)感じの仕上がりです。
これら2つのパターンは調理法、つまり空気を含ませるか含ませないかの違いで分かれています。フライパンを振って混ぜるように加熱すると卵に空気が含まれて、色も黄色というより白に近くなっていき、軽い感じに仕上がります。例えば、コースの途中などで軽く食べさせたい時など、その後も料理が続く場合、エアリーに仕上げる選択肢も良いと思います。
これに対して、なめらかで濃厚なピューレ状の仕上がりの場合、卵やチーズのコクをより感じることができます。
濃厚でしっかりしたカルボナーラソースに合うパスタ「リガトーニ」
濃厚でしっかりしたソースを採用したため、これを受け止められるパスタが必要になってきます。そのため、個人的にはリガトーニがふさわしいと考えました。リガトーニは、いわゆるマカロニのような感じで、真ん中に空洞が空いています。きっと皆さんもご存じあるはずの「ペンネ」というパスタがありますが、リガトーニはペンネの3〜4倍ほどの空洞が空いている筒状のパスタです。
それほどの大きさの空洞であれば、濃厚でドロっとしたソースでも十分に入っていきます。また、リガトーニはサイズが大きいので噛む回数が比較的多くなりやすいです。パスタを噛み続けたときに感じる口の中の乾きを濃厚なソースが補ってくれるので、とてもバランスが良いです。
そのほか、濃厚なソースと合わせた時に絡み具合がよいことや、調理時にゆっくり混ぜていくときにもスパゲティなどとは違ってフライパンとの接地面がまばらになるので、高度な調理テクニックが求められないことなども、リガトーニを選んだ理由です。美味しくて、なおかつゴムベラでも簡単に作れる点は大きな魅力だと思います。
さらに、リガトーニはスパゲティなどよりも、完成して冷めてからでも比較的美味しく食べられます。冷めて固まったとしても、おつまみのような形で美味しく食べられるのです。なので、食卓に並ぶレパートリーも増えると思います。
失敗しにくいカルボナーラの作り方とそのポイント
一番のポイントは、卵の火の入れ方ですね。一般的にカルボナーラは、卵が固まってしまうのを防ぐためにボウルを使ったり、生クリームを入れたりして作ることも多いですが、2人前など食材の量が変わったときに、ダマであったりパスタの温度が高すぎて固まったり、水分量が難しくてドロっとしすぎたりしてしまうことがあります。
これらの点をカバーしつつ、卵を適切な温度で加熱しながら調理できるのが、今回のレシピのような「弱火でスタートして徐々に温度を上げていく方法」だと思います。
シェフレピの動画をご覧になられている方はお分かりになるかと思いますが、パンチェッタを炒めて温度を高くしたフライパンを一度冷ますようなイメージです。一般的には温かいフライパンにパスタを入れて和えて作ったり、ボウルに入れて余熱を使ったりしますが、今回はフライパンが冷たい状態から65度まで温度を上げた後、弱火で温度を保ちます。これが食感につながりますし、慌てることなく失敗しにくい方法だと思います。
最後に:関口シェフが考えるイタリア料理の考え方
イタリア料理はそれほど古い歴史があるわけではありません、料理の起源や派生なども諸説あることも多いです。また、基本的にイタリア料理はマンマの料理などの郷土料理を大切にしていて、これを忠実に守るのが正義と考えられている側面もありますが、固定観念にとらわれず、日本人の味覚や食べるシーンに合わせた食材選びや調理法を考えることが大切だと思います。
連載「料理の徹底解剖」
シェフレピがTwitterルームで毎週日曜に配信している「#シェフレピ深掘りラジオ」の内容を構成したものです。料理の考え方やおいしくするためのポイントを、元料理人であるシェフレピ代表の山本篤が、シェフに根掘り葉掘り聞いていきます。
シェフレピ公式Twitter:https://twitter.com/chefrepi
生クリームや牛乳を入れるカルボナーラのレシピもありますが関口シェフが作るのは、卵とチーズ、パンチェッタ(豚バラの塩漬け)の基本の作り方です。なめらかに仕上げる作り方はもちろん、自家製のパンチェッタと削りたてのチーズ、直前に潰したコショウが利いた濃厚カルボナーラからは、シェフがひと手間かける理由がわかるはずです。
関口幸秀
千葉市川市出身。首都圏でグループ店を展開するイタリアンレストラン「カステリーナ」の統括料理長を経て、現在は独立の準備をしながらフリーランス料理人として活躍中。Twitterでは、おせっかい料理人として #教えて消費レシピなどで、料理人が考える家庭のレシピを伝える。#教えて消費レシピは、Buzzfeedなどのメディアにも取り上げられた。2019年の台風被害によって始まった#CookForJapanのメンバーでもある。2021年6月には#CookForJapan×食べチョクのポップアップレストラン「RESQ」のメインシェフを務めた。
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